「アメトーーク!をずっと続けていきたい」ピン芸人になって3年半、蛍原徹が明かした自分だけのやり方「僕はもう芸人として挫折しているから」
「アメトーーク!をずっと続けていきたい」ピン芸人になって3年半、蛍原徹が明かした自分だけのやり方「僕はもう芸人として挫折しているから」

お笑いコンビ・雨上がり決死隊を解散し、ピン芸人になって3年半。“ホトちゃん” の愛称で知られる蛍原徹さんは、長年MCを務める『アメトーーク!』(テレビ朝日系)など、いまも芸人として活躍し、第一線を走り続けている。

そんな彼に「仕事術」について話を聞かせてもらった。(前後編の前編) 

「僕はもう芸人として挫折しているから」

「僕が1番心がけていることは、とにかく時間を守ること」

“時間を守る”……一見当たり前のことのように思えるマイルール。だが、蛍原が時間を守ることを大切にしているのにはこんな理由があるという。

「すごい先輩や同期、後輩を見ていて、僕みたいなのが芸能界で生き抜くためには、最低限時間を守らないとって。大先輩の芸人さんとは違って、僕なんかはまだまだ。いてもいなくてもいいような僕は、せめて時間くらい守らないといけないでしょ?」

今年で芸歴36年をむかえるベテラン芸人は、なぜそこまで謙虚に語るのか。

少し呼吸をして「僕はもう芸人として挫折しているから」と彼は答えた。

「僕たち、お笑い芸人は1度必ず挫折しているんですよ。お笑いを始めて3年目の頃だったかな。明石家さんまさんやダウンタウンさん、(島田)紳助さんに憧れて自分も彼らのように『なれる!』と意気込んで、芸能界に入った。

でも実際に(彼らと)一緒に仕事をしてみると、あまりの才能の違いに『これは無理や…』と気が付いてしまう。そうなったときに、自分にできることは何かを必死に模索したんです。だったら、せめて時間くらいは守らなきゃいけないなと思ったんですよね」

そう力強く話す蛍原だが、「でも遅刻を1度もしたことがないわけではないですけど…(笑)」と現場を和ませる。

そうやってスタッフや我々のような取材陣への気遣いを忘れず、しっかり周りを笑わせてくれる彼は間違いなく“お笑い芸人”だ。

「番組は僕だけで作っているわけではないので。他の芸人、スタッフさんがいて初めて面白い番組が作れる。TV番組の収録は、スタジオに入る“入り時間”っていうのがあって、収録の始まる時間まで大体1時間くらいあるんです。

入り時間が14時で、収録のスタートが15時なら、直前の14時50分に来ても、問題はないかもしれません。でもね、『蛍原さん、いつ来るんだろう』と、現場のスタッフを少しでも不安にさせたくない。偉大な先輩たちを見て、僕はああはなれないと諦めたからこそ、常に謙虚でいることを選んだんですよ」

30年以上続けている「ルーティン」

浮き沈みのある芸能界で芸歴36年。着実に生き抜いてきた大物芸人の一人と言える。お笑い芸人として早くに大きな挫折を味わい、“謙虚”さを学んだと話すが、日々の仕事ではどうだろうか。

バラエティ番組で「思うようにコメントができなかった」「スベってしまった」なんてうまくいかなかったとき、どんなメンタルリカバリーをしているのか?

「逆に教えてほしいですよ!(笑) もう20年以上やっている『アメトーーク!』でも、いまだに『もっといい返しができたかなぁ』と、反省することは多々あります。ただ『アメトーーク!』に関しては、毎週収録があるから多少気持ちを切り替えることができますね。

でも、収録がその日1回限りの特番のバラエティ番組なんかで、うまくいかなかったりすると『やってもうた…』と、けっこう引きずっちゃうんですよね。そういうときは、時間が経つのを待つしかないけど、僕の場合は趣味の草野球とか競馬、ゴルフに没頭して忘れてます。

30年間、ずっとその繰り返しかな」

逆に仕事がうまくいったときのご褒美を聞くと「それも好きなことをすること」と答えた。

「僕にとって趣味の時間は安定剤みたいなもの。1つじゃなくて、いくつか趣味があるのもよかったのかも。趣味は多ければ多いほどいいんじゃないかなと思いますよ。いろいろやっていれば、そのうち失敗したこともきっと時間が解決してくれるからね」

また蛍原には、仕事を続けていくうえで欠かせない“あるルーティン”があるという。

「ここ1年は毎朝、必ずバナナを食べてるんですよ! 昔からお腹がメッチャ弱いんですけどね(苦笑)。いろいろネットで調べたり聞いたりして、バナナがいいと知って。朝ご飯にパンを食べるときも米を食べるときも、必ず一緒にバナナを1本食べるようにしているんです。

そうして『今日調子がいいのはバナナのおかげ!』って、自分に暗示をかけています」

にこやかに笑う蛍原は「あ! そうだ!」と、何かを思い出したかのようにカバンから、「飴ちゃん! この飴ちゃんをずっと舐めてる!」と興奮気味にバナナ柄の小さなジッパーつきの袋を取り出した。

「こののど飴を30年以上舐めています! おそらく“喉を大切に”という想いから、舞台に上がる前に舐め出したのがキッカケ。常にスーパーでストック買いしてるんですよ。これが本当のルーティンですね!」

「僕はお笑いが大好き」

おごることなく謙虚に邁進し続けた芸人人生。

その彼の隣には30年以上、宮迫博之という相方の存在があった。コンビを解散し、宮迫が『アメトーーク!』に出演しなくなってからも、MCとして番組を守り続け、多くのお笑い芸人から面白いエピソードトークを引き出してきた。

そんな蛍原に「挑戦してみたいことや今後について」考えていることを聞いた。

「僕はお笑いが大好き。僕が決めることはできないけど、これからも20年30年、『アメトーーク!』をずっと続けていきたい。『アメトーーク!に出たい!』と言ってくれる後輩芸人がたくさんいるのがうれしいんです。

バラエティ番組が大好きだから、他にもいろんな番組で新しいことにも挑戦していきたいです。趣味である競馬やゴルフのお仕事も長く続けていけたらいいなと思っています」

そして、インタビュー中、もっとも目元を緩ませながら「下の子がまだ7歳なんです」と微笑んだ。

「リアルにあと13年はパパ頑張って稼がないと! お笑いの仕事をやらせていただける限り、ずっと続けていきたいです」

(後編はこちら) 

取材・文/吉沢さりぃ 撮影/佐藤靖彦 

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