
警察官をかたる「ニセ電話詐欺」の被害件数が爆発的増加をみせている。今年4月には「年内いっぱいで引退」を宣言していたセクシー女優の竹内有紀さんが、貯金額200万円をゴソッとだまし取られたことを自身のSNSで打ち明けた。
「『警視庁の安全課の者』を名乗る、末尾が110の番号から突然電話がかかってきて…」
警察官をかたり、「逮捕状が出ている」などと不安をあおり金銭を送らせる「ニセ電話詐欺」は、昨年後半から急増している。
警察庁によれば、今年1月から3月だけで全国で約2000件の被害が確認されているという。警察官をかたる詐欺の被害額は、電話詐欺全体の6割以上となる約171億円にのぼっている。
竹内さんがその電話を受けたのは、4月28日の16時すぎのことだった。
「末尾が『110』の番号で、『警視庁の安全課の者ですが、あなたが詐欺事件に関与した疑いがあります。署まで来てほしい』と言われました。私は19時に友人と会う予定があったので『今日は行けない』と言うと、私の本名と現住所、さらに過去に住んでいた住所まで言われ、『身の潔白を証明してもらわないと“書類送検”することになる』と言われました」
じつは、筆者もこの手の詐欺電話がかかってきたことがあり、30分ほどニセ警察官の電話の相手をしたことがあるので、流れは大体わかる。竹内さんもほぼ同じ流れだった。
芸名ではなく、本名と現住所と過去の住所まで当てられたことで、半信半疑ながらも真摯に応じてしまった竹内さんは、その後“個室に移るように”と指示をされる。そして品川駅の港南口にあるカラオケボックスに入った。
その個室内で“警視庁の安全課の者”から“捜査2課のハヤシダ”を名乗る男に電話が引き継がれ、さらにやり取りはLINEのビデオ通話に移行することに。
「ハヤシダを名乗る男は『逮捕状を送るのでLINEに切り替える』と言った後に、教えてもないのに私のLINEに逮捕状を送ってきました。そしてビデオ通話に映った人物は警察官のような水色のシャツを着ていて、警察手帳を提示してきました。帽子はかぶっておらず、34、35歳くらいのごくフツーの男性という感じでしたね」
「とにかく早くやるべきことを済ませて解放されたかった」
竹内さんはハヤシダから職業を聞かれ、正直に「セクシー女優」だと伝えた。するとなぜか芸名を聞かれたという。この手の電話詐欺で相手が女性の場合は「身体的な特徴を確認する」と指示され、上半身を裸にされるなどの性的な被害に遭うケースもある。そのあたりは大丈夫だったのか。
「幸いにもそれは言われませんでした。でも、芸名を言ってしまったので私の裸はネット上で検索すれば出てくるし、見られたも同然だと。そしてハヤシダは『あなたの口座に犯行で使われた紙幣がないかを調べる必要があり、検事の指定する口座にお金を預けてもらう必要がある』と言いました。
その時点ですでに時間は18時。私は友人らとの約束の時間が近づき焦っていました。とにかく早くやるべきことを済ませて解放されたい思いになっていました」
ハヤシダからは「ビデオ通話中は誰ともLINEや電話はするな」と指示されており、友人らに「遅れる」という連絡もできずにいたため、余計に焦ったのだという。
「カラオケを出てATMから入金しろと言われましたが、付近に銀行のATMがなかったため、インターネットバンキングから入金することに。
その口座は検事のものとのことでした。いま考えればすごく変ですが、その時はもう早く終えて、友人らのもとに向かいたい一心で、現金200万円を指定の口座に一括送金してしまいました」
時刻はすでに19時半過ぎ。友人らとの待ち合わせ時間から30分も遅れている。急いで友人らが待つ店に向かい、事情を説明した。
「友人らはすぐに『それ詐欺だよ!』と言ってくれ、その時いた恵比寿付近の警察署に駆け込みました。でも電話をかけた場所が品川だったので『管轄の高輪署に行ってください』と言われ、高輪署に。そこから事情聴取を受け、終わったのが23時近く。どっぷり疲れましたし、とにかく落ち込みました…」
警察や銀行に相談するも「お金は戻ってこないと考えたほうがいい」
高輪署の刑事は「今日だけでもその手口の詐欺の被害者はあなたで2人目です。毎日必ず1件は被害相談があり、高輪署だけでも100件近い被害届を受理している」と言ったという。
「刑事からは『お金は戻ってこないと考えたほうがいい』と言われました。送金したセブン銀行に自分で電話をかけて事情を話し、口座の凍結を行なってもらうほか、銀行によっては救済金などが出る場合もあるが、全額は返らないはずだと言われました」
翌日はセクシービデオの撮影日だったという竹内さん。
「ハヤシダからは撮影中にLINEのほうに、なぜか『連絡ください』と来ていましたが、当然無視しました。お金は戻ってこないから、もともと引退予定だったセクシー女優としての活動も、今後どうしようか考えているところです。それだけでなく引退後にやるつもりだったことも始めていきたいと思います」
竹内さんは、セクシー女優時代に培ったプレイやテクニックを活かした運動法“セクササイズ”を考案し、これを多くの女性に広げたいという。また、産婦人科医や元人気セクシー女優らと組んだユニット「おしもくらぶ」で女性のセクシャルウェルネスの発信も行なっていくのだとか。
今回のような特殊詐欺が急増している一番の理由は、受け子や出し子要員が不要で、「数打てば当たる」手軽さからだとも言われている。怪しい電話がかかってきたら、一旦切って交番に駆けつけることを鉄則としたい。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班