書類送検に「予定通り」とNHK党・立花氏、今度は別の県議が「名誉傷つけられた」と1100万円の賠償を求め提訴、知事選の言動がついに司法の場へ
書類送検に「予定通り」とNHK党・立花氏、今度は別の県議が「名誉傷つけられた」と1100万円の賠償を求め提訴、知事選の言動がついに司法の場へ

斎藤元彦兵庫県知事が再選された昨年秋の出直し知事選で、斎藤氏を“2馬力選挙”と呼ばれる手法で支援したNHK党の立花孝志党首について、兵庫県警は6月4日、選挙中の言動による兵庫県議への名誉棄損と脅迫、業務妨害の疑いで神戸地検に書類送検した。さらに別の県議は5日、立花氏の街頭演説で名誉を傷つけられたとして1100万円の賠償支払いを求め提訴した。

誹謗中傷が飛び交った知事選で、立花氏の言動に問題がなかったのかどうかがついに法廷で問われることになる。 

「出てこい」「あんまり脅しても自死しても困りますから」

強力なインフルエンサーでもある立花氏は昨秋、当選は目指さず「斎藤さんを応援する」と宣言しながら兵庫県知事選に出馬した。

実際に選挙が始まると演説で「斎藤知事の疑惑は嘘で、知事はハメられた」との主張を行ない、疑惑告発者や調査に関わった県議会関係者らを非難、その演説動画をSNSで発信した。

「矛先を向けられたのは、疑惑を告発し昨年7月に自死したとみられている元西播磨県民局長・Aさん(享年60)や、疑惑の真偽を調べた県議会調査特別委員会(百条委)委員長だった奥谷謙一県議、同委メンバーだった竹内英明元県議、丸尾牧県議らです。

このうち竹内元県議は、SNSとリアルの双方で沸き起こった誹謗中傷から家族を守りたいと県議を辞職した後、今年1月に亡くなりました。自死とみられます」(地元記者)

関係者によると、今回県警が書類送検した容疑はいずれも奥谷県議が出した告訴や被害届に絡むものだ。

「ひとつは知事選告示日の昨年10月31日から11月1日に、Aさんの死亡の原因を奥谷県議が隠蔽したとの内容をXにポストした名誉毀損です。

また立花氏は、11月3日には神戸市内の奥谷県議の自宅兼事務所に支持者を引き連れて訪れ、玄関のインターフォンを鳴らしたり、玄関前で『出てこい』『あんまり脅しても自死しても困りますからこのへんでやめておきます』などと発言したりし、この場面もSNSで拡散されました。この時の立花氏の行動についても脅迫と業務妨害容疑で書類送検されました」(地元記者)

書類送検を受けた神戸地検は、県警の捜査内容を検討し、必要があれば補充捜査をして立花氏を起訴するかどうかを決めるため、立花氏が刑事裁判にかけられると決まったわけではない。県警は送検する際、刑事処分が相当と考えるかどうかを伝える『処分意見』を添えるが、これを県警は明らかにしていない。

ただ県議会関係者は「県警は書類送検直後に、県警記者クラブの記者団に非公開の形で送検の事実を伝え、内容も説明しています。『起訴する必要はない』と考えているのならこうした記者団への説明をするでしょうか」とも話す。

斎藤知事は「コメントできない」

立花氏は奥谷氏の告訴の後、県警から2回任意の事情聴取を受けている。書類送検を受けた後、6月4日午後にはXに「★予定通りです! 無罪を確信していますので、ご安心下さい」とポスト。

YouTubeでも「名誉棄損(容疑)については真実、あるいは真実相当性があるということで無罪。脅迫や業務妨害についても、選挙中に奥谷君の事務所の前に行ったらたまたま自宅だったと。45分間というそんなに長い時間でもないですし、通常の人が恐怖を感じるような演説内容ではなかったと思います。これは当然無罪を主張する」と話した。

その奥谷県議は書類送検を受け「引き続き推移を見守りたい」と地元メディアにコメントした。

立花氏は知事選後、問題視された言動を繰り返した選挙運動を「俺が(発信を)出すことで斎藤さんが勝った」「俺が言ってへんかったらさすがにこうはならんやろ」と振り返り、自分の応援があったから斎藤知事が当選したとアピールしている。

その応援を受けた斎藤知事は、書類送検が報じられて約3時間が経過した4日午後、定例の記者会見で受け止めを聞かれると「状況を承知していない。コメントできない」とだけ答えた。

知事選における立花氏の言動に絡む動きはこれだけではない。5日には街頭演説で槍玉にあげられた一人、丸尾牧県議が、立花氏の街頭演説で名誉を棄損されたとして1100万円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁尼崎支部に起こした。

訴状によれば立花氏は、選挙中の昨年11月2日、西宮市内での演説で「実は丸尾とかが書いたんですって、あのウソを。あの告発文書を書いたのは竹内(元県議)だけじゃなくてこの丸尾牧も書いとるんです」「こいつらが原案作って、それを噂話でばーって庁内に広めてね。

こいつですよ」などと発言した。

ここでいう「告発文書」はAさんが昨年3月に匿名でメディアや県警に送った斎藤知事の疑惑を告発する文書とみられる。立花氏は、その文書は実は丸尾県議と竹内元県議が作成し、2人が斎藤知事のパワハラの噂話を兵庫県庁内で流布させた、と街頭演説で主張したというのだ。

知事選で飛び交った言葉が司法の場で初めて問われる 

丸尾県議は今になって提訴したことについて「立花氏は同種の虚偽の話を複数回演説でしていましたが、『と言われています』などと伝聞形にするなどして明確に名誉棄損に問うことが難しいかとも思っていました。しかし最近になって、西宮での演説ではっきり断言していたことが確認できたので提訴に踏み切りました」と説明する。

さらに「立花さんはウソをばらまくことで社会や民主主義の基盤を壊している。その歯止めをかけ、デマの発信について責任を取らせる必要があります」と決意を語った。

「実は立花氏による奥谷県議(自宅兼事務所)前の街宣を巡っては、これを問題視した奥谷氏の記者会見での発言に対して立花氏のほうが名誉棄損だとして東京地裁に損害賠償を求める訴訟を起こしました。しかし、4月に開かれた第1回口頭弁論で立花氏側は訴えに理由がないことを認める『請求放棄』の手続きを取り、司法の判断を回避しました。

立花氏に非難された人のうち、Aさんと竹内元県議は亡くなっており、奥谷県議は立花氏の刑事処分は求め、書類送検されましたが、民事訴訟は起こしていません。

知事選を巡っては、県警が他にもSNSによる人格攻撃や虚偽事実の流布について告発を受け調べていますが、違法性の有無についての判断は出していません。ほかに民事訴訟もないと思われます。

そのため丸尾県議の訴訟は、知事選で飛び交った言葉が司法の場で問われる初めての場になるとみられます」(県議会関係者)

丸尾県議は「勝訴し賠償が認められれば、必要経費を除いて全額を竹内さんの遺児育英基金に寄付します」と述べ、亡くなった竹内氏の無念を抱いて闘うと表明した。

政治の混乱が拡大し続ける兵庫県。問題の知事選の“清算”がようやく緒に就いた。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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