〈浜名湖17歳殺害〉ガラス瓶や十字レンチで殴打、川に落としスマホで撮影「敬語つかわなかったから!」互いをファミリーと呼びあった少年たちが裁判で主張した身勝手すぎる言い訳
〈浜名湖17歳殺害〉ガラス瓶や十字レンチで殴打、川に落としスマホで撮影「敬語つかわなかったから!」互いをファミリーと呼びあった少年たちが裁判で主張した身勝手すぎる言い訳

「暴行の内容は認めますが、殺すつもりはありませんでした」23日に行われた初公判でそう語ったのは、フィリピン国籍のグアルディアノ・マット・ジンロ被告(19)。昨年2月、斉藤宇川さん(17)の水死体が浜名湖で発見された事件で殺人などの罪に問われている。

 

「中学を卒業してから素行が悪くなっていった」

社会部記者が解説する。 

「当時18歳だったジンロ被告は、堀内音緒(ねお)被告(当時21)と共謀し、斉藤さんに暴行を加えた上で、乗用車のトランクに監禁。浜名湖付近まで向かい、再び暴行を加えたうえで、斉藤さんを湖にそそぐ川に転落させて溺死させたと見られている」

この事件では他にブラジル国籍の1人を含む3人の17歳少年が監禁容疑で、19歳のフィリピン国籍の女性が暴行に関わる証拠隠滅の容疑で逮捕されていたが、いずれも家裁送致され、起訴には至っていない。ジンロ被告も当時18歳だったため一度は家裁送致されたが、静岡家庭裁判所浜松支部は「一連の犯行で中心的な役割を果たした」として検察官送致(逆送)を決定。「特定少年」として氏名を公表された。

冒頭で触れたように「殺意」を否定し、起訴事実の一部を否認したジンロ被告。いっぽう、共犯者の堀内被告は今月2日に行われた初公判で起訴内容を認め、同13日に懲役17年を言い渡されている。

多国籍な少年グループによる凶行はなぜ起きたのか。その背景を取材する中で見えてきたのは、浜松駅周辺で形成された独自の“外国人コミュニティ”だった。ジンロ被告の知人が語る。

「彼がフィリピンから日本に来たのは小学校高学年のときです。両親はフィリピンに残っていて、日本に住む親戚の家に来るという形でした。当時はまったく日本語がしゃべれず、僕らもよく日本語を教えていました。

彼を白い目で見たり、馬鹿にしたりする人はいませんでしたよ。

そんな彼の素行が悪くなっていったのは、中学を卒業してからですね。高校には進学しましたが、定時制か通信制だったので日中は暇だったようで、浜松駅周辺でよく遊んでいました。そこに同じような境遇のフィリピン人がいて、その仲間、またその仲間と繋がっていった」

“兄弟”と呼び合う関係の堀内被告とジンロ被告

その仲間の一人が、堀内被告だった。掛川市にある堀内被告の実家の近隣住民が語る。

「彼のことは小学生くらいの頃に2、3度見たことがあるだけですね。ご両親と祖父母で一軒家に住んでいました。お父さんは日本人で会社勤めをしていて、お母さんはフィリピンの方だと思いますが、夜の飲み屋のようなところで働いていると聞いていました。今から4年ほど前、おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなってほどなく、浜松市のほうに引っ越しするというのは聞きました」

フィリピンにルーツを持つ2人は“兄弟”と呼び合う関係を築いていった。ジンロ被告のSNSには、堀内被告と車を並べて洗車した思い出が投稿されている。

「堀内は黒の、ジンロは白のレクサスを所有し、近隣を乗り回していた。ともに車高を高くするなどした改造車で、タバコを投げ捨てたり、騒いだりといった迷惑行為で近隣住民を困らせていたそうです」(地元紙記者)

そんな彼らの“たまり場”となったのが、仲間の一人の19歳の少女が暮らすアパートの一室。被害者の斉藤宇川さんが最後に訪れた場所だ。

「宇川は日本人のコミュニティとは別に、浜松周辺の外国人やハーフのグループとの繋がりもあったんです」

と語るのは、斉藤さんの先輩にあたる人物だ。中国籍を持つ斉藤さんは中学時代にはバレーボール選手として活躍。磐田市内の私立高校に進学したが、その後退学し、アルバイトをしながら通信制高校に通っていたという。

「宇川は日中から夜にかけては日本人の仲間たちと街で遊び、夜中になると外国人コミュニティ側にいくんです。彼らの多くがフィリピンやブラジルの子で年齢層も下は14歳から上は23~24歳くらいとバラバラでした。家庭が複雑で家に居場所がない子も多くて、独特なコミュニティでしたね。あいつらはよく写真を皆で撮って『ファミリー』とか『兄弟』とかそういう言葉をつかっていたくせに、何で彼にあんな酷いことをしたのか……」

斉藤さんの遺体には44カ所の傷があった 

事件当日、このアパートで何があったのか。現場にいた友人から話を聞いたという女性は、

「この日は被害者の斉藤さん、逮捕された17歳の少年や家主の少女以外にも、たくさんの男女がアパートに集まっていました」と語る。

「その夜、宇川くんは仲がよくて“ニコイチ”と言われる友人と街で飯を食った後、Aちゃんの家に泊まったそうです。朝起きて宇川くんがバイクでどこか遊びに行って、帰ってきた時にある友人のバイクを倒してしまって、そこから取っ組み合いのケンカが始まったの。『やんのか?』『やってやるよ』って、最初はいつものノリというか、ジャレあうくらいだったんだけど、だんだんエスカレートしだして、止めに入った女の子を突き飛ばしてしまった。

宇川くんも周りが見えてなかったんだと思うけど、これに女の子の彼氏がキレて、収拾がつかなくなって……。

その場にいた子が、ジンロと堀内に連絡したみたい。二人は、『女に手をあげんのかよ』ってマジギレして、宇川くんは車のトランクに押し込まれてしまった」

斉藤さんの知人男性は、肩を落としてこう語る。

「宇川はボコボコにされたとき、気絶して動かなくなった。焦ったアイツらは脈もはからず服を脱がせてパンツ1枚にして浜名湖に捨てたようです。なんでこんなムゴイことをするのか……。もう宇川と会えないのは寂しいです」

いったい何が、被告たちをここまでの犯行に駆り立てたのか。その動機は、堀内被告の公判で明かされていた。

「その場に居合わせた少年たちによる供述調書によると、ジンロ被告が初対面で年下の高校生である斉藤さんが敬語を使わっずタメ口だったことに腹を立て、それをきっかけに堀内、ジンロ両被告で激しい暴行を加えたのだそうです。

意識混濁状態になった斉藤さんを車のトランクに押し込み、浜名湖近くまで移動すると、ジンロ被告はさらに殴る蹴るの暴行を加えたうえで、岸壁付近で堀内被告とともに斉藤さんの体を持ち上げ、背中を押して川に転落させたと見られている。その様子は両被告によってスマートフォンで撮影されており、公判で証拠として提出されている」(前出・社会部記者)

堀内被告に懲役17年を言い渡した裁判長に「残酷で、極めて悪質」と言わしめたこの事件。ジンロ被告の弁護側は、「被害者と被告は初対面であり、死亡させるまでの動機がない」と主張している。

しかし、「斉藤さんの遺体には44カ所の傷があったそうですが、堀内被告の弁護側が主張したところによると、その大部分はガラス瓶や十字レンチを用いたジンロ被告によるものだったそうです」(同前)という。

判決は7月18日に言い渡しの予定だ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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