価格高騰で日本から消えかけていた「オレンジジュース」に復活の兆し…果汁の価格急落で「販売再開の予定は?」「安くなりますか?」各社メーカーに聞いてみた
価格高騰で日本から消えかけていた「オレンジジュース」に復活の兆し…果汁の価格急落で「販売再開の予定は?」「安くなりますか?」各社メーカーに聞いてみた

ここ数年、オレンジ果汁の価格は歴史的な高騰を続け、飲料メーカー各社は値上げや販売休止といった対応を余儀なくされてきた。一時は「オレンジジュースが庶民の飲み物ではなくなる」とささやかれたほどだったが、今年に入ってから状況は一変。

先物価格が突如として急落し、復活への“追い風”ともいえる展開に。こうした変化を、飲料メーカーはどう受け止めているのか。人気商品の販売再開や値下げの可能性について、各社に話を聞いた。 

5倍以上に“爆上がり”したオレンジ果汁の先物価格

オレンジ果汁の先物価格がじわじわと動き出したのは、2022年頃からのこと。それまで1ポンドあたり100セント台前半で推移していた価格は、200セント、300セントとどんどん上昇。

史上最高値を次々と塗り替え、昨年12月にはついに1ポンド550セントに到達するなど、わずか数年で、実に5倍超という高騰を記録した。

こうした状況を受け、飲料メーカー各社はオレンジジュースの値上げや販売休止といった対応を余儀なくされた。

雪印メグミルクが販売する果汁100%ジュース「Dole® オレンジ 100%」は、2023年4月から1000mlと450mlサイズの販売を休止。

また、森永乳業の「サンキスト100%オレンジ」も同年4月に販売休止を発表しており、公式サイトには現在も「販売再開の時期は未定です」と記載があるなど、再開の見通しは立っていない状況だ。

影響を受けたのは、果汁100%ジュースだけではない。

アサヒ飲料のオレンジ飲料「バヤリース オレンジ」も、2023年12月から1.5Lサイズの販売を一時休止。今年4月8日には沖縄を除く全国で販売を再開したものの、メーカー希望小売価格は410円から626円(税込)へと大幅に値上げ。

さらに、全サイズで果汁の割合を従来の20%から10%へと引き下げる“リニューアル”も実施された。

販売元のアサヒ飲料に現況を尋ねたところ、担当者は「具体的な産地は非開示ですが、従来のブラジルやスペイン以外のエリアからも果汁を調達しました」とコメント。オレンジ果汁の高騰を受け、新たな産地の果汁も使用していることを明かしてくれた。

先物価格が上がり始めた2022年といえば、1ドル150円を超える歴史的な円安が始まった年でもある。オレンジ果汁の高騰と円安という“ダブルパンチ”が、各社の仕入れコストを直撃したことは想像に難くない。

米、コーヒー、チョコレートに続き、オレンジジュースまでもが“庶民の味”ではなくなってしまうのか。ところが、今年に入ってから状況は一変。

これまで高止まりを続けていたオレンジ果汁の相場が、雪崩を打つように急落し始めたのだ。

先物価格は急落するも、消費者が恩恵を受けるのはまだまだ先?

オレンジ果汁の先物チャートを見てみると、2025年4月中旬現在、価格は1ポンドあたり200セント台半ば。わずか4カ月ほどで半値近くにまで急落していることがわかる。 

価格の落ち着きは、消費者にとって朗報だ。しかし、なぜここまで短期間で下がったのか? 

ここ数年で高騰した理由も含め、公益財団法人中央果実協会に見解を尋ねてみた。

「近年のオレンジ果汁の高騰については、世界のオレンジ果汁市場の7割以上を占めると言われるブラジルで干ばつやカンキツグリーニング病の影響による不作が続き、2020年頃から果汁の製造量が毎年低水準にとどまっていることが要因として挙げられます。

また、米国における果汁用オレンジの主要産地であるフロリダ州でも、カンキツグリーニング病の影響で、20年にわたって生産量が大幅に減少しました。

近年はハリケーンの被害も多く、2014/15年度以降は(2015/16年度と2019/20年度を除き)アメリカ国内供給に占める輸入のシェアがおおむね50%を超える状態が続いており、世界的なオレンジ果汁の逼迫に拍車をかけています。

今年に入って先物価格が下落したのは、これから始まるブラジルの2025/26年度のオレンジ収穫量が改善する見通しが出ているためでしょう。ただし、これはあくまで“先物”の話であり、すぐに消費市場の価格に反映されるとは限りません」(中央果実協会・担当者)

事実、中央果実協会の指摘どおり、飲料メーカー各社はまだ先物価格下落の恩恵を受けられていないのが現状だ。

先述の「Dole® オレンジ 100%」を販売する雪印メグミルクに問い合わせたところ、広報担当者は「先物価格の落ち着きは把握しておりますが、現時点で具体的な販売再開の目処までは立っておりません」と回答。当面は、現在流通している200mlサイズのみの販売にとどまるという。

また、「サンキスト100%オレンジ」の販売元である森永乳業の広報も、「こちらの商品については、現時点で再開の予定はございません」とコメントした。 

再開の目処すら立たない以上、値下げが実現するはずもない。オレンジジュースが身近な飲料として楽しめる日は、もう来ないのかもしれない。 

なぜ国産オレンジで代用できない? その“単純明快”な理由

一方で、微妙なタイミングとなってしまったのが「バヤリース オレンジ」だ。

先述のとおり、同製品は4月8日から果汁の割合を減らし、販売を再開。しかし、先物価格が下落し始めている現在の状況を考えると、もう少し耐えれば、従来の仕様での再開も可能だったかもしれない。 

この点についてアサヒ飲料に「先物価格の落ち着きに伴い、果汁割合や価格を元に戻す予定はあるか」と尋ねたところ、「現時点で予定はありませんが、引き続き状況を注視していきます」との回答だった。

各社に大きな影響を与えているオレンジ果汁の高騰だが、こうなると疑問に思うのは「国産オレンジで代用できないのか」という点だ。

構造的な円安に加え、エネルギーコストの高騰、さらには投機筋の参入による不安定な相場といったリスクを考えると、海外産に頼らず、国産でまかなうほうが安定した調達につながるのではないかと思えてくる。

しかし、結論から言えば、国産オレンジは国内の旺盛な需要をまかなえるだけの生産量がないのが実情だ。この点について中央果実協会は、次のように説明してくれた。

「日本ではオレンジはほとんど生産されておらず、その量は年間3万トン弱にすぎません。ミカンは年間70万トン程度が生産され、そのうち1割強が果汁用に加工されているようですが、品質のよいものは青果として高値で売れるため、果汁向けには出回りません。

さらに、加工業者が青果用を高値で仕入れても、果汁として製造・販売した場合に採算が合わないのです」

あらゆるモノの価格が上がり続ける昨今、せめてオレンジジュースだけでも気軽に手に取れる存在であってほしいが……。我々消費者は、ただ静かに見守ることしかできない。 

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

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