近所の路地に、キンモクセイが香る季節になった。
甘く強いあの香り、心地よいものにもかかわらず、一定の年齢以上の人は、とっさにこう言うだろう。
「あ、トイレのニオイ!」
そう、かつてトイレの芳香剤といえば、キンモクセイの香りが当たり前だった。スーパーやドラッグストアの芳香剤売り場には、ラベンダーに森林、レモンなど柑橘系にベリー系、それから「せっけんの香り」など、様々な香りのバリエーションが出ている。それなのに、キンモクセイは、とんと見ない。これは何故なのか。
「消臭力」「消臭ポット」などでおなじみのエステー化学株式会社に聞いた。
「今ほどインフラが進んでいない頃は、汲み取り式のトイレがほとんどで、戸を開けたら倒れそうな悪臭を放つトイレというのも多かったんです。そのニオイを消すためには、悪いニオイに負けない、より強い香りが必要でした。それが、甘めでかつしっかりした香りのキンモクセイだったんです」
と、開発企画グループの前田陽介さんは言う。
かつてはトイレの近くにキンモクセイを植える家庭も多かったのだとか。
このキンモクセイの「天下」は、70年代初頭に始まり、90年代前半まで主流だったという。約20年間も「トイレの香り=キンモクセイ」だったわけだから、私たちにしっかりこのイメージが定着しているのもムリはない。
しかし、エステー化学(株)では、キンモクセイの香りは4年前にラインナップから消え、現在では他のメーカーから1種類販売されているだけのよう。なぜ近年、減ってきたのかというと、
「おっしゃる通り、キンモクセイにトイレの香りのイメージが定着しすぎて、反射的にトイレをイメージしてしまうようになったことがあると思います」
とのこと。
さらに、香りの種類が豊富になった理由は、
「嗜好性の多様化に加え、ニオイのモトを化学的に解明できるようになったことで、ニオイをやっつける、消臭技術が発達したこともあります」。
かつては、たとえばニオイが100あるとした場合、それに対し、110のようなより強い香りで打ち負かしてきたのに比べ、消臭技術が発達してからは、100のニオイを20〜30まで抑えた上で、20〜30の香りをかぶせる方向に変わってきたということらしい。…



