連載開始から25年以上に渡って、ファンを魅了し続けるマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』。ウルトラジャンプでは第8部『ジョジョリオン』を連載中であり、第4部『ダイヤモンドは砕けない』が20年以上の時を越えてアニメ化されるなど、その勢いは留まることを知らない。


「スタンド」のルーツが「守護霊」にあるように、超常現象が当たり前の世界観だが、作者の荒木飛呂彦自身は“霊的なもの”をどうとらえているのだろうか?
2002年末に発行された集英社『mangaオモ!』というムックでは、異常に興味はあるが自身に霊感はないと断言した上で、ひょっとしたら……という経験が3回あったと語っている。

うろつくだけの女性の幽霊


ひとつ目は、イギリスのエジンバラのホテルで女性の幽霊を見た話。
荒木先生が夜中に目を覚ますと外人の女性がベッドの周りをうろついていたが、取材で疲労困憊だったために「面倒くさいなぁ、眠いのに」と思ったら、その途端に部屋から出ていったそう。
「バ…バカな… か…簡単すぎる… あっけなさすぎる…」と花京院が絶句してしまいそうなほどに簡素なエピソードである。

写真に写った老人の幽霊


続いては、仕事場のキッチンで老人の幽霊が出た話。
おもに深夜、荒木先生がひとりで仕事をしていると食器がカチャカチャ鳴る音や、誰もいないのに水道がビチャビチャ流れる音がする。といっても、姿を見たわけではない。
ではなぜ老人だとわかったのか?なんと、たまたま撮った写真に写っていたのだ。

「リビング(仕事机のある場所)に入って来たら、神主呼んでお祓いしてもらうぞ」と、幽霊に告げたところ、その幽霊は数年間に渡って台所限定で住み着くことに。

ジョジョ第4部の『写真のおやじ』のスタンド『アトム・ハート・ファーザー』の発想の原点だろうか?
しかし、気が変わった荒木先生、結局神主を呼んでお祓いをしてしまい、以来、幽霊は出なくなったそう。ジョルノ・ジョバーナばりに「スマン ありゃウソだった」といったところだろうか……。

お茶をかけようとする!? 和服の幽霊


最後は、温泉旅館に和服の女性の幽霊が出た話。
荒木先生が夜中に目を覚ますと、30歳ぐらいの女性が背を向ける形でテーブルの上でポットからお茶をついでいた。仲居さんだと思い「何をしてるんですか?」と尋ねると……布団の上に後ろ向きのままジャンプして飛び乗って来たそうだ。

荒木絵で脳内補完すると異常に怖いッ!『岸辺露伴は動かない』に出てきそうなエピソードだ。

ここで、ようやく幽霊かもと思った先生は、金縛り状態の中で幽霊が布団の上を這い上がってくるのを実感する。顔を見えないが、手に急須を持っているのを確認すると、「まさか、もしかして、お茶をぼくの顔にかけようとしているのか?」と思い、途端に怒りがわいてきたそうだ。
これにより「なめられるとキレる性格」に気付いた先生は、力の限りに布団を掴むと部屋中で振り回して暴れまわったという。
ジョジョにはアレッシー、フーゴ、ギアッチョなど、「なめられるとキレる性格」のキャラが多いのも納得である。
電気を付けると幽霊が消え、テーブルの下に落ちた急須からは冷たいお茶がこぼれていたという。


「『マンガ』とは想像や空想で描かれていると思われがちだが実は違う!自分の見た事や体験した事 感動した事を描いてこそおもしろくなるんだ!」
荒木先生の分身ともいえるキャラクター、岸辺露伴の名言だ。
幽霊にせよ幻覚にせよ、そこに「リアリティ」があれば、荒木先生的には問題ないようである。
(バーグマン田形)

※イメージ画像はamazonよりジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない 総集編 Vol.1 (集英社マンガ総集編シリーズ)