
グラビアアイドルを引退して7年が経つ愛川ゆず季。2017年に結婚し、2018年に第一子を出産。
初めて明かした不妊治療の経験
「実をいうと、2人目は不妊だったんです。公にはしていませんが、流産してしまったこともあり、40歳も超えていたので何があるかわからないという不安もあったので公表はしていませんでした」
第一子のときはすぐに妊娠したそうだが、2人目はなかなか授かることができず「30代は妊活が長かったなぁ」と振り返る。
「妊活をしているといつどうなるかわからないから、仕事がしにくいっていうのはありました。長期のお仕事や得意な身体を張ったお仕事をどこまでしていいのかわからないというつらさもありました。そのおかげでライブ配信(TikTokライブ)に出会えたというのはよかったですが」
第二子について愛川は「心穏やかに出産に臨みたかった」と話す。
「第一子が自閉スペクトラム症(ASD)であることを公表したときに、ほとんどの方からは好意的な反応だったんですが、一部…全体の5%くらいは『もう産まないでくださいね』なんていうDMが来たこともあったので。今回はそういう言葉を見て落ち込みたくなかったんです。だから無事出産するまで隠していました」
自閉症スペクトラム症とは対人関係が苦手だったり、強いこだわりを持つ発達障害の一つ。
愛川の第一子は今年小学校に入学したばかりだが、最初に違和感を感じたのは3歳になる前だった。言葉を覚えるのが遅く「バイバイ」がおかしかったと話す。
「普通、バイバイって手のひらを相手に向けてするのに、息子は手のひらを自分に向けてバイバイしていたんです。あれ? なんでかな? って気になって。思えば言葉を話せるようになるのも遅くて、ずっと『ママ』って言ってくれなくて、寂しかったのをよく覚えています」
必死に夜な夜なネット検索をすると、ネガティブな情報しか出てこなかった。
「逆手バイバイ以外にも、うんちをしただけで泣いてしまうほど感覚が過敏だったり、夜も全然寝てくれなかったり。話せていた言葉が急に出なくなってしまったり。検索すればするほど、不安になりました。当時はちょうどコロナ禍で、対面で医師に相談するまで長い時間がかかりました」
告白したことを後悔していない
医師に「自閉症である」と診断される少し前から、愛川はパニック障害に陥ってしまった。当時の心境を聞くと「本当に必死で覚えていない」という。
「当時は相当落ち込みました。なんで? まさかうちの子が…って。周りにも親族にも自閉症の子がいないから対処法もわからないし、誰にも相談できなかった。自閉症を調べれば調べるほど怖くなりました。グレーゾーンから重症まであって、息子がどの程度なのかもわからなくて、頭の中は不安だらけでした」
しかし、ネットの情報もネガティブなものばかりではなかった。
「週2回、療育センターに一緒に行くのはすごく大変でした。車でしかいけない距離だったのですが、私はペーパードライバーだったので、運転するのも大変だった。でも、本当に行ってよかったです。
先生も一緒に通っているお友達も親御さんも親切な人ばかりでした。卒業するときにはなんていい場所だったんだろう、こんな場所で幼少期を過ごせて私たち親子は幸せだったな、一緒に成長できたな、としみじみ思えました」
また息子が自閉症であることをカミングアウトしたことで「私も悩んでいました」「愛川さんの告白が励みになりました」と声をかけられることや、DMをもらうことが多かったそうだ。彼女は告白したことを後悔していないと話す。
「今は不思議とそんなに重く考えていないんです。息子は苦手なことも多いけど、得意なこともたくさんある。受け入れる前はしんどかったけど、今は個性の一つとして捉えてます。ママたちみんなで頑張っていこうよ!って悩んでいるママたちに伝えたいです」
「子どもたちの成長が心から楽しみ」
愛川は涙ぐみながら「第二子を出産してからは、上の子が頑張ってくれているんですよね」と長男の成長をこう話してくれた。
「退院して帰ってきたときに、すごく寂しかったみたいで涙を瞳に溜めながら『ママは赤ちゃんがいるから寂しくないんでしょ』と言ったんです。
自閉症の子はコミュケーションを取るのが苦手なので、彼が弟を見て『どうするのかなぁ』って思っていたらヤキモチは焼くけど『どっか行けー!』とかもないし、悪く言ったりもしない。優しい子だな、誇らしいな、すっごい頑張ってくれているんだなって…」
「子どもたちの成長が心から楽しみ」だと優しく微笑む愛川に、これからの目標を聞いた。
「自分の中で“2人産みたいな”という希望があって、きょうだいがほしかったので、7年越しの夢が叶いました。1番は子どもを大切に! 子どもを立派に育てなきゃ! っていう責任感があります。でもその中で、自分の仕事も大切にしていきたい。
私は頑張ることが得意で、性格的にもコツコツ努力するのが性に合っているんです。45歳までは身体もきっと動くはずだから(笑)。子育てと仕事を両方頑張ることでメンタルが安定する。これからも常に目標を持って色々なことにチャレンジしていきたいです」
そう語る愛川の表情は、グラドル時代よりも、プロレスラー時代よりも強さと美しさを兼ね備えていた。
取材・文/吉沢さりぃ