
いまや、道を歩けば日本人以上に外国人観光客の姿を多く見かける歌舞伎町。今年2月初旬には“インバウンド向け違法風俗店”が警視庁により摘発され、16カ国もの紙幣や硬貨が押収された。
「歌舞伎町は異質な場所だよね」
4月某日、金曜日20時すぎの歌舞伎町。“トー横”と呼ばれる新宿歌舞伎町のTOHOシネマズ周辺ではコンカフェの客引きが訪れる人々を出迎えるように立ち並び、その前を多くの人が練り歩くといった異様な光景が広がっていた。
行き交う人々は、日本人よりも欧米やアジア系、中東系の外国人観光客のほうが多い。東急歌舞伎町タワーの正面の大階段には外国人観光客が座りこみ、そのほとんどがストロング缶などのお酒を片手に談笑している。
ドイツ西部のマンハイムから来たというエリックさん(26)は友人と2人で訪日し、成田に到着するやいなや歌舞伎町のホテルを予約し、入国当日に歌舞伎町に来たという。
「やはり歌舞伎町は日本の一番の繁華街でしょ? クールなその光景を見たいと思った。今日の昼間は、浅草に行ったけど静かでつまらなくて驚いたよ。あと3日ほど歌舞伎町を拠点に、都内あちこちに行くけど、その後の滞在1週間はノープラン(笑)」
歌舞伎町の“立ちんぼ”や“トー横キッズ”のことを知っているかと聞くと、やや顔をしかめ気味にこう答えた。
「立ちんぼって…“prostitute(売春婦)”のこと? 聞いたことはある。でもべつにその方々を見に歌舞伎町に来たわけじゃない。トー横キッズのような存在はマンハイムの公園や駅にもいるよ。
彼らのことは“Punk”って呼んでる。ドイツだと、彼らのような存在に施しをするシェルターを作ったりもしている。日本はその点、クローズな感じがするね、他人に興味がないというか、見て見ぬふりをするような」
また、同じようにTOHOシネマズ前でストロング缶を片手に談笑する2人組のフランス人に話しかけた。彼らは鹿児島県の霧島や、箱根の山々を散策して自然を楽しんだ後、歌舞伎町に2泊ほどして帰国するという。
「僕は、実はフランスの街娼を買ったことがある(笑)。でもやはりあまり楽しくなかった。日本の立ちんぼのことはもちろん知ってる。日本の女性は幼く見えるから、よりいっそう支援が必要なのではないかと哀れに見えてしまう」
「歌舞伎町は異質な場所だよね。日本全国や東京の他の場所でもこんな場所はないし、こんな事態にはなってないでしょ? フランスにもトー横や大久保公園と同じような場所があるよ。そこではリストカットをしてるような女の子を見る。日本だけでなくどこにでもある光景だからこそ大変な問題だよね」
「立ちんぼって言葉はTikTokで知った」
アルゼンチンから来たという男性2人と女性1人の3人組は歌舞伎町を訪れた理由をこう述べた。
「YouTubeで見て混沌とした活気を感じた。
「トー横キッズは音楽流して高揚感を感じてるよね、鬱屈した気持ちをここで晴らしてるのかな」(アナ)
「立ちんぼって言葉はTikTokで知った。怖いもの見たさのような感覚だ」(ニコラス)
欧米系の観光人客らが一様に“立ちんぼ”や“トー横キッズ”らに対し同情のような哀れみのような複雑な目を向ける中、アジア系観光客たちの目線はまた少し違った。
インドネシアから訪日したルビスさん(19)とアルサスさん(23)は立ちんぼ目的で歌舞伎町に来たという。
「TikTokで1万5000円でイチャイチャできるって見たから、今日はすでにそのお金を用意してる。大久保公園はどこなんだ?って地図を見てたとこだよ」(アルサス)
だが、立ちんぼを買うことは違法なのだということを伝えると、驚いたような顔でこう言った。
「え! そうなの! なぜ? 彼女らはそれで生計を立てているんじゃないの?」(アルサス)
「正直、歌舞伎町に来てる男性観光客のほとんどが立ちんぼ目的だと思うけど? それくらいTikTokでは歌舞伎町=立ちんぼってイメージがある」(ルビス)
インドネシア人のこの2人は、大久保公園への案内を記者らに求めてくる始末だった。もちろん丁重にお断りしたが、しばらく取材を続けていると、着ぐるみを着た歌舞伎町系YouTuber・ゆきにゃんに遭遇。
ゆきにゃんに今の“トー横キッズ”と“立ちんぼ”事情について聞いてみた。
「キッズはスタメン化しつつあって、都内以外の栃木や茨城や埼玉から来た20名くらいの子が常時います。4月に2回一斉補導があったみたいですけど、毎回いつものメンバーが補導されているという感じ。
立ちんぼの子たちも赤ベストのお巡りが毎日巡回してるから、もはや移動しながら交渉してる感じで“歩きんぼ”(笑)。それか大久保病院前などにいると注意されるから、店の軒下で“座りんぼ”ですね」
暖かくなり、外に居座りやすくなってるのだろうか、一斉補導があろうとキッズも立ちんぼも相変わらずのようで、この現象の解決にはまだまだ問題が山積みである。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班