
(上)筆者に食いついたヤマビルはこんな奴ら。<br>(中)血がなかなか止まらない。<br>(下)気づかないうちに背中も食われていた
9月、10月と気温の高い日が続いたが、11月となるとさすがに秋本番の感じ。紅葉前線も南下が進んでハイキングにピッタリの季節だが、ちょっと気になることがある。
何のことかと言えば、あのミミズに似た「ヒル」のこと。筆者は3カ月ほど前、千葉県房総半島の山中でこんな体験をした。小雨降る登山道を歩いていると、足もとが何だかムズムズする。不審に思いズボンの裾をめくってみると、靴の上、靴下の上、そして膝下あたりに十匹以上のヒルがいるではないか! 必死の形相で取りまくる。しかし、しばらく歩いて再びズボンをめくると、またもや同じ状態になっているのだ。キョえー! 叫びながら再び取りまくる。こんなことを3度も繰り返してやっと森から抜け出したのだが、その後も血がなかなか止まらず、靴下が真っ赤になってしまった。
ヒルは血を吸うとき、血を固まらせない成分と、モルヒネに似た痛みを感じさせない成分を出すという。アブや蚊と違って、食われてもすぐには気がつかないのだ。いわば「静かな吸血鬼」。近年増えている理由などについて、ヤマビル研究会の谷博士に聞いてみた。
「(ヒルが血を吸う)鹿や猪が増えていることに加えて、里山の手入れが悪くなっているためです」
里山とは、人里に接した山地のこと。里山では炭焼きなどため、自然と共存しながら適度な伐採や手入れがなされてきた。近年、過疎化などで手入れが悪くなり、日当たりが悪くうっそうとなって、湿気を好むヒルの生息に都合がよくなっているという。
ハイキングでヒルに食われないためには、肌を露出しないこと。虫除けスプレーも効果がある。谷博士によると、雨や雨上がりの日が特に危険で、沢筋や谷筋など水分の多い所が危ないそうだ。もし食われてしまったらどうすればいいのか。
「虫除けスプレーをかける、塩をかける、タバコの火をあてるなどして、すぐに取って下さい。ダニと違って、無理やり取っても歯が皮膚に残ってしまう心配はありません」
筆者の経験によると、ヒルは吸引力が非常に強くて素手ではなかなか取れない。直接触れるのは気持ちもよくない。スプレーや塩がない時は、タオルで包んで引っ張るといい。
「季節的には6月の梅雨、9月の秋雨が最も危険です。
被害報告が多いのは神奈川県北西部の丹沢地域など。丹沢に近い八王子アメダスの記録によると、10月後半に最低気温が15℃以上だったのは1日だけ。ひとまず安心してよさそうだ。
ところで、筆者は背中を食われていることに気づかず、ヒルを自宅まで持って帰ってしまった。廊下を這っている血だらけのヒルを見た時は仰天したが、自宅の風呂場などに住み着いてしまう心配はないのか。
「それは心配ないです。例えば畳の上では、数時間でひからびてしまいますから」
ああ、よかった。やっと安心して眠れそうである。
(R&S)
・ヤマビル研究会HP
近年、森に“吸血鬼”が増えているという。
何のことかと言えば、あのミミズに似た「ヒル」のこと。筆者は3カ月ほど前、千葉県房総半島の山中でこんな体験をした。小雨降る登山道を歩いていると、足もとが何だかムズムズする。不審に思いズボンの裾をめくってみると、靴の上、靴下の上、そして膝下あたりに十匹以上のヒルがいるではないか! 必死の形相で取りまくる。しかし、しばらく歩いて再びズボンをめくると、またもや同じ状態になっているのだ。キョえー! 叫びながら再び取りまくる。こんなことを3度も繰り返してやっと森から抜け出したのだが、その後も血がなかなか止まらず、靴下が真っ赤になってしまった。
ヒルは血を吸うとき、血を固まらせない成分と、モルヒネに似た痛みを感じさせない成分を出すという。アブや蚊と違って、食われてもすぐには気がつかないのだ。いわば「静かな吸血鬼」。近年増えている理由などについて、ヤマビル研究会の谷博士に聞いてみた。
「(ヒルが血を吸う)鹿や猪が増えていることに加えて、里山の手入れが悪くなっているためです」
里山とは、人里に接した山地のこと。里山では炭焼きなどため、自然と共存しながら適度な伐採や手入れがなされてきた。近年、過疎化などで手入れが悪くなり、日当たりが悪くうっそうとなって、湿気を好むヒルの生息に都合がよくなっているという。
ハイキングでヒルに食われないためには、肌を露出しないこと。虫除けスプレーも効果がある。谷博士によると、雨や雨上がりの日が特に危険で、沢筋や谷筋など水分の多い所が危ないそうだ。もし食われてしまったらどうすればいいのか。
「虫除けスプレーをかける、塩をかける、タバコの火をあてるなどして、すぐに取って下さい。ダニと違って、無理やり取っても歯が皮膚に残ってしまう心配はありません」
筆者の経験によると、ヒルは吸引力が非常に強くて素手ではなかなか取れない。直接触れるのは気持ちもよくない。スプレーや塩がない時は、タオルで包んで引っ張るといい。
「季節的には6月の梅雨、9月の秋雨が最も危険です。
11月ですか? 気温によります。最低気温が15℃以下になるとヒルは活動が鈍くなります」
被害報告が多いのは神奈川県北西部の丹沢地域など。丹沢に近い八王子アメダスの記録によると、10月後半に最低気温が15℃以上だったのは1日だけ。ひとまず安心してよさそうだ。
ところで、筆者は背中を食われていることに気づかず、ヒルを自宅まで持って帰ってしまった。廊下を這っている血だらけのヒルを見た時は仰天したが、自宅の風呂場などに住み着いてしまう心配はないのか。
「それは心配ないです。例えば畳の上では、数時間でひからびてしまいますから」
ああ、よかった。やっと安心して眠れそうである。
(R&S)
・ヤマビル研究会HP
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