「若者に投票させたくないの?」参院選“3連休ど真ん中”は偶然かそれとも…日程や天候が選挙結果に及ぼす影響とは
「若者に投票させたくないの?」参院選“3連休ど真ん中”は偶然かそれとも…日程や天候が選挙結果に及ぼす影響とは

7月20日の日曜日に「第27回参議院議員通常選挙」が実施されることが、正式に発表された。しかしその日取りが“真夏の3連休の中日”にあたることから、SNSでは「投票率を下げるためではないか?」といった批判的な声が多数上がっている。

「投票率落とそうとしてるんでしょ?」

参院選の日程が6月24日に正式決定した。公示日は7月3日、投票日は7月20日(日)である。翌21日が「海の日」にあたるため、3連休の中日となる。学生にとっては夏休みの幕開けのタイミングでもあり、家族で旅行や帰省の予定を立てている人も少なくないだろう。

こうした行楽シーズンと重なる日取りでは、現役世代が投票所へ足を運ぶモチベーションが下がる可能性もある。さらに、7月下旬の暑さは年々厳しさを増しており、猛暑のなかでの投票に二の足を踏む人も少なくないだろう。

この日程が発表されて以降、SNS上では批判の声が相次いでいる。

〈投票率落とそうとしてるんでしょ? やり方汚いね〉

〈三連休の真ん中に持ってくるのはやはり、投票率を下げて組織票を強くするためですかね〉

〈相変わらず嫌がらせがスゴいな、ほんとやる事なす事、ぜーぇんぶ国民が嫌がる事ばっかし〉

〈若者に投票させたくないのでしょうか。嫌がらせのような日程〉

このように、投票日程に対しては強い不満が噴出しているが、はたして“投票日”は本当に選挙結果を左右するのか。こうした「日程設定と投票率」の関係について、政治学者で同志社大学教授の吉田徹氏に見解を聞いた。

「(3連休での投票は)旅行や帰省などで、一般的には投票率が低くなると予想されます。ただ、たとえば2022年の調査では、7月の3連休で『外出する』とした国民は半数程度。

近年では収入減や円安の影響などもあり、祝日を“安近短”で済ます傾向も強まっています。

また、期日前投票も一定程度浸透しており、昨年の衆院選では約2割が事前に投票を済ませていました。これらを踏まえると、影響はある程度までは限定的になるかもしれません」(吉田教授、以下同)

興味深いのは、こうした日程・天候の影響は他国でも議論されており、実際に選挙研究の中では「投票率を左右するのは“争点の有無”や“接戦度”のほうが大きい」とされている点だ。

どんな日程でも投票率にはそれほど影響しない?

「アメリカやスウェーデンの選挙を対象にした研究では、少なくとも雨天や雪などで投票率が下がる割合は極めて限定的だと実証されています。投票行動にあっては、天候や日程以上に『選挙戦が盛り上がるかどうか』。つまり、選挙区で与野党が接戦になっていたり、有権者が関心を持てるような争点設定ができたりするかどうかにかかっているのです」

つまり、日取りそのものよりも、「この選挙で何が変わるのか」が見えるかどうかが鍵だということだ。

では今回のような“3連休中日”に選挙をぶつけるケースは、本当に珍しいことなのだろうか。これまでにも意図的な日程調整があったのでは? という疑問について、吉田氏はこう説明する。

「参議院選挙は選挙日程が法律によって制約されるため、選択肢がそもそも狭いのです。今回でいえば、議員の任期満了日が7月28日、公職選挙法の規定で『国会閉会から24日以後30日以内』に選挙を実施しなければなりません。

今年は6月22日に国会が閉会したため、唯一の日曜が7月20日ということになります。かつて1950年代には金曜や月曜が投票日だったこともありましたが、現在では平日に投票日を設定することのデメリットを考慮すれば、今回の日程は必然的ともいえ、意図的な日程調整とは言いがたいでしょう」

一方で、選挙の投票率に「日程がまったく影響しない」とも言い切れない。衆議院選挙のように、解散権を持つ政権がタイミングを選べる場合、実際に投票率や関心の低い時期を狙った選挙も存在した。

たとえば2014年の衆議院選挙では、安倍政権が消費税引き上げの先送りを大義名分として年末に選挙を設定。12月14日の投票日は年末の慌ただしい時期と重なり、投票率は過去最低の53%にとどまった。

投票率が低ければ与党が有利に

では今回、仮に投票率が過去最低を更新した場合、それはどの政党に有利に働くのか。

「一般的には、基礎票を持つ割合の大きい与党が有利になります。とくに参議院選挙は政権選択選挙ではなく、衆院選より投票率が下がる傾向があります。他方で、政権交代に直結しない分、有権者が“罰を与える”という意思表示をしやすい場でもあります。

たとえば1995年の参院選では、投票率は44.5%と過去最低を記録しました。当時の与党は自社さ連立政権でしたが、比例区での得票率は5割を下回っており、総有権者の約4分の1の信任しか得られなかったことになります。これでは政権の“政治的正当性が欠如している”とみなされても仕方ありません」

今回のように、投票日が話題になることはあっても、それ自体が投票率や結果を大きく左右するとは限らない。結局のところ、有権者を動かすのは、「この一票で何かが変わるかもしれない」という実感なのだろう。

たとえ真夏の3連休でも、未来を他人任せにしないために、国民の一人ひとりが選挙に向き合う必要がある。

取材・文/集英社オンライン編集部

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