サービス残業代は年間9000億、消防士や警察官には支給される休日出勤手当てもなし! まさに定額働かせ放題のブラック職業、教員の待遇に未来はあるのか
サービス残業代は年間9000億、消防士や警察官には支給される休日出勤手当てもなし! まさに定額働かせ放題のブラック職業、教員の待遇に未来はあるのか

どれだけ残業をしようとも、働いた分の残業代が教員に支払われることはない。YouTuberで教育評論家の静岡の元教師すぎやま氏曰く、月100時間の残業をする教員の時給は約1500円程度になってしまうという。

教員の成り手不足に拍車をかけているともいわれている、あまりにも苛酷な待遇の実態とは。

 

書籍『教師の本音』より一部を抜粋・再構成し解説する。定額働かせ放題だと揶揄される悲惨な現場の真実とは。

時給換算するとビックリするくらい低い教師の給料

ここで、教員のフトコロ事情についてもお話ししましょう。

とりあえず食いっぱぐれる心配がなくて、安定していて、比較的高給……教員に対してそのようなイメージを持っている人は、けっこう多いのではないでしょうか?

総務省の「令和5年4月1日地方公務員給与実態調査結果」によれば、教員の平均月収(諸手当も含む)は、小・中学校で約41万円、高校で約43万円とされています。

平均的なサラリーマンに比べてもけっこう高めです。教員は夏冬の年2回、2ヶ月分のボーナスが支給されます。そのため、実質16ヶ月分の給料をもらっていることになるのです。

もちろんこれはあくまでも「額面」の話。天引きがけっこう多いので、実際の手取りはもっとずっと少なくなります。

私自身は、20代前半の頃が手取りで月22万~23万円、30代でも月27万円ぐらいだったと記憶しています。

しかし、これを時給換算すると、実は教師の給与はとても低いことがわかります。

たとえば、1ヵ月の勤務時間160時間に、残業100時間とすると、月間260時間働いていることになります。

すると、月給が仮に40万円だとして、260で割ると、時給およそ1538円となります。

40万円÷(月160時間勤務+残業100時間)=1538.46円

これじゃアルバイトより少し高いくらいです。

過酷で、拘束時間が長く、資格が必要で、しかも時給は最低水準という……。これでは教員志望者が減少してしまうのも当然です。

ちなみに同じ公務員でも、消防士や警察官には夜勤手当や休日出勤手当が必ず出ます。だから、同年代の警察官や消防士に給料を訊いたら、当時の私の1.5倍ぐらいもらっていて驚いたことがありました。

もちろんそれぞれの仕事特有の大変さはあると思います。でも彼らは、きちんと週休2日制が守られています。教員は彼らよりも低い給料で、週休0日制なんです……。

残業代9000億円未払いの『定額働かせ放題』

「教員は定額働かせ放題」と揶揄されるように、いくら残業しても残業代が出ません。

なぜか?

それは「給特法」、正式には「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」という長い名前の法律があるからです。

給特法の第三条の2に「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」とあるのです。

なぜ残業代を出さないのか?というと、教育という大切な仕事には終わりがなく、ここまでが仕事! と割り切ることができないから、ということです。



たとえば先生が授業のプリントを作るために残業したとします。でも、そのプリントがなくても授業はできますよね?でもその先生は子どもたちのために、自ら残業してプリントを作っているわけです。

他にもたとえば先生が読書したり、ピアノの練習をしたりするのも、最終的には子どもたちに還元できるかもしれないし、できないかもしれない。やってもいいけど、やらなくてもいい。

そういう割り切れない仕事が多いから、教師に残業代は出さない。その代わりに、やってもやらなくても給料に4%を一律に上乗せしますよ、という風に給特法で定められているのです。

これは『教職調整額』と言って、民間企業の一部で採用されている固定残業代・みなし残業代に近いものです。

教員の残業代は年間9000億円規模

しかし、この手当に納得している教員はいないでしょう。給料の4%上乗せと言っても、たとえば月収30万円だとすると、100時間残業したとしても、たったの1・2万円しかもらえないのです。

民間企業で月に100時間残業したら、残業代は200万円にも上るのではないでしょうか?

教員全体で計算してみるとこの金額はさらに膨れ上がります。文部科学省は、教員の勤務実態に応じた給与支払いを行う場合、年間9000億円規模のコストが発生する可能性があると試算しています。これでは超絶ブラックと言われても仕方ありません。

ところで教師の給料は、基本的には年功序列です。

つまり、仕事をがんばろうが、サボろうが、だいたい同じような割合で給料が上がっていくのです。

仕事ができない(やる気がない)人からしたら、安定して良い職業なのかもしれませんが、がんばっている教師からしたら理不尽でしかありません。

がんばっている若手教師よりも、サボっている年配教師の方が、給料が高い……なんてことは当たり前にありました。

私も朝から晩までめちゃくちゃ働いて残業100時間状態だった時に、あまり仕事をしない年配教員の給料を聞いて目が飛び出るほど驚いたことがあります。

その人は定年間近で、授業数も少なく、部活も持っておらず、いつも職員室で新聞を読んだり、雑談したりしているような暇な教員だったのですが、その当時の私の倍ぐらいの給料をもらっていたのです。

こんな不公平なことがあるのかと歯ぎしりするような思いでした。

写真はすべてイメージです 写真/Shutterstock

教師の本音 生徒には言えない先生の裏側

静岡の元教師すぎやま
サービス残業代は年間9000億、消防士や警察官には支給される休日出勤手当てもなし! まさに定額働かせ放題のブラック職業、教員の待遇に未来はあるのか
教師の本音 生徒には言えない先生の裏側
2025/3/71,045円(税込)272ページISBN: 978-4815631109

本音をすべて書きました

10年以上中学校教諭を勤めた私が、教師の裏側を明かします。
「先生に相談しても迷惑じゃない?」「不登校で将来が心配」といった保護者が抱える悩みから、「『成績を上げろ』と5時間監禁される」「実は熱血教師が学校をダメにしている」といった気になる現場の実態まで。
保護者、教師、そしてすべての人が子どもの未来のために何ができるか、考えるきっかけになることを願って、書きました。

SNSの総フォロワー数70万人超!
日本一バズっている元教師が包み隠さず話します!

第1章 保護者への本音
第2章 学校現場の本音
第3章 働き方の本音
第4章 生徒が気になる先生の本音
第5章 教師への本音
第6章 持続可能な学校にするための5つの提言

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