
7月3日に公示された参院選。この夏の一大決戦で台風の目となりそうなのが参政党だ。
「玉木と榛葉は好きだったけど…」国民民主支持から参政党支持に
「まず自国民の生活をしっかり守っていこう。外国資本が入ってきて、土地がいっぱい買われるとか、マンションやインフラ、水源、企業の株が買われて経営者が外国人になってしまうとか、そういったことに一定の規制をかけていこう」
参政党の神谷宗幣代表は参院選が公示された3日、東京・銀座で第一声をあげた。
元航空幕僚長の田母神俊雄氏らも応援に駆け付け、集まった支持者は60人ほど。神谷氏の言葉に「そうだそうだ!」と応じる聴衆もおり、最後には参政党オリジナルの三本締めで盛り上がった。
都内各地で行なわれた神谷氏の街頭演説に駆け付けた支持者に、神谷氏の主張のどんなところに共感しているのか聞くと……。
70代のタクシー運転手は「タクシーでは外国人のトラブルが結構多いんだよ。助かる部分もあるし、いい人も多いけど、料金のことで揉めたり、忘れ物があったり。『日本人ファースト』の政策なら、抱えきれないくらいの外国人がくることもないだろうと思ってね」
と、『日本人ファースト』の主張に共感しているという。
この運転手が参政党を支持するようになったのは最近のことだという。
「右の考えだから自民に入れていたけど、最近は自民が右なのかもよく分かんなくなっちゃった。
自民からも国民からも無党派層からも票をとる…各党が戦々恐々
「日本人ファースト」をキャッチコピーに掲げ、「外国人による土地購入を厳格化」「医療保険の利用条件を明確化」などの主張を展開し、最近、SNSを中心に支持を拡大している参政党。
ただ、過去には独自の主張を繰り返し、批判を浴びてきた党でもある。
神谷氏自身の「天皇陛下に側室をやっぱりたくさん持っていただいて、たくさん子どもを作っていただくと。昔はそうしていたわけですよね。そういったことも、やるべきなんじゃないか」といった発言や、コロナパンデミックは仕組まれたものという陰謀論、反マスク、反新型コロナワクチンのスタンスが物議をかもしてきた。
さらに「農薬によってがんが増えている」「現在の農業従事者の多くが、人体に有害な食材を生産している状態」と演説や著作の中で訴えており、農業従事者の反発を誘ったことも。
今年に入り選挙を意識したのか、このような極端な主張は抑えているものの、5月にも沖縄戦について「日本軍の人たちが沖縄の人たちを殺したわけではない」と発言。沖縄戦では、旧日本軍の兵士が住民を殺害したという証言が県内各地で残されており、沖縄をはじめ多方面から批判の声があがった。
しかし、支持者はこうした参政党への批判も意に介さず“心酔”している様子だ。
支持者の30代男性は「『カルトだ』という意見も見ますけど、代表が全部嘘と言い切ってくれるので気持ちいいです」と、神谷氏の発言を信じ切っているようだ。
また、60代女性は「参政党の決起集会などのイベントは数万人が集まったそうですけど、テレビなどで報道がなかったので何か不都合なことがあるんだろうなと思いました」と、メディアの“陰謀”を疑っていた。
こうした参政党支持の波は当初はSNSを中心に熱狂的な支持者の間のみにとどまっているとみられていたが、極端な主張を抑えた効果もあってか、とくに今年に入り政党支持率がじわじわと上昇。
とある複数人区の都道府県を取材する全国紙記者は、こう語る。
「ある情勢調査では、選挙が弱いと言われていた自民党の2人目の候補よりも、参政党の候補のほうが上回っているデータが出たそうです。主にこれまで自民に入れていた保守層や、『山尾騒動』で国民民主から離れた支持者が参政党に流れているようです」
その勢いを反映するように、参院選の前哨戦とされた都議選では、世田谷区、練馬区、大田区の3選挙区で計3議席を獲得。
とくに世田谷区では、自民候補に次いで2位。比較的リベラルな地盤で、立憲は現職1人しか立候補していなかったにもかかわらず、立憲候補を上回ったことに、永田町からは驚きの声が上がった。
そのこともあり、参政党が支持者を奪っているとされる自民や国民民主だけでなく、立憲からも警戒の声が出ている。
「参政党は右派的な政策だけでなく、『フリースクールなどすべての子どもに最適で多様な教育環境を』『オーガニック給食を推進する』などの主張もしていて、リベラル層や無党派層に受け入れられやすいのだろう」(立憲議員)
全国に擁立 自民VS立憲の激戦の行方に影響も
そうしたなか、参政党は6月30日、維新を4月に離党した梅村みずほ氏を公認候補として比例代表に擁立すると発表。これにより参政党の所属国会議員は5人となり、これまでの「直近の衆議院選挙か参議院選挙での得票率2%以上」だけでなく「所属国会議員が5人以上」という政党要件2つを満たした政党となり、自民や立憲、国民、維新、共産などと同じ「主要政党」として扱われることに。
社民や日本保守党が参加できない、メディアでの党首討論会などにも参加し、選挙前に露出を増やすことに成功した。
そして今回の参院選では、全国の選挙区に候補者を擁立。各地での浸透を図り、比例票の掘り起こしも狙う。
「現在の党勢からして、1人区で議席を獲得することは難しくても、自民と立憲で競っている選挙区で自民票を食い、当落に影響を及ぼす可能性は十分にある。裏金問題をめぐる自民への逆風は相変わらず感じるので、保守層が参政党に流れるのではと懸念している。自民にとって怖いのは、立憲ではなく参政党」(自民地方議員)
小規模政党ながら政治に大きな影響を及ぼす可能性は、参院選後にも……。
今回の参院選では、自公が過半数を維持できるかどうかが焦点となっている。仮に参院でも非改選と合わせ過半数を割り込めば、衆参ともに少数与党となる。そのため、神谷代表も演説で「自公政権が過半数割れで参政党の票が必要となった時は、我々の提案するルールや法案が通るかもしれない」とキャスティングボートを握る可能性をアピール。
ただ、永田町からは「主張が過激で、自公としては簡単には協力しにくい。相変わらず参政党の独自路線は続くのでは」(自民関係者)との声があがる。
「我が道」をいく参政党は参院選を経て、どこに向かうのだろうか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班