
新年度が始まった4月。暮らしに欠かせない食品や光熱費などの価格がさらに値上がりした。
無職、生活保護、母子家庭
旧知の知人から、「21歳の主婦が2万円でサポート募集をしている」との情報が入った。旦那に内緒で若い新妻がウリをやってるというありきたりな買春話かと思ったが、詳細を聞くと想像をはるかに超えていた。
なんとその新妻は、西日本の某地域にある市営団地で結成された主婦売春のサークルに所属しているというのだ。
しかも、無職、生活保護、母子家庭など貧民層の巣窟になっているというその団地では、20~40代、場合によっては50代までの主婦たちが日々の糧を手に入れるため、こぞって売春行為に明け暮れているらしい。
この話の真偽を確かめるべく、その女性に連絡をとり、彼女が住む団地の近所にある喫茶店で会ってみることにした。
1~4棟まで主婦売春派閥がある
やってきたのは、マユミ(仮名、21才)とユウリ(仮名、24才)。マユミはいかにも元ヤンキーという風貌で、ユウリは背が小さく、どこかやさぐれた印象の子だった。
「サークルがあるって聞いてたんやけどホント?」
「あっしなぁ~、2棟に先輩住んでるしなぁ~、“2組”やねんかぁ~」
まるで小学生のようなマユミの受け答えだが、どうやら団地内に複数の売春サークルが存在しているらしい。話は本当のようだ。
「うちの団地には、1棟~4棟まであるんだけど、住んでる家族の奥さんたちはみんなやってるよ」
あっけらかんとした顔でユウリは言ってのける。
この市営団地は家賃平均3万円だというが、そこに住む団地妻の多くが夫に黙って売春をしているとは…。
「アタシらは、子育てとかもお互いに協力してやってて、上の人が言うてたけど“共同体”なんやって。でも、実際、みんなといると何でも乗り越えられるって気がするねん。ギャルサーみたいなもんやわ」
話を聞けば聞くほど、彼女たちの結束が固いことが分かってくる。
料理を持ち寄っての月に1回の食事会、週に3回の家飲み会など、彼女たちは共同生活のような生活スタイルを送っているという。部屋の鍵の貸し借りは当たり前で、お互いの家庭の年収まで知っているとも。さらには、審査の甘いサラ金や闇金などの情報まで共有し合っているらしい。
「どこの闇金は逃げ切れるとか、すぐに情報が回る。生活保護なんかも、窓口のどの人が甘くしてくれるとか、そんなんもあるよ」
相互依存の考えが浸透している特殊なコミュニティが形成されているようだ。
古典的な出会い系利用が有利なことも?
彼女たちの話では各棟によって派閥があり、個々で別の手法を用いているそうだ。棟ごとの縄張りでは、他の棟の人間は場を荒らしてはならないという黙約のようなものまで存在する。
《棟別方法》
・1棟(平均年齢28才)……出会い系サイトを利用
・2棟(もっとも若いシンママが多い棟で平均年齢は23才)……FecebookやインスタグラムなどのSNSを利用
・3棟(デリヘルなど無店舗経営の現役風俗嬢を含む30代全般が多い)……紹介、客への直売
・4棟(30代後半から40代が中心。中には50才を超える女性も)……出会い系アプリなど
男たちとの出会いと交渉の方法は違えど、それぞれそれなりに収益をあげているらしい。
妻たちのことを黙認している旦那も
彼女たちの夫はガテン系の仕事をしている者が多く、梅雨の時期になると仕事がなくなりがちだとか。その期間はパチンコでしのぐものの、安定した収入がない状況が続くという。
とはいえ、そんなに公然と売春行為を繰り返して、一緒に生活している夫にはバレないものなのだろうか。
「ウチの夫は黙認してるよ。だってそんなんバレるし、夜も出て行かせてくれへんやん。仕事中は子どもの面倒みてもらわなアカンし」
ユウリはそう言うが、いくら生活に余裕がないからといって、本当に夫が平然と妻に売春をさせるだろうか。
「アタシらが稼げば、自分はセルシオやらクラウン乗れるやん。だから何にも言わへんよ。だって、別の棟と持ち物で負けたくないもん」
なんと、彼女たちは売春をしながら子どもにブランド品を買い与え、夫には国産の高級車などプレゼントするなど、各棟でお互いに見栄を張り合っている節もあるのだとか。
「この間は、『アンタが担当する援交場所が違うやろ!』って抗議に来た40代の4棟のババアが、中古のベンツでスーパーに買い物行ってたし。それでウチも負けてられへんから、Cクラスの新車買うねん。
屈託なく笑うユウリ。かなり特殊な状況だが、その背景には「売春団地」という環境がそうさせているのかもしれない。
「離婚してるバツイチママの間に挟まれてると、自分も旦那と嫌なことがあったときに“別れたらええわ、何とかなるわ”って気になるんよ。オセロってゲームあるやんか。売春も一緒。ウリやってる奥さん2人と仲良くしてると、自分も“遊ぶお金ほしい、ウリやろう”って思って当たり前やねんって、ホンマ」
そうユウリが言ったあと、けたたましく西野カナの着うたが鳴り響いた。親しそうに話す彼女。いつもの常連客らしい。
彼女は最後に「いつもの場所で……愛してるよ」と言って、スワロフスキーがちりばめられたスマホを切った。
取材・文・撮影/丸野裕行 写真/Shutterstock