
JR西日本、北陸本線の「筒石」駅は全国に数えるほどしか無い「トンネルの中にある駅」です。
日本海に面した漁港の町、筒石。国道から細い道をくねくねと山中に向かってのぼって行き、人家も途絶えたあたりにぽつりと駅はあります。以前は集落の中にあったのですが、災害に備えて長大トンネルを掘り、山の中に線路を移したときに駅も移動したのです。
おかげで(?)ちょっとスゴイことになってしまいました。
電車の停まるホームは、全長11キロもあるトンネルの中。そこに向かうためには、地上の駅舎から、実に300段近い階段を下っていかなくてはいけません。エスカレータや、エレベータはありません。階段のみ。
コンクリートで包まれた通路は夏でもひんやりと冷たく、どんどん「もぐっていく」ような感覚に襲われます。
ようやくたどり着いたホームは、薄暗く、しかも狭い。
トンネルの中でぽつり、列車を待っていると、ずっとこのまま列車は来ないんじゃないか、私はここに取り残されてしまうんじゃないかってな被害妄想にふけってしまったりするんですが。
もちろんそんなことはなく、列車の到着時刻が迫ると、じわりじわりと轟音がやってきます。「日本の鉄道は時間に正確で、スゴイなあ」という日ごろアタリマエに感じていることを再認識したりして。
暗闇に手を差し伸べる灯台のような列車の雰囲気は妙に「安心感」を感じさせてくれます。
実は、この筒石駅で圧巻なのは特急列車の通過時です。なにせ踏み切りも無く、ほぼ直線のトンネル内ですから、相当な速度(130キロ)でぶっちぎっています。まさに、「空気を切り裂いている」感覚です。想像以上に激しく揺さぶられ、どこかにつかまっていないと飛ばされてしまいそうになるのです。ホームには必ず駅員さんがいてくださいますが、くれぐれもご注意を。
しかし、駅員さんは列車通過や到着時にホームまでわざわざ降りていくのです。