ここ最近、マーリンズのイチローが好調だ。ここ2試合は連続でノーヒットが続いたものの、ここまでの打率は.357と全盛期を彷彿とさせる好成績を残している。

今シーズンのイチロー、打撃の調子が良いために出塁する機会も多い。そして塁に出たイチローを見ていると、ある点に気づく。それは相手投手が「イチローをかなり警戒している」ということだ。

相手投手がイチローを警戒する理由


相手投手は1塁ランナーとしてイチローが出塁すると、何度も牽制をしたり、イチローの動きが気になってプレートを外したりとせわしない。2013年サイヤング賞投手のマックス・シャーザーも今シーズン、イチローの動きを警戒しまくった結果、後続に痛打を浴びて負け投手になっている。(4/21 MIA対WSH戦)

これほどまでに相手投手が走者・イチローを警戒するのには、はっきりした理由がある。それはずばり、イチローは「リードの大きさがメジャー1位」だからだ。


「リードは小さく」だったイチローの盗塁哲学


しかしこれに疑問を唱える人も多いだろう。というもの、イチローはこれまでリードは大きく取らないという盗塁哲学であった。それは2008年に放送された『イチ流』ではっきり明言している。
同番組によると、「出来るだけリードは大きくっていうのは基本とされることが多いですけど、僕はそれをしない」と語るイチロー。その理由を問われると、リードが大きすぎると、牽制を恐れるあまり、1塁に戻る意識に比重がいくからだという。

確かに分かりやすい例では、2012年に東京ドームで行われた試合(当時イチローはマリナーズ所属)などを見てみると、確かにリードは小さめであることがわかる。
イチローのリードは、東京ドームのアンツーカー(ベースの周りを土で囲んだ部分)をわずかに片足が跨ぐ程度。
アンツーカーの半径が約3.9mなので、リードの大きさは3.5m弱といったところだろうか。

メジャーでも断トツ! イチローのリード幅


しかし、ここ最近のイチローはとにかくリードが大きい。この事実は、昨年9月に公開されたアメリカのスポーツサイト『grantland』の記事が明確な数値に基づいて説明している。
この記事によると、イチローはメジャーの中でもトップとなる約4mのリード幅を記録。これは2位の選手を約18cm弱も引き離す断トツの数字なのである。

つまり現在では、アンツーカーを完全に両足で跨ぐほどまでリードを取っていることになるイチロー。
メジャーはプロ野球と比べて投手の牽制ルールがぬるいこと、そしてイチローが42歳という年齢であることを考えると、いかに驚異的な事実であるかがわかるだろう。

走塁面ではこの他にも、マーリンズに移籍後、オリックス時代から長年愛用していたアシックスのスパイクを変え、新しいスパイクを愛用するようになった。また、打撃面でも、全盛期のようなボール球も積極的に打ちにいくスタイルから、今期はボールを見極めて甘い球をしっかり叩くことを意識しているようにも思える。
このような変化を恐れず、つねにプレー向上をするための意欲が、「レジェンド」とも称される成績を残せた理由のひとつであることは間違いない。

※イメージ画像はamazonよりNumber(ナンバー)876号 イチロー主義 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー))