億万長者へのルートは「金融エリート」系と「ベンチャー経営者」系の2種類がある…辞めゴールドマンが明かす超富裕層の働き方
億万長者へのルートは「金融エリート」系と「ベンチャー経営者」系の2種類がある…辞めゴールドマンが明かす超富裕層の働き方

ゴールドマン・サックス時代に多くの億万長者たちと関わってきた投資家の田中渓氏。そんな彼が思い浮かべる億万長者の人物像は2種類あるという。

富裕層になるためのルートと、その仕事や生活の実態はどのようなものなのか。

『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』より一部抜粋、再編集してお届けする。〈全3回のうち1回目〉

富裕層へのルートは「金融エリート系」か 「ベンチャー経営者系」

ゴールドマン・サックス時代には、年収1億円以上の人たちはもちろん、とある国の王様クラスのような規格外のお金持ちとの出会いも数多くありました。それもあり、「本物のお金持ちって、どんな人?」と富裕層の実態や生態系について質問されることも少なくありません。

「億のお金を動かしている人」と聞いて、文化や芸術、スポーツなどの分野で天才的才能をもって富を築いた人以外に、これまで出会ってきた人たちから僕が思い浮かべる人物像は2パターンです。2パターンとは「金融エリート系」と「ベンチャー経営者系」。これが現代の富裕層を代表するペルソナではないでしょうか。

もちろんあくまでイメージですが、「こういう人もいるんだな」と思って読んでくだされば幸いです。それぞれの生態を考察していきます。

「金融エリート系」出身の富裕層の実態

金融エリート系出身の富裕層の例として僕がイメージするのは、ビジネスマンとして駆け出しの頃ではなく、30代後半~40代半ばくらいになって億のお金を手にしている人です。

ルーツとしては、中高生時代からエリートで国内大学では東大、京大、一橋、東工大、慶応クラスの大学に進学。あるいは、高校や大学時代から海外留学を経験し、そのまま欧米の一流大学に進んでいることもあります。

その後、投資銀行や戦略コンサル会社を渡り歩く、というのもよく見るパターンです。ビジネスキャリアのスタートが外資系ではなく日系企業のケースもあり、その場合、途中でMBAホルダーになって外資系企業に転職してくるという道も。



いずれにしても、こんなにピカピカのエリートの人たちでも、億を超えるには高いハードルがあるといいます。これまでの給与形態や定期昇給に頼るだけでは限界があり、どんなに優秀な人でも「5000万円の壁」があって、億を超えていくのはなかなか難しい、という話を聞いたこともあります。

彼らのお金を稼ぐ過程にホップ、ステップ、ジャンプがあるとしたら、間違いなくジャンプはファンド。つまり、投資の世界に入ってくる人たちがほとんどです。ファンド資金や会社の自己資金で投資をし、利益をもたらすことができた場合は成功報酬として還元されるので、そこで億のケタに届く収入を得られることになる、というのが億を超える人になるための筋書きです。こうして、完全成果報酬型のファンドへのジョブチェンジすることが大きなきっかけとなり、富裕層の仲間入りを果たします。

仕事が好きという「超王道」

意外だと感じるかもしれませんが、金融エリート系の人たちの仕事のやり方はハイリターンの割にハイリスクではありません。転職の際に生じるリスクを除けば、全般的にはミドルリスクといっていいかもしれません。

というのも、「投資をしている」といっても、会社員である限り原資となるのは会社が集めた投資家のお金や、会社の自己資金です。自分自身が株主から出資を募って大金を預かったり、銀行から大きな借金をしたりするわけではありません。

極端な話ですが、もし会社のお金で投資に失敗して億円単位のお金を溶かしてしまったとします。それで会社をクビにはなるかもしれませんが、法に触れる行為や背任行為、重過失などがない限り「溶かした10億円を今すぐ返せ」などと個人が責任をとらされることはあまりないと思われます。

むしろ、金融エリート系出身で富裕層まで上がれる人にとって大切なのは、果敢にリスクをとって一か八かの勝負に出るよりも、いかに仕事で大きな失敗をしないことともいえます。

そして、前述したとおり、彼らは今の仕事で蓄財したものを、無難にでもきちんと運用して大きくしているという「超王道」で成功しているのです。

プライベートでは、「ゴルフが好き」「海外旅行によく行く」「ワインに詳しい」というタイプが多い印象です。ただ、「とはいえ、この人たちがいちばん好きなことは仕事なのだろうな」と感じるのは、ゴルフや旅行も仕事関係の人たちと行ったり、いいレストランでワインを飲んでいても話題は仕事のことが中心だったりと、趣味と仕事の線引きが曖昧になっていることが少なくありません。

仕事が好きだから「超王道」をコツコツと積み上げていくことができ、その結果成功して大きな富を得た、という人が多いのも金融エリート系の特徴です。

「ベンチャー経営者系」出身の富裕層の実態

ベンチャー経営者系出身の富裕層は、金融エリート系に比べて若く、20代後半~40歳くらいでいわゆる成功をしている人たちが多い印象です。ただし、成功するまでは大きな収入を得るチャンスには恵まれていないことがほとんどでしょう。

ルーツは、金融エリート系と同様に高学歴な人もいれば、実家が自営業で幼い頃から経営者の働き方を見ていた人や、自分を変えるような大きなライフイベントがあって強い衝動や使命感により、世の中にうって出ようと決意した人もいます。

起業のきっかけは、学生起業や「社内コンテストで優勝して100万円の賞金をもらったので、そのアイデアをもとに会社をはじめます」というような社内ベンチャーからのスピンアウトもあり。外資系企業で激務を経験し、「コンサルで幅広く得た企業経営の知見を活かして」「金融リテラシーやマネジメントの実務経験をレバレッジに」といった理由で起業する人もいます。
 
富をつかむきっかけは、起業後に上場したり、企業に買収されたりして大きく当てること。

これは金融エリート系とは異なり、大きなリスクをとりハイリターンをつかみ取ることが求められます。大きな失敗があっても、何度でも立ち上がり、成功するまでチャレンジできるかどうか、その精神力と実行力が求められます。

「上がり」になっても、そのままリタイヤというケースは稀

さらに、会社を興した創業者に多い「ファウンダーあるある」としては、筋のいいスタートアップへの投資話が舞い込むケースが増えることです。なので、そこでまたお金を増やすチャンスを得るのです。



金融エリート系よりベンチャー経営者系の人にそういった投資話が舞い込みやすい理由については、端的にお伝えすると、自身の経営するベンチャーで成功した人がスタートアップに資本参加してくれると、企業側は経営指南の可能性にも期待できるだけでなく、「あの成功者が出資している企業」としてのお墨付きを得られて、その後の資金調達もしやすいというメリットがあります。

そうやって、VIPのみが参加できる超優良ポートフォリオのチケットを手に入れたベンチャー経営者系出身の人たちは、満を持して富裕層の世界へ昇っていくことになります。
 
ベンチャー経営者系出身で富裕層の仲間入りをした人のなかには、先ほど説明したIPOやM&Aといった大イベントで富を築いた結果、20~40代で億を手にして早々にリタイヤする人もいます。

ただ、早いうちから「上がり」になっても、そのままリタイヤ、というケースは稀だと思います。

そもそも同世代の友人なら彼らにも自分の仕事があるので、余暇を一緒に付き合ってもらうことが叶いません。

たとえ飲みに行っても「おごるから」と10万円以上するワインをあけられても、相手はドン引きするだけでしょう。一線を退いているので、社会や経済、自分が働いていた業界のニュースすらも段々わからなくなり、友人たちとも距離ができはじめるようになってしまいます。

充電と称して長期の旅に出ることもあります。ところが、もともといろいろなことに興味があるタイプだからこそ成功にいたるベンチャー経営者系の人たちは、リタイヤ後1~2年を旅に出て充電できた頃にはもう、自分が仕事をしない状態に飽きてしまっています。

そこで、SNSなどで「もう一度、起業します」などと宣言し、シリアルアントレプレナーとしてふたたびマーケットに戻ってくるケースもあるようです。

プライベートでは、ベンチャー経営者系の富裕層はおおらかでお金の使い方も気前がいいというイメージです。

僕の経験でも、「あそこに別荘があるけれど、よかったらいつでもどうぞ」「サウナ付き会員制のバーに専用のワインセラーもあるので好きに飲んで」という驚くべき気前のいい人たちとの出会いが何度もありました。


 
こんなふうに、富裕層の世界に行く人たちをあえて分類してみると、金融エリート系とベンチャー経営者系の2パターンがあると感じています。

よく、スキルや知識を表現するのにブックスマートとストリートスマートという言葉が使われます。ブックスマートとは教科書や本を読んで学ぶ、知識があって頭のいい人のことで、ストリートスマートとは実際の経験や現場をもとに学ぶ、賢い人のことを指します。

僕は金融エリート系とベンチャー経営者系はこの表現に似ているなと思うことがあります。派手なリスクはとらず、やるべきことをやって上がっていく金融エリート系はブックスマート的な富裕層への上がり方。大きなリスクをとりながらストリートでファイトして、1億に届いた後も1000億に膨らませていくようなベンチャー経営者系はストリートスマート的な富裕層。

どちらも同じ「億円」を超える目標。でも、行き方も生き方もまったく異なります。自身の性格ややりたいこと、やれることを見極めて、道を選ぶといいでしょう。

文/田中渓 写真/Shutterstock

『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』

田中渓
億万長者へのルートは「金融エリート」系と「ベンチャー経営者」系の2種類がある…辞めゴールドマンが明かす超富裕層の働き方
『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』
2024/11/271,870円(税込)312ページISBN: 978-41986590422008年に起きた世界規模の金融危機、いわゆるリーマンショックは、ゴールドマン・サックスに入社してまだ1年しかたっていない僕にとって足元が揺らぐほど信じがたい出来事でした。
 金融業界はもちろん、世界中の名だたる企業も軒並み大きな経済的な打撃を与えた金融危機の影響で、53回もの面接をくぐり抜けてやっとの思いで入社した僕自身も「毎日いつ自分も解雇されるのか?」という不安を抱える日々が続きました。
 幸いにしてクビは免れたものの、その後ボーナスはゼロ、大幅な減給に加え、在籍部署の9割の人員が削減されるという壮絶な展開が待っていたのです。

 ところが、そんなどん底時代を経験するも、その後17年続いた会社員生活では最終的に投資部門のトップである日本共同統括を務めることになります。
 在籍17年間では、20ヵ国以上の社内外300人を超える「億円」資産家、「兆円」資産家、産油国の王族など超富豪などと協業、交流をはたしてきました。
 この本は、そんな僕が会社員時代に学んだ富裕層の哲学や思考、習慣など、彼らの生態系について学んだことを、あますところなくお伝えする一冊です。具体的な投資方法や特定の銘柄を推薦するような、いわゆる「投資術の本」ではありません。「富裕層マインドを学ぶ本」という位置づけです。
 なぜ、富裕層マインドを学ぶことが大事なことなのか。それは、今どのような環境に置かれている人であっても、富裕層マインドにシフトすることで「億を超える人」になれる可能性があるからです。
 人は想像ができないことはできません。想像ができない人にもなれません。だから本書を通じて、富裕層について皆さんがイメージを持てるように、さまざまな角度から、その実態や生態系にお伝えしたいと思います。
(プロローグより)
Chapter1 年収1億円以上「富裕層の思考」
Chapter2 富裕層だけが知っている「お金の哲学」
Chapter3 お金がお金を生む「お金の使い方」
Chapter4 とんでもなく稼ぐ人の「時間の使い方」
Chapter5 普通の人でも実践できる「億稼ぐ人の生活習慣」
Chapter6 一生お金に困らない人の「人間関係の築き方」
編集部おすすめ