「40歳下の20代とワンナイト」「自分にはまだ需要がある」中高年のマッチングアプリ利用者増、いっぽうで…性病感染や音信不通のトラブルも。“シニア恋愛市場”のリアルとは
「40歳下の20代とワンナイト」「自分にはまだ需要がある」中高年のマッチングアプリ利用者増、いっぽうで…性病感染や音信不通のトラブルも。“シニア恋愛市場”のリアルとは

結婚20年以上の夫婦による「熟年離婚」の割合が過去最多を記録したのが2022年のことだった(厚生労働省「2023年 人口動態統計月報年計《確定数》」)。そんななか、IT業界の2023年度のリサーチによれば40代から60代のマッチングアプリ利用経験者が年々増えていることがわかった。

実際にアプリで“お相手を見つけた女性”と“模索中の女性”に話を聞いた。 

52歳で離婚を決意。一番の原因はセックスレス

2023年にIT業界の市場調査を行うMMD研究所が行なったリサーチによれば、40代のマッチングアプリ利用経験者は33.4%、50代は19.3%、60代は13.1%にのぼるという。

マッチングアプリに詳しいライターの倉田達也氏によれば「若者の間でのアプリの出会いは定番化しているのに対し、中高年向けマッチングアプリは種類や利用者数に伸びしろが見られる」のだそうだ。

「もともと20、30代の男女も多く利用するマッチングアプリを中高年層も利用していましたが、〈30、40、50代からの恋活・婚活〉と銘打ったアプリの登場以降、50、60代男女のためのアプリも増えました。熟年離婚後もトキメキたいとか、人生最後の伴侶探しをしたいなど目的はさまざまなようですが、かなり盛況です」(倉田達也氏)

そんな熟年の恋活や婚活のリアルを調査するため、まず話を聞いたのはアプリ歴約2年で、8人ほどのお付き合いを経て最高のお相手を見つけたという、都内在住の会社員・増田さん(仮名、57歳)だ。

「離婚理由は夫の転職や生活のすれ違いなど色々ありましたが、一番はセックスレスでした。私にとって性的欲求は生活の質を保つ上で欠かせないほど大事な行為でしたが、10年ほど前からそれがなくなり、5年ほど前に話し合いましたが折り合いがつかず、段階を経て昨年離婚しました。

子供が成人するまでなど離婚届を出すまでに数ヶ月間ありましたが、その間は夫公認でマッチングアプリを利用しました。現在、お付き合いしている人は5歳年上ですが、週1は必ずデートをするし性的な相性もぴったりです」

この男性に出会うまではさまざまな“失敗”もしたという。

「待ち合わせ場所に現れない人もいたし、1回お食事した後にその後も関係が続くかと思いきや、音信不通になった方もいました。

一番大きな失敗は、仕事やさまざまなことでストレスがピークになり、ヤケになってワンナイト的なことをした後にクラミジアに感染したことです。

もちろん相手男性にうつされましたが、アプリ上でしか連絡先を知らず、ちゃんとした連絡をとりようがありませんでした。あれは自分の戒めにもなりました」

現在のお相手は昨年末に出会い、程よい距離感で交際中。「GW連休中も11日間のうち5日間はデートした」そうだが、悩みもあるという。

「ゴルフや登山に行ったり、毎日楽しいです。でも、私はできれば内縁関係になり、ゆくゆくは共に暮らせたらと思っていたけど、彼はそうじゃないみたい。

うちには子供がまだいるからお招きするのは、はばかられるとしても、彼はひとり暮らし。一度も“家においでよ”とは言われない。なんとなく線引きされている気がして踏み込めない」

決定的だったのは今年1月に受けた人間ドックで見つかった心疾患で、医師より経過観察との診断を受けた時のことだ。

「彼からは“君の決断を尊重するよ”と言われました。本当はもう少しだけ私の身を心配した上で今後の付き合いや暮らしのあり方など、一歩進んだ話がしたかった。でもその話が出なかったということは、互いに健康で迷惑をかけない間の付き合いで留めようと言われた気がして、寂しさを感じました」

ラストの恋のお相手を見つけたとしても、熟年離婚後の関係構築の方向性が同じとは限らない。

「寂しさを感じる」と言いながらも「今日もこの取材の後、その彼とカフェデートします」と軽やかな足取りで、増田さんは彼の元へ向かっていった。

マッチングアプリで「自分にも需要があるんだ」と感じた69歳

もうひとり話を聞いた女性は50代前半で早々に離婚後、女性向け風俗(通称、女風)の利用を経てアプリでお相手探しを始めた都内在住でフリーのエンジニアの相沢さん(仮名、69歳)だ。

「離婚して5年ほどで、ふと自分に性的な欲求があることに気づいて。当時、女風ってキーワードをよく見るようになったんです。それで思い切って利用し、1年間ほど利用してました(笑)。でも、やっぱりお金を介さない交際相手を見つけたいと思い、4年ほど前にアプリを始めました」

アプリを始めてまず驚いたのは「お相手探しは難航すると思っていたのに、すぐマッチするし(メッセージを送り合う仲になること)、すぐ対面で会えること」だそうだ。これには「自分にも需要があるんだ」と感じ、嬉しかったという。

「最初は同年代の方とお会いしましたが、そのうち40歳も年下の20代の子と会ったこともあります。それは会ってその日にするっていう、いわゆるヤリモクだったこともありますが、今となってはそれもいい思い出(笑)。でも肝心な、ちゃんとお互いに長く続く関係を望む人がいない…」

なんでも現在、2年ほど付き合う男性とは昨年から肉体関係がなくなったのだそう。

「彼から『君とは“恋人関係”というにはちょっと違う。でも食事は一緒にしたい』とハッキリ言われました。彼はお洋服にこだわりのあるオシャレな人で話も合ったから、とても残念だったのですけど…」

相沢さんは、アプリによる最大のメリットは自分が求める恋人像や自分が欲しているものが何かがより見えてきたことだ、という。

「私はお洋服やインテリアにも何かしらこだわりのある人と美味しい食事を楽しみつつ、セックスも相性がいい人を欲しているんだと。最近は探すのもなんだか疲れちゃって、よくいう“アプリ疲れ”というやつなのかも。でもいつかは見つけたいなとは思います」

アプリは場所や時間を選ばずお相手探しができ、自分とお相手の都合を擦り合わせさえすればすぐに出会える便利なツールだ。それゆえに、前出の増田さんのように性感染症のリスクもあるし、不同意性交罪にも発展しかねないトラブルもあとを絶たない。

昨年、集英社オンラインでも取り上げた、名古屋を中心に発生した50代男性によるアプリを介した大掛かりな結婚詐欺事件もそのひとつだ。

名前や職業を偽り、アプリで知り合った女性に近づき、結婚をほのめかした上でお金を騙しとるというこの事件。被害女性の中には、1億円以上をだまし取られた人もいるという。

いくつになっても、ときめく心や性的欲求を満たすことは人生には欠かせないが、くれぐれも慎重な利用を心がけたい。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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