ミィはスナフキンの異父姉だった
(上)ムーミン一家不在の物語、「ムーミン谷の十一月」(中)ミィ、小さすぎ!(「ムーミン谷の夏まつり」より)(下)冬にしか登場しないトゥーティッキ(=おしゃまさん)は、作者ヤンソンの親友トゥーリッキ・ピエティラがモデル。(「ムーミン谷の冬」より)© Moomin Characters™
さて、突然ですが、読書の秋です。ということで、たまには子どもの頃に親しんだ児童文学なんかを読んでみるのもいいのでは?

そこでオススメなのが、ムーミン童話。
アニメーションを観て育った世代や、ムーミン童話を読んだことがない人には、とくに新鮮に違いない。というのも、想像以上に複雑な人間(妖精?)関係があって、ストーリー展開もドラマチックで楽しめるのだ。

例えば、荒れ狂う嵐の海を流されてきたムーミンママをムーミンパパが助けるという、2人の強引な出会いのシチュエーション(これぞ運命的ともいう)も強烈なのだけど、なんといっても、ちびのミィとスナフキンが異父姉弟だったことには驚いた。

ミィが、子だくさんミムラの娘だというのは、その容姿だけみてもわかるのだが、スナフキンまで……? その答えは3巻目「ムーミンパパの思い出」にあった。ミムラとスナフキンの父ヨクサルとの関係が明かされているのだ。ちなみにミィの父親は不明。見た目からすると、小さなミィが妹のような気がしてしまうのだが、順番から考えると姉ということになる。しかも、ミィはやがてムーミン一家の養女になっている……これは相関図が必要なくらい、けっこう複雑だ。 でも「ムーミンパパの思い出」というだけあって、この物語の語り手はムーミンパパ。だから、ここで語られていることすべては、ムーミンパパを信じるかどうかにかかっているかも?!

その他にも、へぇ〜と思ったのは、ムーミンたちのご先祖の存在、それにヘムレンさんが一人ではなかったこと(ヘムルという種族で、いろんなヘムレンさんがいる。ミムラやスノークも同様)。しかも、ヘムレンさんたちは男性もみんなスカートをはいている……。


さらに、ムーミン童話は別巻「小さなトロールと大きな洪水」を含めると全部で9巻あるのだが、最終巻「ムーミン谷の十一月」にはムーミン一家がいっさい登場しない。ムーミン不在のムーミン童話だ。これは読まないとわからない。うーむ、かなり深いです。

ムーミンって、もっとほのぼのしたものじゃなかったっけ? アニメーションでは岸田今日子の声にまやかされていたのだろうか。なんて、きっと自分の記憶が曖昧なだけなんだろうけど、ビックリしてしまった。

ちなみにムーミン谷に学校が存在しないのは、作者のトーベ・ヤンソンが学校嫌いだったからとか。おそらく、ムーミン童話は彼女の私生活を反映しているのだろう。そういうちょっとしたウンチクまでわかると、さらに面白い。9巻すべてを読み通してみると、きっと新しい発見もあるはず!(田辺 香)
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