
7月20日に投開票が行われると目されている参院選。今回も台風の目になると目される国民民主党だが、比例代表として立てた候補者について批判が相次いでおり、政党支持率が減少した。
国民民主、支持率急落の原因は参院選の候補者
朝日新聞社が17日から18日にかけて行なった世論調査では、国民民主党の政党支持率が8%となり、前回(4月)の調査から4%も下落した。これには党首の玉木雄一郎代表も危機感を募らせている。
玉木代表は19日の囲み取材で記者団の質問に対して、参院選比例区の候補予定者について批判の声が上がっていると認識していることを明らかにし、「批判は受け止めている。(候補擁立の)意義や理由をよりきちんと説明していくことが必要」と述べた。
支持率が落ちている原因は、参院選の候補者の人選だ。国民民主党は14日、参院選比例代表の公認候補として、足立康史元衆院議員(59)、山尾(菅野)志桜里元衆院議員(50)、須藤元気元参院議員(47)、薬師寺道代元参院議員(61)の擁立を正式決定した。
なかでも山尾元衆院議員には批判が止むことがない。大手紙の政治部記者が説明する。
「2017年に週刊文春が山尾氏と当時既婚者だった倉持麟太郎弁護士との不倫を報じた。その後、倉持弁護士の妻が自死。
山尾氏は2016年、民進党時代に待機児童問題をめぐって国会で匿名ブログ「保育園落ちた、日本死ね」を取り上げたことで、注目を浴びた。
その後も当時の安倍政権に対して待機児童問題について厳しく追及し、ママ議員としても人気を獲得。「保育園落ちた、日本死ね」は、ユーキャン新語・流行語大賞のトップテンにも選ばれた。
山尾氏について、当時のことを知る立憲民主党の関係者はこう話す。
「立憲民主党内部でもモノをハキハキ言う性格。また当時の民進党代表である前原誠司さんら上の人にも好かれており、当時民進党の代表選挙で幹事長に山尾さんを推薦するまで調整が進められていた」
だが、その期待はすぐに裏切られることに……。
「週刊文春の報道を受けて、前原さんらは幹事長案をすぐ白紙に戻した。また民進党内でも蓮舫さんが不倫騒動をとにかく嫌いなことから、山尾氏を徹底的に批判。党内の居場所もなくなり、文春報道が出た翌日に離党届を党に提出したのです。
提出時には黒のスーツに身を包み会見をしたものの、不倫報道は否定し、記者からの質問は一切受け付けなかった。
その直後に行なわれた2017年の衆院選挙では愛知7区から無所属で出馬。民進党は当時、山尾氏に推薦を出さなかったものの、同区では対抗馬を立てなかった。その結果、自民党の鈴木淳司氏を834票差で破り、当選した。
同年に山尾氏は、民進党から分裂した立憲民主党に入党。その3年後の2020年、国民民主党へくら替えしたのである。
国民民主へ入党も...幹部の古川元久氏「党のイメージ下がる可能性ある」
前出の立憲民主党関係者が当時を振り返る。
「山尾氏が国民民主党へ移るとなったとき、当時の立憲民主党代表だった枝野(幸男)さんがとにかく大激怒。立憲民主党に入党したときも、山尾氏を見捨てないどころか党を背負っていくキーパーソンとしても期待をしていたと聞く。ここまで面倒を見たのにないがしろにされたため、堪忍袋の緒が切れてしまった」
国民民主党内部も山尾氏に対して歓迎ムードとはいかなかったようだ。玉木雄一郎氏の元秘書が明かす。
「山尾さんが国民に来ることに猛反対していたのは、国民民主党幹部の古川元久衆院議員です。古川さんは山尾さんと同じ愛知県から出ている。
そもそも玉木氏と山尾氏の仲はどこで深まったのだろうか。ある国民民主党の関係者はこう続ける。
「前原さんが民進党の代表だったとき、玉木さんと山尾さんは広報の仕事をともにしていた。そこで仲が深まったのでは。2人で自虐的な内容のポスターを作成していたのが記憶にある。党内で『それは自虐すぎる』と少し批判をもらい、ボツになっていた。また、2人ともお酒が好きでかなり飲むことから、仲がいいペアとして党内で認知されていた」
その縁もあって、山尾氏は国民民主党に20年6月に入党届を出し、7月に承認された。
国民民主党は立憲民主党への合流の有無などでメンバーらが入れ替わり、20年9月に「新・国民民主党」として活動することになる。代表は玉木氏が続投し、山尾氏は玉木氏についていくことを選択した。
国民民主党の関係者が続ける。
「新体制発足から次の大きな選挙である21年10月の衆院選で、山尾氏が東京から出たいと玉木氏に申し出ました。
いったい、なぜか。それは党内の調整が追いつかなかったからだという。前出の元秘書が語る。
「今もですが、玉木さんは新体制後、とにかく女性候補を立てたがっている。今もです。衆院選の全候補者に占める女性候補の割合は2割前後をここ数年は行き来しており、危機感を覚えていた面もある。
また、女性候補を立てることで、人気の獲得ができるとも考えている様子。周りに『いい女性候補者はいないか』などと漏らしており、山尾氏が国民に加入した理由も肌感でなんとなくわかりました。21年の衆院選にも出てもらいたいと考えていたようですが、反対派も一定数いて党内の調整がつかなかったようです」
そしてようやく調整がある程度ついたとして、今回の参院選の舞台が用意されたという。ただ、玉木氏の予想以上に逆風が強かった。
「玉木さんは山尾さんに期待していますが、世間の目は思った以上に厳しいものでした。交渉力など、山尾さんの能力の高さは一緒に仕事をしていればわかりますが、有権者は知らないし伝わっていない。
今後、山尾さんを候補に立てた理由などの具体的な説明をする必要があるのではないでしょうか。千葉県連のパワハラ含め、今のところ国民民主党ではあらゆる面での説明不足が目立ちます」
玉木代表が語っていたように、“きちんと説明”する日は果たして来るのだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班