
「コメを買ったことがない」「売るほどある」などの問題発言をめぐって、江藤拓農林水産相(64)は21日、石破首相に辞表を提出した。発言をめぐっては「感覚がかけ離れている」と批判が相次いでいる。
「江藤は急に県連会長をやりたいと申し出てきたんやわ」
「宮崎県連はいま、てんやわんやですよ。びっくりってか、痛いですよね。参院選含めて、非常に向かい風です。逆風が強まったなということ。今後、どうしようかって感じです」
匿名を条件に取材に応じた自民党会派の宮崎県議はいま、不安を募らせている。
江藤拓氏は18日、佐賀県で開かれた自民党佐賀県連の政治資金パーティーで「私はコメを買ったことがない」と発言。「支援者の方々がたくさんコメを下さるので。売るほどある、家の食品庫には」と続けた。
コメ価格の高止まりが続くなか、江藤氏の発言に「対策を担当する農水相としての自覚がない」などの批判が相次いだ。その後、江藤氏は21日に辞表を提出し、石破首相は同日に受理した。
前出の宮崎県議が、自民党宮崎県連の現場の様子を打ち明ける。
「江藤さんは農水相を辞める一方で、これまで務めていた県連会長も辞めることになります。
支援者の皆様に示しがつかないし、24日までにどういった体制で県連を今後運営していくのかを決めなければならない。ちょっとしんどいなというか。今後どうなるのかなっていう不安を抱えつつ、バタバタしています」
あるベテランの宮崎県議は「あれほど国会議員に県連会長をやらせるなと言ったのに」と怒りをあらわにする。
「江藤が去年の1月頃、急に『県連会長をやりたい』と申し出てきたんやわ。反対派ももちろんいて、党内で選挙になったけどもな。江藤の勝利で終わった。党員投票では衆院議員には絶対負ける。持っている票数が違うから。
もともとな、県連会長は県議の人らで選出しようとなっていた。国会議員にやらせると、県連の役員会を国会議員の予定に合わせたりするから振り回されてしまう。
「宮崎弁的な言い方」の弁明に県議ら「そんなことはない」
江藤氏の性格について、前出の県議は「癖がすごくあるとか、そういう感じの印象を私は持っていません。ただ、物事をはっきり言う印象がある。時々、強い言葉をおっしゃることも。問題の発言はその流れで出たものではないでしょうか」と説明する。
一方で、20日に開かれた参院農水委員会では江藤氏がこんな弁明をしている。
「言い訳はしたくないんですが、(地元の)宮崎はたくさん頂くと『売るほどある』とよく言うんですよ。ですから宮崎弁的な言い方でもあったんですけれども」
これに対し県議は、「正直に言うとそんな方言はないですね。宮崎県だから特別に使われている言葉だという認識はありません。一般的な用語だと思います。たくさんあるという言葉の比喩として話したのでは」と説明。
ベテラン県議も「そんな宮崎弁はない。言い訳だ。
話を戻そう。18日の政治資金パーティーで江藤氏は、政府備蓄米を玄米のまま流通させることについて、こう話していた。
「わざとじゃないんだろうけど、いろんなものが交じっている。うちの嫁はコメを広げて、こう黒いやつを、石とか入ってる。そういう(のを取り除く)家庭内精米をしたうえで、コイン精米機に持っていく」
ベテラン県議はこの姿勢に怒りを覚えたと言う。
「俺も農家をやっているけどな、上からバカにした発言だよ。玄米にするときに(異物は)取り除いている。江藤にコメをあげた人もかわいそうだわ。正直、田舎だからコメをもらうことなんてある。でも善意なんだよ? なんでそんな言われ方しないといけないんだ。
庶民感覚とかけ離れているね。俺らいま田植えの時期だよ。そういう苦労がわからんから失言をする。昔から江藤を見てきたけど、結局、お父さんで元総務庁長官の隆美さんを超えることはできんかった」
「別になにも人気取りをしなくても適任がいるのでは」
ベテラン県議はそのうえで、江藤氏の奥さんが「かわいそう」だとも指摘する。
「同じ自民党だしあまり悪くは言いたくないけど、江藤は地元をあまり回らんのよ。それを補うかのように奥さんが回っている。地元での奥さんの評判はいい。奥さんがおらんかったら、ここまでこれんかったと思う」
前出の県議は江藤氏について「農水大臣として長年活動されてきて、知識も豊富。2回目の就任ということもあり地元では期待されていました。期待は大きかった。だが、今回の発言はそれだけ大きいもの。辞任はやむを得ない結果なので、重く受け止めてほしい」と語った。
石破首相は21日、後任に小泉進次郎・元環境相を起用することを明らかにした。ただ、前出の県議は懐疑的な姿勢だ。
「次の農水相が進次郎さんと聞くが、進次郎さんは江藤さんほど農水の経験はない。進次郎さんが選ばれることに対して、宮崎県連では驚いた人も少なくない。農水の場合、実務として課題が明確なので、もっと適任がいるという意味です。次の参院選で票をとりたいのかもしれないが、彼にはまだ早い。別になにも人気取りをしなくても、もっと適任がいるのではないでしょうか」
火中の栗を拾った形の進次郎氏は、その手腕が試される。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班