「関西人、納豆を食べない」というのは俗説か
関西のスーパーにおける納豆取り扱い例。案外充実と見るべきか、意外に少ないと見るべきか。
関東の人に、「関西って納豆売ってるの?」と聞かれた事がある。それも1度や2度ではない。

あげく、「関西に出張行く際、納豆を持参した」と言う納豆フリークまでいると聞く。全く失礼な話だ。関西は海外ではない。

しかし本当に関西の人間は、世間で言われているほど納豆を嫌っているのだろうか。「関西=納豆嫌い」とは「大阪=“お笑い芸人”と“怖いひと”だらけ」というような、イメージの産物ではないのか。

気になって関西のスーパーを巡ってみたところ、やはりどこのスーパーでも納豆コーナーが完備。
パック納豆から一つ200円オーバーの割高納豆まで種類も豊富で、非常に売り上げ順調に思われる。
しかし今でこそコーナーを持てるようになった納豆だが、少し前の関西では風聞通りの嫌われ者だった……と、納豆事情に詳しい人は言う。
確かに年配の方に聞くと「子供の時、納豆など見たことがなかった」「納豆は腐った豆だと教えられていた」と、昔は納豆の存在自体が隠蔽されていた様子なのだ。

関西における納豆の売り上げはどんなものなのだろうか。大阪に本社を持つ大豆食品メーカー、旭松食品株式会社に伺ってみた。
すると、「やはり関東に比べ、関西は低いですね。
売り上げの差は倍とは言いませんが、それに近いものがあります」との答えが。

狭い日本だが納豆界の関東・関西には、深い溝がある。その溝とは、ズバリ「匂い」だ。
一般的に関東の人間は納豆の匂いを気にせず、関西の人間はその匂いに敏感であるという。なので旭松食品さんが尽力されているのは、匂いを少しでも抑えるという点。
さらに食べやすさも狙い、この春からは長野、中部、近畿、中四国を中心に「とってもこまか納豆」の販売を開始した。
これはひきわり納豆よりも細かい納豆で、お年寄りでも食べやすい一品だ。これで納豆を苦手とする年配層にも切り込んでいく。

余談だが、旭松食品さんが手がける納豆、「なっとういち」は、名古屋から西にかけては「なっとういち」表記。東に行けば「納豆いち」表記となる。
関東の納豆は本格派、関西の納豆はマイルド派、そのイメージの差で表記も変えているという細やかさだった。
そういった地道な努力・戦略が実を結び、関西における納豆の立場はぐんぐん上昇しているらしい。


実際、納豆の広告が身近となった若い世代は、納豆を嫌わない。30代くらいで抵抗が薄まり、20代になると「毎日食べてる」という人も多いのだという。
納豆に抵抗のない世代が親になれば、その子供世代はますます納豆に慣れ親しむに違いなく、これからは関西=納豆嫌いも俗説となるのかもしれない。

なお、納豆は暖めると匂いがきつくなるため、苦手な人は冷たくして食べると食べやすくなる。
さらにお酢や大根おろしを入れると、匂いや粘りが少なくなるので、苦手な人はぜひチャレンジを。
(のなかなおみ)