“眼球タトゥー男”の衝撃的改造人生…失明のリスクを恐れず、術後は黒い涙を流すも「まだ自分は普通」と言い切るワケ
“眼球タトゥー男”の衝撃的改造人生…失明のリスクを恐れず、術後は黒い涙を流すも「まだ自分は普通」と言い切るワケ

失明のリスクをものともせず、眼球にタトゥーを入れた男がいる。東京に暮らす新屋敷幸嗣さん(しんやしき・ゆきつぐ、31歳)だ。

タトゥー界隈では眼球へのタトゥーは日本で初ではないかと言われている。もちろん眼球だけではない。体も顔面もタトゥーだらけ。さらには舌や耳を切ったりと人体改造まで範囲はおよぶ。そんな彼の衝撃的な生き方に迫った。

黒い涙が流れて……

――日本で唯一の“眼球タトゥー”を入れた方だとうかがいました。

新屋敷幸嗣(以下同) それはわかりませんが、自力で調べてヨーロッパへ施術しに行ったんですけど、確かに他では聞いたことがないですね。

 ――日本では入れることができない眼球タトゥー。どうやって施術者を見つけたんですか?

インスタグラムで“eyeboll tatoo”を調べると、外国で入れている人が結構出てくるんですよ。

そこからいろんな人にDMを送っていたら、そのうちの2人が施術した場所を教えてくれました。1人はアメリカ人でその場所での施術費用を問い合わせたら25万円くらい。もう1人はヨーロッパの人で8万円だと。

それでコスパのいいヨーロッパに行くことにしました。

――意外とお安いですね。

そのタトゥーアーティストの方が、日本好きという理由でディスカウントしてくれたみたいですね。その仲間もかなりマニアックな方が多く、お土産に春画とか、触手が出てくるアダルトコミックを買ってきてくれと頼まれ……(笑)。その国では日本人の存在が珍しいらしく、僕のことを見るなり喜んで親切にしてくれました。

実はもう何度もそのショップに渡航していて、耳の切除(上部の外側)もそこでやってもらいました。今日はせっかく集英社のある神保町まで来たので、次のお土産にする古書を探そうと思ってます(笑)。

――仲間の方もすごそうですね。

眼球タトゥーの方も多かったですし、海外のタトゥーアーティストの中にはタトゥーだけでなく、頼んだらなんでもやってくれる方もいるみたいで……。

特に衝撃を受けたのは、耳も性器も切除している人! 両方とも根こそぎないんですよ。ミニマリストと言うんでしょうか、話を聞いたら「無駄を省きたいから」らしいです。「自分はまだ普通だな」と思いました。

――眼球タトゥーの施術はやはり大変でしたか?

施術自体は30分くらい。

眼球に麻酔目薬をして、注射器でインクを注入します。注入後はしばらく横になって瞼を閉じてなじませるだけ。思ったほどの痛みはありませんでした。

しんどかったのは2日目で、まず起きたら目やにで目が開かないのに、目を濡らしちゃいけないから洗えないんですよ! 眼球が腫れてゴロゴロした異物感もすごかったです。

なかでも黒い涙が流れることには驚きましたが、視力には特に変化がなかったので安心しました。

失明のリスクは覚悟の上

――痛みはどうでしたか?

痛みより眼球タトゥーを実現したことによる気持ちの昂ぶりのほうが大きかったです。「ヤバい! やっとできた! 人の体ってこうなるんだ!」って感じで。もちろん失明とかのリスクも知ってたけど、昂ぶりすぎて不安はなかったです。

痛かったといえば。スプリットタン(舌を二つに裂くこと)や耳の切除のほうがキツかったですね。舌を切った翌日なんか、痛くて一睡もできなかったですから。

――タトゥーや人体改造全般ですが、リスクがあるのになぜ実行するのでしょうか?

もちろんリスクは認識しているし、覚悟はしていますけど、経験上、許容範囲のことしか起きないから大丈夫なんです。怪我や失明も、なったらなったでそのときはそのとき、そういう感覚で臨んでいます。

──ちなみにスプリットタンは生活に支障ありませんか?

食べ物が舌の切れ目に引っかかるくらいです(笑)。あとは空気が漏れて滑舌が悪くなるので、気をつけてしゃべっています。

──そもそも、タトゥーを含めた人体改造の経歴ってどんな感じでしたか。

17歳のとき、地元・沖縄の有名な不良の先輩と関わりたくて、その人と同じ店で和彫りを入れたのが最初です。全身の桜吹雪と背中の阿弥陀如来で、2年くらいかかりました。

当時は周りの人間が情報源だったので、和彫りしか知らなかったんですよ。それがSNSを見るようになって、いろんなタトゥーの種類や人体改造の情報に触れるようになって、どんどん興味が大きくなっていきました。

――費用はどう工面したんですか?

高校時代はバイト代でコツコツ払ってました。スーパーでは人相が悪いので裏方に回されて、精肉・鮮魚部の掃除をしていました。あとはプールの監視員もやったけど、いわゆる「ウチナータイム(沖縄県独特の時間感覚)」すぎてクビになったり(笑)。

今勤めている会社は自由度が高くてウチナータイムも許容してくれるのでありがたいです。

顔認証ゲートは通れない

──今は会社にお勤めなんですね!? これだけ全身タトゥーで働ける仕事って何ですか?

飲食店で事務の仕事をしています。

社長もタトゥー好きなんですよ。とはいえ採用当時はまだ顔面のタトゥーは一部だったので、面接で「まだ増えますよ?」と確認してから入社しました(笑)。

次は社長も眼球タトゥー入れたいって話してますよ(笑)。

――仕事に支障はないんでしょうか。

事務なので銀行に行ったりするわけですが、当初は不審に思った銀行から会社に「(タトゥーの方は)大丈夫ですか?」と電話がかかってきていました。

最近はようやく覚えてもらったので、問題なくやれています。ただ、車に乗っていて警察の職質はやたらありますね。止められて腕を見せろって言われるんですよ。薬物を疑って注射痕を探していのだと思います(笑)。

声をかけてきた警察の方とは必ず打ち解けるように努力していて、自分としゃべって「(これまではタトゥーを入れている人に)偏見があったけどなくなった」って言ってもらえるとうれしいですね。

あとは空港なんかだと顔認証ゲートが通れなくて有人カウンターに回されるのはデフォルトなんですが、シンガポールで乗り継ぎしたとき、時間があったので空港の外で観光したかったのに、出してもらえなくて! 空港に閉じ込められてずっと警察っぽい人に囲まれていました(笑)。

やはりこれも薬物の密輸を疑われているようなんですが、こんな目立つ人間がそんなものを運んでいるわけないですよね(笑)。

 ──長年、体に手を入れてきて、気持ちの変化はありますか?

今思うと、最初はストレスのはけ口で、本当にタトゥーが好きだったわけではなかったんですよ。自分にとってはタバコやいじめに代わる非行の一種だったんじゃないかなと思います。

でもそれが次第に、次はこうしたいってアイデアが出てきて、気がついたら夢中になっていました。それが縁で今の会社に入ってこの生活をしているので、本当によかったと思います。

 ──今後やってみたい人体改造はありますか?

最近は体へのICチップの埋め込みが気になりますね。太めの注射器で入れるらしいですよ。もっと技術が進んだら挑戦したいです。

とにかく毎日「ここに何を入れようかな」「こんなデザインもあるんだ、いいな」と考えはじめると尽きなくて、毎日ワクワクしています。これからも人体改造を全振りで楽しんでいこうと思っています!

取材・文/宿無の翁 インタビュー写真/わけとく 

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