「給与未払いで生理用品すら買えない」社員が語る絶望...「勝手に離職させられ」失業保険も満足に受けられず
「給与未払いで生理用品すら買えない」社員が語る絶望...「勝手に離職させられ」失業保険も満足に受けられず

3 月 22 日から 4 月 20 日までの約 1 か月、全店舗を一時休業すると突如発表した大手脱毛サロン「ミュゼプラチナム」。その後、高橋英樹社長が従業員に退職勧奨を始めるなど、内部では崩壊が始まっている。

2024年3月から感じ始めた異変

3月31日に開かれた従業員向けの説明会で、高橋社長が従業員全員に対して会社都合での退社を推奨した。同社は、昨年の12月あたりから従業員に対して賃金が十分に払えていないほどの経営危機であったという。

そのうえで、高橋社長から飛び出したのはあまりにも辛辣な言葉だった。

「みなさんにも僕にも少なからず、ミュゼプラチナム全体で売上が上がらなかった原因があるんじゃないですか?」「公務員じゃないので、売上からしか給料って払われないです。そこがなぜかミュゼの方々は理解できてない」

いったい今、従業員たちはどのような思いで日々を過ごしているのだろうか。店舗責任者を務める30代後半の女性が集英社オンラインの取材で胸の内を語った。

「最初の異変を感じたのは2024年の3月ごろ、そこではじめて給与の遅配がありました。その頃ぐらいから経営陣が大きく替わり始めていましたね。ただそのときは、手続きが少し遅れたという説明だけで、給与の遅配についてはそれ以降、11月まではありませんでした」(ミュゼ従業員)

だが現場レベルでは、ほかにも影響が…。従業員の保険証の変更や、「ミュゼプラチナム」という名前の入った玄関マットの廃止、ウォーターサーバーがなくなるといった変化があったという。

また、来店客が使用するタオルやガウンのリネンの洗濯を、それまでは外部のスタッフに任せていたが、従業員がしなければならなくなった。

そして決定的な給与遅配が11月から起き始める。11月、12月に入る予定だった給与は遅れながらも全額支払われたが、1月24日に支給された給与は30パーセントのみ、それ以降はゼロで今も払われていない

店舗従業員の多くはこれを機に、3月末で退職していったという。

昨年9月に『ミュゼプラチナム』を離職していたことに

「やはり給与の面が一番怒りを覚えます。店舗スタッフは若い女性が多く、給与が払われないことで本当に生活に困り、食べるものすら満足に買えていません。生活必需品の生理用品すら、買うのがもったいないと思ってしまうほどです。

経営陣はこうなることがもちろんわかっていたと思います。それを考えるとますます怒りがわいてきます」(同・従業員)

しかも、退職をしてなお、会社の都合で困っている人もいるという。

「これは本当に従業員のみんなが先日知ったことなのですが、マイナポータルで雇用保険の欄を見てみたところ、去年の9月1日に『株式会社ミュゼプラチナム』を離職して、9月2日から運営会社の『MPH株式会社』に所属していることになっているのです。

そうなると MPHの離職票だけではなくて、ミュゼプラチナムのときの期間証明書もないと、正しく失業保険が受け取れません。スタッフの中には4月11日が失業保険の認定日だったのに、失業保険を受け取れなかったという人もいたそうです」(同・従業員)

ハローワークの窓口の中には融通を利かせて、給与が支払われていない期間や、3割しか支払われていない期間を考慮したうえで、失業保険を受給できる措置をとってくれたところもあるという。だがその代わり、本来よりももらえる額は減ってしまったようだ。

ほとんど泣き寝入りするしかない状態になっている従業員たち。いったいどうすればよかったのだろうか。人事コンサルタントで危機管理にも詳しい増沢隆太氏に見解を聞いた。

「残念ながら自己防衛するしかないというのが現状です。

経営危機は“突然”ではなく、必ず予兆があります。今回でいえば、給与遅配は確実に経営がおかしいことを示すものと考えられる事象でした。

本来であれば企業は社員の雇用を守る義務があり、まっとうな経営ができていれば、仮に経営危機が来ても社員を守ることを優先します。しかし中には、そうではない企業もあるのです」(増沢氏、以下同)

『みなさんにも原因がある』発言は道理が通りません

エステ業界、英会話業界など、会員制度、前払い制度を取るビジネスではこれまでも大きなチェーンが突如倒れる例があった。

かつて全国展開してテレビCMも流していた英会話教室『NOVA』が倒産した際も、実は400億円以上の負債があったことが判明して大きな話題になった。

では今回のミュゼの場合、経営危機の状況下で、どのような経営責任があるのだろうか。

「私は経営内で何が起こっているかは詳しくわからないため、社長の発言のみについていうなら、『退職勧奨』自体は、間違ったことではありません。ただ、『みなさんにも原因がある』発言は全く道理が通りません。

社長や経営陣は相応の待遇(給与などの特権)を得ている分、経営責任があります。しかし社員はもらっている給与分以上の責任はない。つまり当然ながら経営が傾いた責任は経営陣にあるのです」

前述の従業員によれば、未払い分の給料については現経営陣から、「旧経営陣に損害賠償請求をして、損害賠償請求で得たお金で払います」と説明されているというが、そこでお金を得たとしても支払われるのはおそらく1、2年後になるという。

多くの従業員、そして支払った分のサービスをまだ受けられていない顧客が、少しでも救われるための経営判断が求められる。

取材・文/集英社オンライン編集部

編集部おすすめ