クルド人問題に全くやる気のない政府・自民党「国は何も明らかにしない」苦悩する住民と自治体
クルド人問題に全くやる気のない政府・自民党「国は何も明らかにしない」苦悩する住民と自治体

在留外国人の数が増えている。それにより、日本社会も大きく変わりつつあるが当然、摩擦も起きている。

埼玉県川口市ではトルコ出身クルド人コミュニティが拡大し、一部では地域住民との亀裂が生じている。いったい今何が起きているのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏がこの問題を斬る。 

2023年、川口市ではクルド人同士とみられる殺人未遂事件 

日本に住む外国人は年々増加し、社会や経済にも影響を与えている。在留外国人数は2024年末で約376万人と過去最高を記録し、東京、大阪、愛知、神奈川、埼玉などの都市部に集中している。

国籍別では中国、ベトナム、フィリピンが上位を占め、外国人の存在感は確実に高まっている。

一方、日本には7万人超の不法残留者が存在し、トルコ国籍者の増加が確認されている。2023年、埼玉県川口市ではクルド人同士によるとみられる殺人未遂事件が発生し、病院に多数の外国人が集まり騒然となり、救急搬送が一時停止する事態に陥った。この事件は、日本の移民受け入れや在留管理の制度運用に重大な課題があることを示した。

川口市ではトルコ出身クルド人コミュニティが拡大し、ゴミ出しや騒音など生活習慣の違いから地域住民との摩擦が表面化している。トルコ政府は一部在日クルド人に対し、クルド労働者党(PKK)との関係を理由に資産凍結を行っており、国外の政治的対立が日本社会にも波及し、不信感を生んでいる。

法務省の資料が明らかにした実態「金稼ぐため」複数回答 

また、難民認定を受けられなかった者が仮放免のまま長期間滞在し、就労も移動も制限されることで困窮する例が続出している。

2024年、浜田聡参議院議員が公開した法務省の「トルコ出張調査報告書(地方視察編)」では、川口市に定住するクルド人の多くが出稼ぎ目的で来日しており、「お金を稼ぐため」との回答が複数記録されていた。これは難民制度が就労目的に使われている実態を示唆している。

産経新聞の取材班(※1、※2)が実際にトルコ南部の村を訪れた際、川口市内で解体工事会社を実質経営するクルド人男性の故郷で、村人は隠す様子もなく次のように証言している。「なぜなら日本はビザなしで簡単に行けるから」「働くために日本へ行っている。短期滞在で入国して翌日からカイタイで働けるのだ」と。

産経新聞の取材に答えたクルド人の本音

別の村の配管工の男性は自身も日本で13年間働き日本語も堪能だったが、「われわれが難民だなんてウソ。みんな上手にウソをつく」「入管で『国へ帰ったら殺される』『刑務所へ入れられる』と言うでしょ? 全部ウソ。本当にウソ。みんな日本で仕事したいだけ。お金が貯まったら村へ帰る。私の国で迫害なんて絶対ない」と言い切っている。

トルコの憲兵隊が怖くないか尋ねると、「なぜ怖い? この辺りはクルド人が多く憲兵にも警察にもクルド人が多い。なぜ同胞が同胞を迫害するんだ」と述べ、同胞からの迫害はないことを強調している。

村の様子も、トラクターが行き交う農村でありながら立派な「御殿」が立ち並び、トヨタの大型乗用車に乗る人もいるなど、一部で報じられるような「迫害されて極貧の中から逃れてきた」というイメージとは大きく異なる実態を示唆している。産経新聞は川口の難民申請者の8割がトルコ南部3県に集中していると報じている(※2)。

※1
「軍と警察呼んだ」川口クルド人の出身地訪ねた記者を恫喝 両親「日本で成功の息子誇り」
https://www.sankei.com/article/20241124-OCA6UR7WZFOQ3I6FJV4RX3M2V4/

※2
「難民なんて全部ウソ」「働くため日本へ」川口の難民申請者の8割、トルコ南部3県に集中
https://www.sankei.com/article/20241124-2ZMA4FNKGBJOZIXA6CMPV3RRTM/

制度を真面目に守っている外国人たちまでもが、疑いの目で見られてしまう 

仮放免という制度が、今のままはっきりしない運用で続いてしまうと、本来守られるべき外国人の立場があいまいになり、「制度の外に取り残された存在」として見られてしまうことになる。

つまり、正当な手続きを踏んで在留している外国人であっても、制度がはっきりしないために、まるで法の枠組みの外にいるような印象を持たれてしまうのだ。その結果、不法就労や制度のすり抜けといった問題が目に見える形で表面化し、地域の中で不安や不信感を生む原因になってしまう。

さらに困ったことに、制度を真面目に守っている外国人たちまでもが、疑いの目で見られてしまう。これは非常に不公平な状況であり、社会全体としての信頼の土台が崩れていくことにもつながる。

行政が「誰がどこでどのように暮らしているのか」をしっかりと把握し、住民にもその情報が適切な形で共有されれば、こうした不安はある程度やわらげられるはずだ。いわゆる制度の「見える化」が、その第一歩になる。

浜田聡議員が公表した法務省の報告書、そして産経新聞の現地取材によって明らかになったトルコ南部の村人たちの証言は、日本の難民制度が「本当の難民ではない人たち」によって使われている現状を、非常にリアルな形で示している。

そこでは、日本に来た目的が「出稼ぎ」だったと明確に語られており、制度を利用して仕事をするために虚偽の申請をしている実態が赤裸々に語られていた。

本当に助けるべき人にまで正確に手が届かなくなる 

こうした実態は、「難民とは迫害されて逃れてきた人」という私たちが一般的に抱いているイメージと大きく食い違っている。

難民制度は、本来そうした困難な状況にある人々を保護するために設けられたものである。その信頼性が揺らぐということは、制度の根本的な意味が失われることを意味し、制度そのものの存続すら危うくなってしまう。

難民制度をただ「人道的に正しいこと」として美しく語るだけでは、本当に助けるべき人にまで正確に手が届かなくなる。審査が混乱し、結果的に制度への不信が広がる。

だからこそ、制度は厳しく運用されなければならない。

厳格な対応というと冷たく見えるかもしれないが、それはむしろ、真に必要な人を守るために不可欠な前提なのである。

もし制度が公平に運用されなければ、誠実に暮らす外国人と、制度を悪用する者との区別ができなくなってしまう。その結果、行政が恣意的な対応をせざるを得なくなり、市民の信頼もどんどん失われてしまう。

対応の基準は、「どこの国の人か」や「どんな宗教か」ではなく、その人の行動と、制度を守っているかどうかで判断されるべきである。

最も危険なのは、制度が見えないまま放置され、説明もされず、矛盾したまま運用されることである。そんな状態では、地域の安心感も失われ、人々の信頼も根本から揺らいでしまう。制度の整備と透明化は、もはや先送りできない課題である。

国が地方自治体に責任を押しつけている実態 

川口市の奥ノ木信夫市長は、仮放免制度に関する異例の要望書を国に提出した。その中には、「不法行為を行う外国人には法に基づく厳格な対処」「仮放免者に最低限の生活を維持するための就労許可」「医療や行政サービスの提供に国が責任を持つべき」といった要望が含まれている。

市長は「仮放免で帰る人の割合すら国は明示しない」と不満を述べ、国が地方自治体に責任を押しつけていると厳しく批判している。

市が把握するだけでも、川口市内の仮放免中のトルコ国籍者は900人以上、多くがクルド人とされる。彼らの生活実態は制度上の規定とは大きく乖離しており、就労制限があるにもかかわらず多くが建設や解体業などに従事している。

実際、現場で働く日本人作業員の証言では、「彼らなしでは業務が回らない」と語られるほどに依存が進んでいる。

制度そのものの信頼性が崩れてしまう 

これまでに紹介してきたような実態を考えると、日本の難民認定制度が一部の人によって悪用されている現状に対して、もっと厳しく対処していく必要があるということは明らかである。

難民制度は、本来、戦争や迫害などで母国にいられなくなった人たちを守るためのものである。しかし今、日本の制度を利用して、働くために虚偽の理由で難民申請をする「偽装申請」や、許可なく働く「不法就労」などが問題になっている。

このような行為を放置すれば、制度そのものの信頼性が崩れてしまうだけでなく、本当に保護が必要な人たちへの支援も行き届かなくなってしまう。

だからこそ、日本の入管や政府は、偽装申請や不法就労を絶対に見逃さないという「はっきりとした強い姿勢」を打ち出すことが求められている。それと同時に、必要な法の執行を丁寧かつ厳格に進めていくことが不可欠である。

最終的にめざすべきことは、すべての人が安心して暮らせる社会を実現することにある。外国人であっても日本人であっても、きちんと制度を守って生活する人が、不安や不満を抱かずに暮らせる環境を整えることが大切だ。

そのためにも、制度の乱用を見過ごさず、真面目に暮らす人が損をしない社会をつくるために、日本の入管行政は今こそ真剣に行動しなければならないだろう。

文/小倉健一

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