1996年、日本で「パーフェクTV!(現スカパー!)」の放送が始まった。本放送開始の時点で70ものチャンネルがラインナップ。
様々な趣味や嗜好に応えてくれる多チャンネル放送時代の幕開けである。
その中に今も人気を集める「ファミリー劇場」があった。懐かしのテレビドラマ、アニメ、特撮などを取り扱う、昭和世代には特にたまらないチャンネルだ。

昭和大好きなアラフォー筆者は、子どもの頃夢中になった番組目当てで早速加入したが、むしろ初めて観る番組の方が圧倒的に多く、その幅広すぎるラインナップに魅了されたものである。
初期の頃は特にマニアックな作品がラインナップされており、「?」と思う作品に出会うこともしばしば。中でも、インパクトがありすぎた特撮番組のことが忘れられない。


毎日5分の特撮番組をファミリー劇場で一挙放送!


それが2001年に放送された『行け!ゴッドマン』。
元々は72年から1年間に渡って、日本テレビ系の子ども番組『おはよう!こどもショー』内で放送されていた5分枠の特撮ドラマ。月~土曜に放送されており、3日分または6日分でひとつの話となる構成だったものを、ファミリー劇場ではひとつの話ごとまとめて再放送している。

大ぶりのサングラス状のゴーグル、銀色の長い髪に真紅のボディのゴッドマン。マスク姿で髪の毛があるデザインは、当時としてはかなり斬新。「ゴッドマン 拡・大(かく~・だい)!」と言う、どストレートな掛け声で巨大化できるので、怪人・怪獣とマルチに対応できる便利なキャラである。

チープなアクションと残虐ファイト! ヒーローらしくないゴッドマン


ストーリーやドラマ性はほとんどなく、ゴッドマンと怪人・怪獣とのバトルシーンのみを延々と繰り広げるのが特徴だが、その肝心のアクションがチープだから手に負えない。

「ドガッ!」「バキッ!」などの派手な効果音に伴わないパンチや蹴り、力がまったく入ってない投げなど、キレのないアクションを終始展開。
後半明らかにスタミナが切れたりするので、別の意味でハラハラする緊張感は味わえるのであるが。
それどころか、怪人同士の仲間割れの隙を突いて殴り掛かる、股間目掛けて蹴りを入れる、車のドアに相手をはさむ、ダウンした怪人に往復ビンタをかますなど、ファイトスタイルはまさにヒール(悪役)!

鋭いトゲがビッシリ付いた「モーニングスター」的な鉄球をブンブン振り回して敵を乱打する姿は、もはやどっちが悪か分からないほど。(しかも、脳天をカチ割って止めを刺すことも)
怪獣に対して命乞いをしたり、逃げる怪人に後ろから必殺の「ゴッドマン超音波」を浴びせ、爆殺するなど、あまりになりふり構わない姿勢もヒーロー物としては斬新すぎるのである。

ゴッドマンの大ピンチが翌日にはなかったことに!?


制作元が東宝だった関係上、往年の怪獣映画で活躍した着ぐるみも登場していたが、オリジナル怪人・怪獣は造形もチープそのもの。ドンキホーテで一式揃いそうな佇まいの怪人が、普通に拳銃を武器にするのはどうにかならなかったのだろうか。

全体的にかなり雑な作りであり、怪獣が毒ガスを吐いてもまったく見当違いの方向に飛んでしまったままで修正なし。
それどころか、コスチュームの隙間から「中身」まで見えてしまう始末。子どもたちも飾らなすぎる棒演技で、まさに学芸会レベルだ。

何より衝撃的だったのが、ゴッドマンがピンチに追い込まれた状態で終わったのに、次の回では何事もなかったかの様にリセットされ、仕切り直して始まることが何度もあること。
視聴者は、『ジョジョ』5部のラスボスのスタンド「キング・クリムゾン」の“時を消し飛ばす能力”を味わうのであった……。

水木一郎が歌う主題歌(なぜかクレジット名は山本一郎)も、熱唱むなしく歌詞自体は2、3分で思いついたかのような圧巻の低クオリティ。
「SOS」をやたら連呼しているが、これは現場スタッフの心の叫びとしか思えないのであった。


※文中の画像はamazonより行け!ゴッドマン [DVD]