テレビはまだまだトガっている。心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。
「鈴木福×あのちゃん」強烈タッグの実写ドラマ
木曜深夜が不穏だ。あの“福くん”が、“あのちゃん”に服を脱がされ、パンツ一丁にされたかと思えば、無理やり女子の体操服を着させられて馬乗りされている。
それが終わると、続いて始まったドラマでは、ろうそくを手にして立っている原菜乃華の前で、半裸の男がひれ伏して拝んでいる。
前者は『惡の華』、後者は『るなしい』。ともにカルト的人気を誇る同名マンガを原作とした実写ドラマだ。木曜深夜のテレビ東京で、これらが連続して放送されている。原作を知る者であれば、それがいかに挑戦的で“狂っている”かがわかるだろう。
「この物語を今思春期に苛まれているすべての少年少女へ そして思春期に苛まれたかつての少年少女たちへ捧げます」
冒頭、そんなテロップが表示されて始まる『惡の華』は、これまでアニメ化や実写映画化もされてきた名作だ。今回、主人公・春日高男を演じているのが鈴木福、そして仲村佐和に扮したのが、あのだ。
春日は、ボードレールの詩集『惡の華』を愛読する文学少年。
「ああ、ボードレールよ。僕は閉じ込められている。
ある日の放課後、春日は本を学校に忘れたことに気づき、教室に戻る。そこで「佐伯」の名が書かれた体操着袋を見つけてしまう。
「バカ、何考えてんだ俺。佐伯さんへの思いは、純潔だ。清らかなんだ。邪な感情なんて、一切、全く……あるわけない。いかがわしい欲望なんて、絶対に。絶対に。絶対に!」
しかし、物音に驚いた彼は、それを持ったまま逃げ帰ってしまう。
「違う、違う。
罪悪感に苛まれ、おどおどと怯える思春期の少年。その葛藤を、鈴木福がこれほどまでに体現するとは予想以上だった。僕らは幼い頃の彼の姿を知っているからこそ、なんだか余計に背徳感を覚えてしまう。
「俺は罪人だ。遠くへ行きたい」
「私ね、見てたんだよ。春日くんが、佐伯さんの体操着、盗むところ」
思い悩む春日の前に、仲村が現れる。
「春日くん。私ね、見てたんだよ。春日くんが、佐伯さんの体操着、盗むところ」
あのもまた、無表情で何を考えているかわからない仲村像に見事にハマっている。仲村は春日を図書館に呼び出し、「今の気持ち」を作文に書いてくるよう要求する。
作文の代わりに「誰もが隠し持ってる悪意を、ありのまま全部書いてある」と『惡の華』を渡す春日に、仲村は「黙れ、クソムシ!」と一喝。
「私は、ぐわーっと!ぐわーっと!春日くんのそのまんまが出た、ぐっちゃぐちゃの作文が読みたかったの。(略)ズブズブのド変態でしょ、春日くんは」
そうして冒頭に引いた場面へと至る。佐伯の体操着を着た春日に馬乗りになった仲村は言う。
「この姿が本当の春日くんでしょ?」
バラさないであげると告げた後、不敵な表情で続けた。
「私と契約しよう」
なんとも不穏でゾクゾクする、完璧な第1話だった。
その直後に放送された『るなしい』では、ひれ伏す「信者」を前に、原菜乃華演じる郷田るなが、同級生の成瀬健章=ケンショー(窪塚愛流)に言い放つ。
「前にビジネスやりたいって言ってたでしょ? うちみたいな信者ビジネスでよければ、いつでも教えるよ」
『惡の華』よりも1週早く始まった『るなしい』は「宗教」、それも「信者ビジネス」という危ういテーマに踏み込んだ作品だ。素朴さを持ちながらもミステリアスな雰囲気を纏う原菜乃華は、まさにベストキャストと言える。
主人公のるなは「火神の子」として育てられ、学校では「宗教の人」と蔑まれるイジメの対象。プールの授業の後には、下着が黒板に貼り付けられてしまう。
それでも唯一の理解者である幼なじみのスバル(本島純政)の助けで、部活内で希望者にお灸を施す“ビジネス”をしているうちに少しずつ明るさを取り戻していく。
教祖様JKが恋をしてしまった……
そんなときに出会ったのがケンショーだった。彼は、時計に張り付けられた下着をさらっと取ってくれた。その瞬間、るなは恋に落ちる。
だが、彼女は恋愛を禁じられている。恋をすれば「火神」が怒ってしまう。そうすれば「神の子」ではいられなくなり、信者が路頭に迷いかねない。
「それが私の使命だから」
そう語る彼女に対し、不審がるどころか「カッケー」と言うケンショー。
「普通の幸せとか、その気になりゃ手に入れられるのに、そういう生まれた時から与えられた使命、守り続けてきたんでしょ」
自分もそういう「カッケー」人間になりたい。自分の家は貧乏だけど、その境遇を恨むのではなく、自分のビジネスを立ち上げて母を楽にさせてあげたいと目を輝かせるのだ。
すっかり彼に心を奪われた彼女は、眼鏡を外し、コンタクトとメイクをし始め、ついには、ケンショーに告白する。
「神の子はどうすんの?」と尋ねるケンショーに「なんとかなる」と言うるな。それを聞いたケンショーは失望した様子で吐き捨てた。
「ダッサ」
そうして振られたるなは、ケンショーに「信者ビジネス」を教え、火神に心酔・依存させ、自分にひれ伏させる「復讐」を計画し、実行していくのだ。
『惡の華』も『るなしい』も、一筋縄ではいかないイビツな物語だ。“普通”の倫理観を逸脱し、善悪の境界線を激しく揺さぶってくる。これぞ深夜ドラマ。
誰もが心に抱える「思春期」を刺激し、甘美な“トラウマ”を植え付けてくれるに違いない。
文/戸部田誠(てれびのスキマ)

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