勉強が苦手な子どもに対する唯一の解決法「20点多く得点できる科目を増やして、ドーパミンを出す習慣を作る」ためにできること〈鎌田實〉
勉強が苦手な子どもに対する唯一の解決法「20点多く得点できる科目を増やして、ドーパミンを出す習慣を作る」ためにできること〈鎌田實〉

「僕の本当の人生も17歳から始まった」と語るのは、多くの著作でも知られる医師の鎌田實氏。特に勉強は、「人生の中で隠れている大切なもの」を見つけるために絶対に必要なものだという。

中3で割り算ができない男子が大学を目指すまでを例にその教訓を紐解く。
新刊『17歳のきみへ 人生で大事なことは、目には見えない』より一部抜粋、再編集してお届けする。〈全3回のうち2回目〉

人生の中に隠れている大切なもの

数学が60点だったところに80点取れたら、間違いなくドーパミンが出ます。気持ちがいいんです。快感ホルモンが出るんです。そして先生や親も褒めてくれる。その習慣がつくと勉強は面白くなります。

サッカーでも野球でもバスケットボールでも、今までよりもいいドリブルができるようになったり、フォークボールの沈む球を打てるようになったり、ノールックパスができるようになったら快感ホルモンが出るのです。この快感ホルモンの味を覚えたら、面白くなって勉強したり練習したくなります。

僕たちが点数が上がったと喜んでいるのに、親がそこで「まだ70点か」などとけなすような言葉を使うと、ドーパミンは出ないんですよ。

小さな目標を達成させる、それが達成できたらまた小さな目標を立てて成功をする。そう繰り返していくと何でも面白くなる。面白くなれば、親が心配して「もう寝なさい」と言っても子どもは勉強するものです。

インターネットで出てくるニュースは、クリックするだけで情報を得られますが、見た人を洗脳するように作られている。一個のニュースを見ると次は、この人はこういうネタが好きなんだとAI(人工知能)が判断して、同じような情報ばかりが表示されていく。便利なようで怖いことです。偏った情報や嘘っぱちの世界に引っ張られていく可能性があるんだ。

勉強するのは、いろいろな科目の授業を通じて、「なぜこうなるんだろう」「真実はどこにあるんだろう」と考え続けることで、「情報を鵜呑みにせず、その奥に隠れている大切なものを見つける」姿勢が、正しい視野を養います。

僕は朝4時半に起きると17歳で決めてから50年ずっと守り続けました。受験勉強が終わってからも、詩や小説を読んで自分を豊かにするために続けてきた。人生の中に隠れている大切なものを見過ごさないために。

中3で割り算ができない男子が大学を目指すまで

Q
勉強が苦手です。
どうしたらいいですか。

A
大阪の釜ヶ崎(現在は西成)というところでは、冬になるとホームレスの人たちが毛布にくるまり凍えながら路上生活をしています。その取材に行ったときにショウタくんという青年と出会いました。

彼のお父さんは蒸発、母親はうつ病。

小学四年くらいからあまり学校に行けず、中学3年のときに割り算ができなかったそうです。数学ができるようになりたいと思った彼を、学校の先生たちも応援してくれ、大学を目指します。

ショウタくんは浪人しますが、中学の恩師と釜ヶ崎で子どもたちの生活を支えるNPOのリーダーが、授業料を半分ずつ出し合ってくれ予備校へ。

翌年、彼は大学に合格。NPOのリーダーと僕が、今度は半分ずつ大学の授業料を出すことに。彼は大学で数学を楽しんだ後、そのNPOの中心的役割を担うようになりました。

何かの役に立つからではなく、勉強そのものが面白かったそうです。必死に人生にしがみついていると、こんな奇跡のようなことが起きるのです。

「勉強が苦手」から脱出するには、好きな科目をひとつ、徹底的にやることです。今までよりも20点得点が多くなったらドーパミンという快感ホルモンが出て気持ち良く、自信にもなります。

次に他の科目にも挑戦し、20点多く得点できる科目を増やしていきます。40点だった人が60点になるのはすごいことだし、70点だった人が90点になれば、とんでもない優等生です。



こうやって小さな手ごたえを広げていく経験は、社会に出てから力になります。

文/鎌田實 写真/Shutterstock

17歳のきみへ 人生で大事なことは、目には見えない

鎌田實
勉強が苦手な子どもに対する唯一の解決法「20点多く得点できる科目を増やして、ドーパミンを出す習慣を作る」ためにできること〈鎌田實〉
17歳のきみへ 人生で大事なことは、目には見えない
2025/4/251,650円(税込)136ページISBN: 978-4087817652

エールを送る一冊。
全国の高校で20年以上、人生の歩き方を語り続けるドクター鎌田の「読む講演」。

〈はじめに より〉
僕が17歳の頃どんな考え方をしていたのか、その考え方がその後どんなふうに自分の人生を変えていったかを書いてみました。(中略)
タイトルは『17歳のきみへ』ですが、実際には15歳くらいから22歳くらいの若者に読んでもらえたら嬉しいなあと思っています。
きみのことをよく理解してくれる家族、反対に全く理解してくれない親やおじいちゃんおばあちゃん、あるいは学校の先生がこの本を読んでも、お互いが分かり合えるように書いたつもりです。

〈第1章 人生の壁を壊す言葉を持とう〉
成功する人には言葉がある
図書館の本に育てられた
人の心を動かせる人とは
〇じゃなくて△でいい
人それぞれの波がある
人生の壁を壊す言葉を持とう
「まわりの人と違う」のは生きる武器になる
なぜ勉強するんだろう
「反偏差値」の流れがきっとやってくる
越境する快感
〈第2章 個性と自由〉
人の世をのどかに、人の心を豊かに
攻撃してくる人の思い通りにならない
1%なら誰かのために生きられる
東大中退
遺伝子に縛られずに生きる
人には「失敗する自由」だってある
英語ができなくてもノーベル賞
発想力で勝負。これならきみも闘えるはず!
仲間を大事にすると、いいことがある
〈第3章 自分を生きる〉
17歳からの人生の走り方、泳ぎ方、飛び方
「熱情」と「冷静」
17歳でまだ何も起きていなくても
海で溺れている人がいたら、泳げる人は海へ飛び込め
やりたいことは、あきらめない
巨大なネットワークの中で、すべてのものはつながっている
僕の中にいる「三分の一の悪人」
『5月35日』という発想力を忘れるな
17歳のときに身につけた5つの「生きる力」
比べない習慣を持つと、生きるのが楽になる
若い頃から自分の心と体の支配者になろう
人は何をしに生まれてくるのか
「にもかかわらず」という逆転力
もし十代に戻ったら図書館で読みたい五冊
有限だからこそ、今をしっかり生きる
母さん、生んでくれてありがとう
自分の個性を「魅せる化」しろ
成功を左右する「やりぬく力」

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