〈ガールズバー店員の危険な日常〉「金払ってるんだから、何してもいいでしょ」「3万円でどう?」店員が語る“客の暴走”…「ヤカラ系より怖いのは一見普通に見えるガチ恋客」
〈ガールズバー店員の危険な日常〉「金払ってるんだから、何してもいいでしょ」「3万円でどう?」店員が語る“客の暴走”…「ヤカラ系より怖いのは一見普通に見えるガチ恋客」

7月6日に静岡県浜松市のガールズバーで、店長と従業員の女性2人が男性客により刺殺された事件が起きた。逮捕された容疑者は、女性従業員に一方的な好意を抱いていたという。

そこで、今回は都内各地のガールズバー従業員らに「ガルバ店員と客」の関係性を取材してみた。 

「客と女の子のトラブルは日常茶飯事」

そもそもガールズバー(通称ガルバ)とはどんな業態の店か。2000年代初頭に誕生しラウンジやキャバクラのように高価ではなく低価格で親しみやすい「素人っぽい女の子」と飲める場として認識され、全国的に普及した。

ガールズバー専門情報サイト『ガールズバーウォーカー』担当者は言う。

「ガールズバーは、全国的に2000店舗ほどあると言われています。関東は1600店舗ほどで、事件のあった静岡県浜松市の東海地方は弊社の登録店舗数は160店舗ほどです。

ガルバといえば従業員女性の私服勤務が基本でしたが、最近は関東を中心にお店のコンセプトに合わせた衣装を着用した女性従業員が接客してくれるコンセプトカフェ店(通称コンカフェ)が人気で、ガールズバーからコンカフェに方針を変える店もあると聞きます」

新宿、渋谷、新橋など数カ所でコンカフェを経営するオーナーにガルバとコンカフェの違いを聞いた。

「事件のあった店も写真を見る限り、黒いノースリーブにミニスカの衣装っぽいものを着ているし、コンカフェみたいなもんだったんじゃないですか。いまやガルバとコンカフェも同じようなものです。

唯一の違いとしてあげられそうなのは『コンカフェは客とLINE交換NG』としている店があることですが、それも今ではほとんどが個人の自由ですし」

オーナーは「客と女の子のトラブルは日常茶飯事」と苦笑する。

「『おじからのLINEがしつこい』とか『店の前で出待ちしてた』なんてのはまだマシなほうで、ひどくなってくると『最寄りの駅まで尾行された』という女の子もいます。ガルバもコンカフェも送迎ドライバーはいないので、ストーカーのリスクは高い。でも店としてはそういう禁止行為した客を出禁にするくらいしかできないですからね」

都内でも最もガルバやコンカフェが多い歌舞伎町。

特に歌舞伎町タワー前の通りは両脇にメイド衣装やショーパン姿の女の子がズラリと並び客引きする姿が目立つ。そこに立つ女性数名に声をかけた。

メイド服のコンカフェ勤務の女性Aさん(21歳)は「外国人からは立ちんぼだと間違えられて『ハウマッチ?』と聞かれます」と笑いながらこんな話をしてくれた。

「単体のお客さんが『15万円のボトル入れたらアフター行ってくれる? エッチなことできる?』と言ってきたので『いいよ!』って言いましたけど、バックれました(笑)。その後、LINEはもちろんブロックしてます。歌舞伎町で再会しないことを祈ります」

そのように男性に期待をさせてボトルを入れさせる行為は、恨みを買ってしまう可能性のある危険極まりない行ないであるし、性的行為はともかくアフターに行かなかったのは詐欺的であるが、その女性はあっけらかんと笑っていた。

また、歌舞伎町でも数少ないガルバに副業として務めるBさん(25歳)はこんな経験をしたそうだ。

「70代のお客さんからいつも『3万円で大人(性行為を行うこと)どう?』とか『温泉旅行に行こう』と誘われて困っています。

その人だけでなく、LINEで連絡している客は漏れなく『セフレになろう』とか送ってきますし、店に来た時もいつもしつこく誘ってくるからキモい。それとか『性病検査全部クリアしたからいつでも枕できるよ』ってLINEしてきた人もいました」

この女性のようにあくまで性的な目的の誘いをしてくるだけでなく、本気の恋愛関係や、なんらかの関係性を求めてくる客も多いという。コンカフェ勤務のCさん(20歳)は言う。

「ガチ恋(本気の恋愛を求めること)客から結婚しようと言われることはけっこうあります。

以前、指輪を渡されたこともあり『この指輪を見るたびに、僕のことを思い出してほしい』と真顔で言われながら手渡されました。正直、怖かったので『私まだ20歳だから結婚は早いなぁ』と言って指輪は返しました」

「ヤカラ系のお客様はガルバやコンカフェは軽く見てるフシがある」 

取材班は池袋に移動し、池袋のガールズバーやコンカフェの様子も取材した。

池袋のガールズバー経営者は言う。

「池袋も歌舞伎町と同じで、ガールズバーのコンカフェ化は進んでいますね。客が『財布を持ってない』と言い出して警察を呼ぶようなことはあっても、さすがに暴行とか殺傷事件まで発展したのは聞いたことないですね」

とはいえ、従業員の女性たちの中には、やはり危険な目に遭いかけた方はいるようだ。西池袋のガルバ店長の女性は「常連客でも痛客はいます」と笑う。

「もう3年前からの常連さんなんですけど。その方は最初月1ペースで来ては20、30万くらい使ってくれて、いい人だったのですが、痛LINEを送ってきたりストーカー化したりと大変でした。

最終的には私が昼職を辞めた時に『なんで俺に相談せず辞めたの? ありえない』と怒られました。今でも3、4ヶ月に1回くらいは来て『俺はお前のよき相談相手』みたいに勝手に思い込んでますね。お客様は嬢よりも上位に立ちたいんでしょうね」

また、同店で勤務する従業員女性は、今回の浜松の事件を知り、こんな違和感を覚えたようだ。

「今回の事件で捕まった男性って結構、ヤカラ系じゃないですか。

うちにもそういうお客さんはよくきますけど、『本命は六本木、銀座だからさ、ここじゃそんな使えないわ』と言いながらも、十万単位でお金を落としてくれるんでありがたいですよ。

ヤカラ系のお客様はガルバやコンカフェは軽く見てるフシがありまして(笑)。うち的には軽く見られようが、下に見られようが1日10万も落としてくれたらありがたいんで、全然いいんですけどね。ヤカラよりも怖いのは一見普通に見えるガチ恋客ですね」

ガルバやコンカフェは基本的には客の隣には座らず、カウンター越しかテーブル越しの接客で“お触りはNG”だ。だがこんな暴挙に出る客もいるのだという。池袋で客引きをしていた女性従業員は言う。

「1日10万くらい使ってくれる太客様は『金払ってるんだから、何してもいいでしょ』と、手をなめてきたり、キスしようとしてくることもあります。あと、お客様に大学を特定されたことも。ラウンジやキャバクラと違って、コンカフェやガルバは低価格で飲める場だから、そこで働く女性はなめられがちなんですかね。勘弁してほしいです」

低価格で楽しめるありがたい接客業に従事する女性への嫌がらせや過剰な付きまといをする男性客が一人でも減ることを願いたい。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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