
1998年に「だっちゅーの」で一世を風靡した元パイレーツの西本はるかさん。2001年の解散後は俳優として活躍し、7年ほど前から「歯科助手」をしているそう。
医療系の求人サイトに登録したら…
――パイレーツ解散後は俳優業をメインに活動し、いまは歯科助手として週5日働かれているそうですね。どんな経緯で現在のセカンドキャリアに至ったのかとても気になります。
西本はるか(以下、同) もともと女優になりたくて芸能界に入ったので、解散後は役者としてがんばっていこうと思っていました。ただ、ドラマや舞台でいろいろな役をやらせてもらえたんですけど、だんだん仕事は減っていってしまって。
それで、私が20代後半から30代前半ぐらいのときに芸能界で資格ブームみたいなのがあって、仕事に繋がるかもって、友達と一緒にいくつか取得したんですよ。ヨガインストラクターとか野菜ソムリエ(ジュニア・ベジタブル&フルーツマイスター)とか。あとは紅茶を美味しく入れる資格みたいなのも取りましたね、それは正式名称忘れちゃったんですけど(笑)。
――ヨガインストラクターの仕事は、芸能人のセカンドキャリアとして合っていそうですよね。当然ヨガの先生も選択肢にあったんですか?
それが全然なかったんですよ。実は資格を取得できるコースを受講している途中から、ヨガの先生は合わないなぁって気づいちゃって。
資格取得コースの高いお金を前金で払っちゃってたんで、一応最後まで受講してヨガインストラクターは取ったんですけど、お客さんに「吸って~~、吐いて~~」って言いながらだと自分の呼吸は大変だし、教える側は癒されないなって(笑)。
――そんな紆余曲折を経て、いまは取得している資格とまったく関係のない歯科助手としてキャリアを積まれています。歯科助手を選んだきっかけは?
芸能の仕事がだいぶ減ってきてしまっていて、普通の仕事に就いてみようかなっていう時期に、最初は本当に軽い気持ちで医療系の求人サイトに登録してみたんです。
そもそも高校時代から芸能活動をしていて、一般社会の仕事の経験がほとんどなかった状態でした。以前お付き合いしていた男性がリサイクル業や遺品整理業の会社の経営者で、交際しているときにその彼氏の仕事を手伝ったりはありましたけど、自分で決めた一般の仕事に飛び込むというのは初めてだったんです。
医療業界を選んだのは特に大きな理由があったわけではなくて、どうせゼロからの未経験だからと、とりあえずダメ元で登録してみた感じ。
歯科助手にこだわりがあったわけでもなかったんですけど、そのサイトにスカウト機能が付いていて、ある歯科医院からうちで働きませんかとお誘いがあって。歯科助手には漠然とかわいらしいイメージがあったので、飛び込んでみることにしたんです。
意外に元パイレーツだと気付かれない
――そんな軽いきっかけだったものの、歯科助手としてのキャリアはもう約7年。やりがいを感じていたり、天職だという実感があったりするんでしょうか?
自分に向いてるとも思ってません(笑)。薬液の種類とか覚えなくちゃいけないことが膨大だし、薬液を出す量とか診療台のライトの位置とかもすごく細かく指示されるし、ほんっっっとに大変なんですよ。
それに、この7年の間に勤め先の歯科医院自体はいくつか変えているんですけど、どこも先生はかなりクセ強(笑)。それこそ薬液の1滴の量が多すぎるとかライトの位置が1mm違うとか指摘のこだわりが強かったり、説明や指示をするときに主語がなかったり早口すぎてなかなか聞き取れなかったり、私の勤めていた歯医者は特に変わった先生が多かったです(笑)。
でも、最初の1~2年ぐらいに大変な思いをして歯科助手の仕事を覚えたので、もし辞めてしまってまた別業界に行くと、せっかく身につけた経験やスキルがもったいないなと思っていて、だから続けているんですよね。
――ちなみに、診療台で横になっている患者さんの顔に西本さんのバストが当たってしまったりは……?
まったくないです(笑)。歯科衛生士さんだと歯のクリーニングをするので、もしかすると胸が当たってしまうこともあるかもしれないですけど、歯科助手は基本的に立ち位置が患者さんの横なので、胸が当たるようなシーンはまずないですね。
――非常に残念すぎる回答でした……。患者さんに元パイレーツだと気づかれてナンパされたり、そういう困りごとは?
勤務中はほぼノーメイクだし口にはマスクもしているので、顔バレすることがないんです。患者さんに元パイレーツだって気づかれたことは7年間で1度もない。だから患者さんからナンパはされることもないんですよ。
患者さんに気付かれないどころか、いつも一緒に仕事している先生や同僚の歯科助手も、気づいてない可能性けっこうあります(笑)。前に勤めていたクリニックの先生は私がパイレーツだったってことは知ってるんですけど、今の勤め先の先生はけっこう年配で世代が上なので、たぶん今でも気づいてないです。
同僚の歯科助手も、仲のいい1人にはご飯にいったときに私が自分から話して驚かれましたけど、たぶんほかの人たちは気づいてないですね。
いまは顔よりもお金よりも穏やかさ
――歯科助手としてセカンドキャリアを歩まれている西本さん、今後の目標ややりたいことがあれば教えてください。
仕事のことじゃなくてプライベートの話でもいいですか? 私、前からずっと言ってるんですけど、もういい加減、結婚したい(笑)。
――歯科助手やお仕事の目標ではないんですね(笑)。
はい、仕事はほどほどで(笑)。
昔から結婚願望があって、それこそパイレーツ時代から結婚は意識してたんです。でも合コンとか飲み会に呼ばれて行っても、そういう飲みの場で出会う人とは今まで一度も付き合ったことないんですよ。だから以前、婚活に力を入れてみた時期もあって、紹介してもらった事も何回かありましたが、そこでもお互いがいいと思える人とは出会えないんですよね。
男を見る目がないのか男運が悪いのか、なかなかいい縁がなくて。
――それは率直に言って、付き合う条件や男を審査する目が厳しすぎるからでは……?
いえいえ! いまは全然、そんなことないです。たしかに以前は見た目を重視している時期とか経済力を重視している時期はありましたよ。20代前半ぐらいまでの若いときは、やっぱり相手の顔は重要でした。ブレイク当時に付き合っていた彼氏も普通の一般人だったけど、イケメンだったので(笑)。
その後に顔よりもお金が大事だなって思うようになって、経営者のかたを好んでお付き合いしている時期も正直ありました。
でもいまは顔よりもお金よりも、とにかく穏やかで誠実な人がいいなって思うようになっていて。もう普通に落ち着きましたね、はい。いままで言い寄られるのはオラオラな感じの人が多かったんですけど、もうそういうタイプにはいかないです(笑)。
取材・文/堺屋大地 撮影/恵原祐二