
そこでオススメなのが、ムーミン童話。
例えば、荒れ狂う嵐の海を流されてきたムーミンママをムーミンパパが助けるという、2人の強引な出会いのシチュエーション(これぞ運命的ともいう)も強烈なのだけど、なんといっても、ちびのミィとスナフキンが異父姉弟だったことには驚いた。
ミィが、子だくさんミムラの娘だというのは、その容姿だけみてもわかるのだが、スナフキンまで……? その答えは3巻目「ムーミンパパの思い出」にあった。ミムラとスナフキンの父ヨクサルとの関係が明かされているのだ。ちなみにミィの父親は不明。見た目からすると、小さなミィが妹のような気がしてしまうのだが、順番から考えると姉ということになる。しかも、ミィはやがてムーミン一家の養女になっている……これは相関図が必要なくらい、けっこう複雑だ。 でも「ムーミンパパの思い出」というだけあって、この物語の語り手はムーミンパパ。だから、ここで語られていることすべては、ムーミンパパを信じるかどうかにかかっているかも?!
その他にも、へぇ〜と思ったのは、ムーミンたちのご先祖の存在、それにヘムレンさんが一人ではなかったこと(ヘムルという種族で、いろんなヘムレンさんがいる。ミムラやスノークも同様)。しかも、ヘムレンさんたちは男性もみんなスカートをはいている……。
さらに、ムーミン童話は別巻「小さなトロールと大きな洪水」を含めると全部で9巻あるのだが、最終巻「ムーミン谷の十一月」にはムーミン一家がいっさい登場しない。ムーミン不在のムーミン童話だ。これは読まないとわからない。うーむ、かなり深いです。
ムーミンって、もっとほのぼのしたものじゃなかったっけ? アニメーションでは岸田今日子の声にまやかされていたのだろうか。なんて、きっと自分の記憶が曖昧なだけなんだろうけど、ビックリしてしまった。
ちなみにムーミン谷に学校が存在しないのは、作者のトーベ・ヤンソンが学校嫌いだったからとか。おそらく、ムーミン童話は彼女の私生活を反映しているのだろう。そういうちょっとしたウンチクまでわかると、さらに面白い。9巻すべてを読み通してみると、きっと新しい発見もあるはず!(田辺 香)