
災害時に必要なのは「食料」ではなく、まずは「水」だという。1人の人間が必要とする1週間分の水は約21リットルにもなるという。
『大切な家族を守る「おうち防災」』より一部抜粋、再編集してお届けする。〈全3回のうち3回目〉
食料よりも、まずは水を備えよう
「1人21リットル以上の水を備蓄する方法」
水をどのくらい備蓄していますか? 内閣府のガイドラインでは、災害時に備蓄すべき量として成人は飲用水として1日3リットルと記載されています。1週間分となると、3リットル×7日分×家族の人数分となります。
子どもは大人よりも体の中の水分量が多く、必要な水分量は、体重当たりにすると思っているよりも多めで、成人に比べて小学生で1・5倍、幼児で2倍、乳児は3倍にもなるということです。
ただし、「必要水分量」は口から摂取する水分(飲み物+食べ物)+代謝水(体内で代謝によって生じる水分)の合計であって、全部を水分として摂取すべきという数字ではありません。災害時も子どもが脱水にならないよう、十分に水分補給できる量の備蓄をしておきましょう。
水を運ぶのは重く大変なので、とくにマンションの高層階の方は多めに備蓄しておく必要があります。
水道水を活用する
買わないで水を備蓄する方法は、水道水の活用です。(水道料金はかかりますが)ペットボトルやポリタンクなど綺麗な容器に水道水を貯めておきます。
東京都水道局によると、保存期間は、直射日光を避けて常温で保存すれば3日程度、冷蔵庫で保存すれば10日程度ということです。その間は塩素の消毒効果が持続するので、日付をメモしておき、保存期間が過ぎたものは掃除や洗濯など生活用水として使用、また新しい水道水を入れておきます。
浄水器を通したり、沸かしたりすると、消毒用の塩素が除去されてしまうので、蛇口から直接容器に入れること。
また、清潔で蓋のできる容器に、できるだけ空気に触れないよう、口元まで一杯に水道水を入れておくことがポイントです。入れ替えをしながら備蓄する方法です。
また、水道管に直結した給水タンクを設置すれば、自動で水道水を備蓄することができます。戸建住宅にリフォームで設置できるものもあり、まさにフェーズフリーな商品となっています。
ミネラルウォーターを利用する
ウォーターサーバーやペットボトルを購入すれば、入れ替える手間はかかりません。普段の飲み水や調理用に使い、循環備蓄しておけば無駄になりません。
長期保存水で備蓄する
国産のミネラルウォーターの場合、1~2年くらい賞味期間があるようですが、長期保存水を活用する方法もあります。中には、リサイクル率が高く環境負荷の少ないアルミ缶の長期保存水もあり、12年と賞味期限が長いものもあります。
アルミ缶は高い密封性と遮光性があるので、長期間の保存に向いているのです。そのため、入れ替え作業を減らし管理の手間を省けます。
長期保存水とは何か?
長期保存水についての疑問を、日本ミネラルウォーター協会に伺いました。
Q 長期保存水は、何か入っているのでしょうか?
A 「長期保存水」は、多くの場合、ペット容器を肉厚にするなど容器表面からの水の蒸散をできる限り防ぐなどの工夫をしています。殺菌条件などを変更している場合もあると思いますが、中身の水は通常製品と同じもので、化学物質(添加物)を入れることはありません。
Q 賞味期間の切れた水を飲むことができますか?
A その製品が賞味期間をどのような根拠で決めているかによって異なりますので、一概には言えません。殺菌・除菌をしている製品(国産の製品のほとんど)は、内容量が保証できる期間で賞味期間を決定しているものが多く、その場合は、賞味期間を過ぎても中身の水が変質していないので、賞味期限が切れたからと言って、すぐに飲めなくなるようなことはありません。
ただ、保存場所の臭いがついたり、中身の水の容器表面からの蒸散により容器がへこみ、キャップがゆるむ場合などがありますので、一概に、いつまで飲むことができるかなどを言うことはできません。
また、フランスの水など無殺菌無除菌の製品はこれに当てはまりませんので、注意が必要です。
Q 赤ちゃん用の水として販売されているものもありますが、普通のミネラルウォーターを使っても大丈夫ですか?
A 一般的に赤ちゃん用の水は、ミネラル分を多く含む「硬水」は不向きです。ただ、国産のミネラルウォーターは、硬度の低い「軟水」がほとんどなので、硬度の低い製品は、赤ちゃん用として調乳に使っていただいても問題ありません。
Q 長期保存の注意点を教えてください
A 保存する場所として、日光が直接当たる場所、ショウノウや油など臭いがする場所などは製品に影響を与えますのでふさわしくありません。できるだけ冷暗所で、臭いなどがしない場所で保存してください。
Q 水の備蓄場所は?
A 収納場所に困るという方もいるかもしれませんが、分散備蓄をオススメします。各部屋に少しずつ保管し、その部屋に閉じ込められても水分補給ができるようにしておきます。
Q 備蓄が無くなったら?
A 災害時、水が足りなくなったら給水所に取りに行くことになります。自治体で設置される給水施設の場所や、災害時に使える民家の井戸「災害用井戸」が近くにある場合もあるので、確認しましょう。
また、その際に水を入れる容器もあると安心です。できればリュックタイプの給水袋など、背負えるほうが運ぶ時に便利です。
生活用水の確保
お風呂
「揺れが収まった直後は水が出て、お風呂に貯められたので役立った」というお話を様々な被災地で聞きました。地震の直後は貯水タンクに水が残っていたりと、断水していても水が出ることがあります。
普段からお風呂に水を貯めておければ良いですが、小さいお子さんのいる家庭は、誤って溺れる恐れもあるのでお勧めできません。お風呂に水を貯めるのは、地震直後や台風などが来る直前にしたほうが良いかもしれません。
貯水タンク
また、エコキュートなど給湯器の貯湯タンクが設置されている家は、そのタンクの水を利用することもできます。何百リットルという水が貯められているものもあります。しかし、東日本大震災の時は、揺れでタンクが転倒する被害も出ていて、国民生活センターより注意喚起が行われました。
さらに、熊本地震でも同様の被害が報告されています。倒れたことにより、玄関のドアが開かなくなったケースもあったようです。中の水は高温なので火傷の恐れもあります。耐震対策ができているか、販売業者に点検を依頼するようにしましょう。
雨水
雨水を利用する雨水タンクというものがあります。自治体によっては、設置に助成金を出しているところもあります。また、平時も災害時もトイレを流す時に雨水を活用できる商品も開発されています。
生活用水、さらには、水害のリスクを減らすことにもつながります。
文/奥村奈津美 写真/Shutterstock
大切な家族を守る「おうち防災」
奥村奈津美
大切な家族を守る「おうち防災」
この本は大切な家族を守るためにおうちでできることをまとめた「おうち防災」の本です。
今、大きな災害が起きたら、あなたは家族の命を守れますか?
あなたの自宅は、大きな地震に耐えられる家でしょうか?
海の近くの方は津波の到達間に、家族とどう避難をしますか?
豪雨や台風の時、どのタイミングでどこに避難しますか?
あなたの知恵が家族の命の分かれ目。
災害が起きてからでは何もできないと認識し、今備える必要があるのです。