〈ディズニーランド最高1万900円、10月には1万2400円の日も〉「暑い」「高い」で夢の国がガラガラ!?  夏休みのパークで見た「昼は屋内、夜から本気」の実態
〈ディズニーランド最高1万900円、10月には1万2400円の日も〉「暑い」「高い」で夢の国がガラガラ!? 夏休みのパークで見た「昼は屋内、夜から本気」の実態

暑い日が続いた今年の夏、SNSでは「ディズニーがガラガラらしい」という投稿がたびたび話題になった。度重なる値上げで1デーパスポートは最高1万900円。

「暑い」「高い」のダブルパンチで、“夢の国”から人が消えてしまったのか。実態を確かめるべく、8月の平日、東京ディズニーランドを訪れた。

昼のパークは「外はまばら、屋内はぎゅうぎゅう」

舞浜駅に降り立ったのは午前10時過ぎ。電車を降りた瞬間、ホームに立ちこめる熱気に思わずひるむ。この日も朝から厳しい暑さだった。

それでも夏休み真っただ中の平日である。それなりの人出を覚悟していたが、改札を抜けたあとの人の流れは思いのほか少ない。

日傘とハンディファンで完全防備した若い女性グループがちらほらと目立つ程度で、ピーカンの青空の下、エントランスの手荷物検査もほとんど並ばずに通過できた。たしかに、この時点では「ガラガラ」という言葉が頭をよぎる。

しかし、入園してみると、印象は少し変わった。まず目についたのは、日なたと日陰の極端な“人口密度の差”だ。シンデレラ城前の広場やパレードルート沿いなど、日差しを遮るもののない場所は驚くほど人がまばら。ベンチに座る人すらほとんどいない。

一方、屋根に覆われたワールドバザールに足を踏み入れると、景色は一変する。通路は人でごった返し、土産物店の中は、商品を選ぶ客と明らかに涼みに来た客とで身動きが取りづらいほどの混雑だ。

店を出たアーケードの下では、持参した折りたたみ椅子を広げて休む家族連れの姿もあった。冷房の効いた店内と日陰のアーケードが、事実上の「避難所」になっているのである。

屋内アトラクションにも人が集中する。普段は待ち時間がほとんどないようなシアター系のアトラクションにも10分前後の列ができており、「みんな屋内に逃げ込んでいる」という印象を受けた。

逆に言えば、炎天下の屋外に限れば、確かにガラガラに見える瞬間はあり、「ディズニーがガラガラ」という印象になるのも無理はない。

「日中いかに外に出ないか」情報格差と、西日と、課金と

では、実際に来ている人たちは、この暑さとどう付き合っているのか。むかし年間パスポートを持っていたディズニーファンの20代女性はこう話す。

「日中は、いかに外にいないルートで回れるかが勝負。屋内のアトラクションやショー、レストランをうまくつないで、一番暑い時間帯をやり過ごします。

スマホを駆使してそういう回り方を知っているかどうかで快適さが全然違うので、完全に“情報格差”があると思います。何も知らずに来ると、炎天下で並び続けることになるので」

さらにこう続けた。

「夕方になっても油断できません。西日が本当にきついんですよ。日が傾いてからのほうがつらい場所もあるくらいで。あと、待ち時間を短くしようと思うと、結局プレミアアクセスに頼ることになる。1回2000円とかするので、正直“課金ゲー”だなって(笑)」

プレミアアクセスとは「ディズニー・プレミアアクセス」のことで、対象アトラクションやパレードなどを指定した時間に利用・鑑賞できる有料サービスである。仮に1回2000円のプレミアアクセスを家族4人が1人2回ずつ使えば、それだけで1万6000円だ。

これはチケット代とは別の追加出費であり、飲食や土産代も含めれば、使い方によっては家族4人で1日の出費が10万円近くになるケースもある。「高い」と言われるゆえんである。

炎天下のパレード待ちも過酷だ。後方の視界を遮らないよう日傘を畳んで待つ人も多く、アスファルトの照り返しに耐えながらの場所取りは、見ているだけで体力を削られる。

キャストが「水分補給をお願いします」と繰り返し声をかけて回る姿も、真夏のパークの日常風景になっていた。

来園者の側も無防備ではない。

凍らせたペットボトルに保冷バッグ、首掛けの扇風機に冷感タオルと、装備はさながら真夏の野外フェスだ。それでも正午前後の日なたは、対策をしてなお長居できる環境ではない。

「暑いから行かない」ではなく「暑いから昼は外に出ない」。それが、今のパークを回るひとつの攻略法のようだ。

夕方から人が増えてくる「夜型パーク」

変化が訪れたのは15時過ぎ。午後から入園できる「アフター3サマーパスポート」の入園が始まると、エントランスから続々と人が流れ込んでくる。

さらに17時からの「アフター5サマーパスポート」の入園時間を過ぎると、園内の人口密度は昼間とは別物になった。

日が沈んで暑さがわずかに和らぐと、それまで屋内にこもっていた人たちも一斉に外へ出てくる。昼間はまばらだったシンデレラ城前の広場にも、写真を撮る人の輪がいくつもできていた。

夜のパレードの時間帯にはルート沿いに幾重もの人垣ができ、「ガラガラ」の面影はもうどこにもない。閉園間際のワールドバザールの土産物店にはレジ待ちの長い列ができ、帰りの舞浜駅のホームも混雑していた。

日没後も蒸し暑さは残っていたが、昼間の強烈な日差しに比べれば快適に感じられる。

少なくともこの日の園内を見る限り、客が消えたというより、来園者が暑さを避けながら時間帯を選んで動いているように見えた。

午後から入園できるチケットも用意されており、「昼の屋外はガラガラに見えるのに、夜になると混雑する」という奇妙なコントラストは、猛暑への合理的な適応の結果ともいえそうだ。

1デーパスポートは10月に最高1万2400円へ

そして、気になるのはやはり価格だ。

東京ディズニーリゾートは2021年3月から、日付によって価格が変わる変動価格制を導入している。1デーパスポート(大人)の上限は現在1万900円だが、10月10日には1万1900円、翌11日には1万2400円の日が登場する。

1983年の開園当初、パスポートが3900円だったことを思えば、最高価格は約3倍の水準となる。「高い」のハードルは、この秋さらに一段上がることになる。

かつて販売されていた年間パスポートも、コロナ禍の2020年以降、販売休止が続いており、現在も再開の予定は公表されていない。

一方、この夏は15時、17時から入園できる午後入園チケットが販売されている。1デーパスポートより安く、日中の厳しい暑さを避けやすいことも、夕方から人が増える一因なのかもしれない。

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、コロナ禍以降の中期経営計画で、1日当たりの入園者数上限をコロナ前より引き下げる一方、ゲスト1人当たりの売上高を高め、収益性を向上させてきたと説明する。現在は入園者数そのものをさらに伸ばす方針も掲げている。

「安くたくさん入れる」時代から、チケットの価格や来園時間、パーク内でのお金の使い方まで、来園者自身がより細かく選ぶ時代へ。

真夏の閑散とした昼の風景は、そんな変化を象徴しているようにも見える。

「暑い」「高い」で客足が遠のいたかに見える夢の国。しかし少なくとも取材日のパークでは、猛暑と値上げに向き合う来園者たちが、時間帯とお金の使いどころをシビアに見極める「夜型・攻略型」の楽しみ方をしていた。

昼間の炎天下だけを切り取れば、確かにパークはガラガラに見える。ただし日が沈めば、夢の国はいつも通りの熱気を取り戻す。チケットの値段と同じく、その熱は当分、下がりそうにない。

取材・文/山口真央

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