斎藤知事がハラスメント研修を受講「個人の問題なのに200人の職員と一緒?」「スピード感がなさすぎる」“瞬間湯沸かし器”と裏で言われていた知事はこれで変わるのか?
斎藤知事がハラスメント研修を受講「個人の問題なのに200人の職員と一緒?」「スピード感がなさすぎる」“瞬間湯沸かし器”と裏で言われていた知事はこれで変わるのか?

県第三者調査委員会が11件のパワハラを行なったと認定した斎藤元彦知事。兵庫県は、そんな知事がハラスメントなどに関する研修を5月に受けると発表した。

しかし一方で斎藤知事は、自身への処分は行なわず、疑惑を告発した元県幹部の処分を「違法」だとする第三者委の判断も受け付けない姿勢を続けている。 

地元メディアが「速報」と銘打って報じたパワハラ研修

「4月25日に県がパワハラ研修を5月12日に行なうと発表すると、地元メディアは『速報』と銘打って報じました。普通なら速報する話ではなく笑い話に聞こえますが、知事のパワハラ絡みのことはそれだけ重大事と受け止められているのかと悲しくなります」

県庁職員がそう嘆く“知事の研修”はどのように実施が決まったのか。

「斎藤知事の一連の疑惑では、昨年3月に匿名の告発文書を県警やメディアに送った元西播磨県民局長・Aさんが、斎藤知事らによる告発者探しで身元をつかまれた後、4月に県の公益通報窓口に改めて通報手続きを取っています。

これに基づき県公益通報委員会の弁護士らが中身を調査しました。その結果、パワハラについては『確証は得られなかったが斎藤知事に強く叱責されたと感じる職員がいた』と判断し、知事らにパワハラ防止などの研修受講を求めるとの結論が昨年12月に公表されました。

また、昨年10月にも県の人事委員会が知事らへのハラスメント研修が必要だと表明しており、今回の研修はこれらの指摘を受け実施が決まったものです」(県政担当記者)

 斎藤知事の疑惑は、県議会の調査特別委員会(百条委)と第三者委も調査を行なっている。

「この過程で告発者のAさんと百条委メンバーだった竹内英明元県議が相次いで自死しました。Aさんは県当局が告発者探しで入手した県公用パソコンの中にあった私的な文書の内容を当時の県総務部長、井ノ本知明氏が県議らに拡散したことなどに心を痛めていました。竹内元県議は『知事の疑惑は嘘でハメられた。黒幕は竹内だ』などというデマによる誹謗中傷で苦しんでいました」(県警担当記者)

百条委と第三者委は今年3月に相次いで調査結果を発表。

パワハラについて百条委は、斎藤知事が部下職員を怒鳴りつけたことを「パワハラ行為と言っても過言でない言動があった」と認定した。

第三者委はさらに踏み込み、斎藤知事の10件の言動を「怒りに任せて職員を論難した」「職員に精神的衝撃を与え、職員は畏怖し職場環境は悪化した」などとし、パワハラと認定。

さらに斎藤知事が昨年3月27日の記者会見で告発者Aさんを「嘘八百」「公務員失格」と言い放った行為もパワハラと認定した。

「個人の言動が問題なのに、なぜ200人も受ける必要があるんでしょう」 

第三者委は、斎藤知事の指示のもと、告発者探しをしてAさんと特定し、処分をしたことは公益通報者保護法に照らして「違法だ」とも断定している。

「斎藤知事は従来、パワハラとの指摘には“業務上必要な指導”で問題はなかったと主張し、百条委報告に対しても“一つの見解”に過ぎないと強気な姿勢を続けました。しかし第三者委が11件の具体的なパワハラを指摘すると『認定については認めていきたい』と、初めて問題があったことを認めました。

ところが今度は、『襟を正して仕事をしっかりしていくということが大事だと思います』と言うだけで自分を処分しようとしないんです。

さらに、告発者のあぶり出しと処分が違法だと言われたことには以前からの『告発文書は誹謗中傷性が高く公益通報ではない』との主張を変えず、対応は適切だったと言い続けています」(県政担当記者)

こうした状況が続く中、昨年10月から必要性が指摘されてきたハラスメント研修は年度末になっても行なわれず、記者会見では記者から「あまりにもスピード感がなさすぎる」という指摘まで出ていた。

そしてようやく実施を発表した兵庫県は、研修は斎藤知事だけでなく次長級以上の幹部職員約200人が対象だと説明した。これを聞いた県議会関係者は、

「斎藤知事の個人の言動が問題なのに、なぜ200人も受ける必要があるんでしょう。一緒に受けてお茶を濁すつもりではないでしょうか。自分の考えと違う意見は『一つの見解』と切って捨てる斎藤知事が研修を受けても、とりあえず記者会見を乗り切るのが目的なら何の意味もないでしょう」

と話し、効果に期待していないことを隠さない。

県によると研修の中身は、①部下の指導方法などの組織マネジメント、②公益通報者保護制度、③個人情報保護制度、の3つのテーマで、計約4時間行なうという。

①では、怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」の必要性が説かれるという。百条委が実施した県職員アンケートで“瞬間湯沸かし器”と裏で言われているとも書かれた斎藤知事は果たして自分のこととして聞き入れるのか。

次の研修をどれぐらい覚えていられるのか  

県関係者の一人は、「公益通報者保護法について、斎藤知事は政府機関と異なる、自身に有利な解釈を会見の場で主張し続けています。研修を受け内容に納得するならこれまでの主張は続けられないはずですし、逆に言い分を変えないなら研修内容を受け入れていないことになるでしょう。

また、Aさんの私的文書を県議らに拡散した井ノ本知明元総務部長も幹部職員なので受講対象に含まれます。総務部長という個人情報管理の責任者の立場で私的情報を広めた自身の行為を省みることはあるでしょうか」と指摘する。

さらに、別のことを心配する声もある。

「実は斎藤知事は、厚生労働省が公開しているハラスメント防止のための研修動画を休日に自宅で見たと、昨年7月の会見で明らかにしているんです。

しかし4月16日の記者会見で記者からこの動画の内容を覚えているかと聞かれた斎藤知事は、『詳細までは自信がないが、事業者としてのあり方があった研修だと認識している』とだけ答えています。記者からは『受けた研修の内容を1年もたたずに忘れる人が次の研修をどれぐらい覚えていられるのか』との声が出ました」(県政担当記者)

200人が一緒に受ける研修で斎藤知事の態度は変わるだろうか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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