
東京都立川市の市立第三小学校(田村聡校長、児童513人)で5月8日午前11時前、校舎内に侵入してきた男2人が教室に乱入したり職員室の窓ガラスを割ったりなど暴れ、取り押さえようとした男性教職員5人が軽いけがを負う事件があった。男は20代と40代で手に酒ビンなどを持っており、110番通報で駆けつけた警視庁立川署員が暴行の現行犯で逮捕した。
3時限目の途中、全校避難訓練だったはずが…
現場となった小学校はJR南武線西国立駅の西約400メートルの住宅街に位置し、戦前の1937年に東京府北多摩郡立川第二尋常小学校として開校した歴史と伝統のある小学校。授業中を突如襲った蛮行に校内は騒然とし、取材の報道ヘリコプターが上空を何機も旋回するなど物々しい雰囲気に包まれた。
事件を受けて立川市教育委員会(飯田芳男教育長)は記者会見し、状況説明の文書を配布した。それによると同日午前9時15分ごろから児童間のトラブルについて、「保護者と思しき人物」が担任と面談をし、いったん学校を離れた後に男2人を引き連れて舞い戻ってきたという。
男2人は2年1組の教室に侵入したが、児童を避難させた担任教諭に同僚と校長の計4人が加わって誘導し、職員室の隣の会議室で取り押さえ、警察官に引き渡した。
集英社オンラインは学校近くで保護者立ち合いのもと、児童たちから貴重な証言を得た。6年生の男児は恐怖の時間をこう振り返った。
「今日の3時限目の途中がちょうど全校避難訓練だったんですが、1年生の担任の先生が6年生の教室まで『11時前後に不審者が来ました』と報告しにきました。最初はこれが訓練なのかなと思って、教室のドアの鍵をかけて教室内で待機していたら『パリン』というガラスの割れる音が聞こえました。
11時25分に校内放送でも不審者が来たという連絡があり、訓練じゃないんだとわかりました。周りのみんなは『死んじゃうのかな』とか混乱して話していて、怖かったです。
先生が「心配ない。大丈夫だから」と言ってくれて
6年生の女児はこう話した。
「3時限目は算数の授業中で、今日は11時から火事の避難訓練をやる予定だったので、そろそろかなって思っていたんだけど、その放送がなくて11時10分くらいに『不審者がいる』って先生が教えてくれて、それで先生が教室のドアを全部閉めて鍵をかけて、みんなで教室の真ん中で固まって過ごしていました。
泣いてる子とかもいて、私も本当に怖かったです。不審者の姿も見なかったし声も聞かなかったけど、廊下から足音がしていたのは覚えています。教室の中では先生が『心配ない。大丈夫だから』と言ってくれて、たまに教室の外の様子を見に行ったりしていました。私たちの教室ではやらなかったけど、ドアの前に机を置いたりして不審者が中に入って来れないようにしてた教室もあったみたいです。
その後、不審者の人は逮捕されたと放送されて、パパとママが迎えにくるのを待っていました。迎えに来てくれた人から帰りました。(パパとママに)会えたときは、安心しました。今まで学校に不審者の人とか入ってきたというのはなかったから本当に怖かったです」(6年生・女児)
保護者たちも心配そうな表情でこう語った。
「私も報道以上のことはわからないのですが、とにかく子どもにケガがなかったのでホッとしています。私は学校から迎えにくるようにというメールが来て、それで来ただけで詳しいことは聞いていません。ただ、これまで特定の保護者と学校がトラブルになっているようなことは聞いたことがありませんね」(1年生児童の母親)
「ウチはメールの登録がされてなくて、電話で連絡を受けました。その前にニュースを見ていたので、事件だというのはすぐにわかり、飛んで迎えに来たという感じです。家に置いてあった娘の携帯のLINEの通知がすごい来てて、心配なのもあって確認したのですが、娘のグループLINEを確認すると、そこには男の人の怒鳴り声が聞こえたなどと書かれていました。
娘にケガもありませんでしたし、ホッとしています。今のところは説明会の予定や今後のことについて説明は受けていません。校内で何かトラブルがあるとかそういうことは今までなかったのですが……。怖いですよね……」(6年生と5年生児童の母親)
酒瓶は緑色の焼酎のビンで…
同市教委の指導課長は会見でこう述べた。
「保護者と思しき女性と2年1組の担任が本日9時15分より職員室の隣の会議室で面談をしておりました。『思しき』というのは担任からまだ確認をとれていない状況だからです。面談後に女性が男性2人を連れて学校に来たようですが、校内に侵入した際は(男性2人は)女性と一緒にいませんでした。
1人は酒瓶らしき瓶を持っていたので酔っていたと思われますが、そこは推測です。2人が2年1組に侵入してきたため担任は子どもたちを避難させ、応対しました。体育館に向かって逃げる子どもたちを見た副校長や教職員が2年1組にかけつけ、担任から男性を引き離しました。
担任は職員室に移動し、中から施錠しました。男性2人は廊下にいる状態です。その間に警察に通報しました。その後、職員室のドアの窓ガラスを男性が割って職員室の中に入ってきました。男性2人は校長や教職員らの呼びかけに応じて会議室に入ったため、そこで男性を取り押さえました。説明会や今後のことについては校長も今まだ病院に行っておりますし、戻ってきてから決めていくことになります」
社会部記者が補足する。
「酒瓶は角張った緑色の焼酎ビンだったといいます。事件の発端は同性の子ども同士のトラブルだと母親は主張。いっぽう同級生の保護者たちは、認識の違いはあるかもしれないが『イジメなど子ども同士のトラブルがあったという話は聞いたことがなかった』とみな話している」
人騒がせではすまない白昼の学舎での愚行。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班