Windows95が発売された1995年、日本は本格的なインターネット時代に突入した。それはバブル崩壊により、業績が低迷していた国内家電業界にとって千載一遇の好機といえた。
そんな中にあって、当時パソコンの国内シェア2位グループにつけていた富士通は、一つの秘策を掲げ、首位のNECに挑んだ。その秘策とはいわば、「おじさん攻略作戦」。イメージキャラクターに起用されたのは名優・高倉健だった。
インターネット普及期以前のパソコンのテレビCMと言うと、ソニーHitBitの松田聖子や富士通FMシリーズの南野陽子など女性アイドルが定番だった。まずパソコンの魅力に飛びついたのが学生や若手サラリーマンが中心だったわけだから、至極自然な流れといえる。
しかし1994年頃から、パソコンはAV機器などに取って代わる普及家電の切り札と目されるようになった。
そこで富士通が狙いを定めたのが中高年層。男女問わずミドル層憧れのスターである高倉健は、うってつけのキャラと言えた。なにしろ、高倉健の決め台詞といえば「不器用ですから」。そんな健さんでもパソコンを使っている絵を見せられれば、「自分にも使えそう」とおじさんたちの心は掻き立てられないわけがない、というわけだ。
富士通のこの狙いは見事にヒット。健さんといえばFMVのというイメージは瞬く間に浸透した。
当初のCMは高倉健が一人パソコンに向かい呟くといったパターンが基本だったが、「幸福の黄色いハンカチ」や「駅 STATION」などでの名コンビを組んだ倍賞千恵子や、当時若手有望格として売っていた田中麗奈らと共演するCMも登場。
撮影の合間の団らんを思わせるような粋な演出が目を引き、単なるパソコンCMを通り越した作品へと昇華した感さえあった。
さらに富士通はもう一人、オリジナルのおじさんキャラを使い、ライバルNECの牙城を崩しにかかった。そのキャラとは、「タッチおじさん」だ。加藤茶を彷彿とさせる腹巻きにステテコ、髪の毛1本、声の主には“アホの坂田”ことコメディNo.1の坂田利夫を起用。パソコンの大衆化を定着させる一助になった。
高倉健を起用した硬派からの攻めと、タッチおじさんにするやわらか志向からの攻め。おじさん層をねらった富士通による二面攻勢は見事に奏功した。これに対してトップメーカーのNECは、今ではすっかりお馴染みのキャラクター「バザールでござーる」を登場させ、富士通との熾烈なライバル争いを展開したのだった。
(足立謙二)
※イメージ画像はamazonより高倉健 Blu-ray COLLECTION BOX
そんな中にあって、当時パソコンの国内シェア2位グループにつけていた富士通は、一つの秘策を掲げ、首位のNECに挑んだ。その秘策とはいわば、「おじさん攻略作戦」。イメージキャラクターに起用されたのは名優・高倉健だった。
パソコンCM=アイドルだった時代
インターネット普及期以前のパソコンのテレビCMと言うと、ソニーHitBitの松田聖子や富士通FMシリーズの南野陽子など女性アイドルが定番だった。まずパソコンの魅力に飛びついたのが学生や若手サラリーマンが中心だったわけだから、至極自然な流れといえる。
しかし1994年頃から、パソコンはAV機器などに取って代わる普及家電の切り札と目されるようになった。
そこで富士通が狙いを定めたのが中高年層。男女問わずミドル層憧れのスターである高倉健は、うってつけのキャラと言えた。なにしろ、高倉健の決め台詞といえば「不器用ですから」。そんな健さんでもパソコンを使っている絵を見せられれば、「自分にも使えそう」とおじさんたちの心は掻き立てられないわけがない、というわけだ。
映画を思わせる名作CMも登場
富士通のこの狙いは見事にヒット。健さんといえばFMVのというイメージは瞬く間に浸透した。
当初のCMは高倉健が一人パソコンに向かい呟くといったパターンが基本だったが、「幸福の黄色いハンカチ」や「駅 STATION」などでの名コンビを組んだ倍賞千恵子や、当時若手有望格として売っていた田中麗奈らと共演するCMも登場。
撮影の合間の団らんを思わせるような粋な演出が目を引き、単なるパソコンCMを通り越した作品へと昇華した感さえあった。
やわらか系キャラ、タッチおじさんも人気に
さらに富士通はもう一人、オリジナルのおじさんキャラを使い、ライバルNECの牙城を崩しにかかった。そのキャラとは、「タッチおじさん」だ。加藤茶を彷彿とさせる腹巻きにステテコ、髪の毛1本、声の主には“アホの坂田”ことコメディNo.1の坂田利夫を起用。パソコンの大衆化を定着させる一助になった。
高倉健を起用した硬派からの攻めと、タッチおじさんにするやわらか志向からの攻め。おじさん層をねらった富士通による二面攻勢は見事に奏功した。これに対してトップメーカーのNECは、今ではすっかりお馴染みのキャラクター「バザールでござーる」を登場させ、富士通との熾烈なライバル争いを展開したのだった。
(足立謙二)
※イメージ画像はamazonより高倉健 Blu-ray COLLECTION BOX
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