
自分自身、主婦でありながら、こうした本に「こりゃねーよ」と思う部分もときどきあったりするのだが、その不便さのひとつに、「材料」にすべてが書かれていないことがあると思う。
たとえば、材料欄には書かれてないのに、作る手順で唐突に「クッキングペーパーを敷いて○分弱火で焼いて」などと出てくる。
クッキングペーパーやオーブンシートなどは材料欄に書かれていないことが多いので、慌ててスーパーやドラッグストアに走ったことのある人もけっこういるのではないだろうか。
材料欄にはないのに、手順に「ゴマ油を熱したフライパンに入れ」と出てきて、「ゴマ油、切らしてた〜!」みたいなことになる場合もある。
さらに、要注意なのが「あらかじめ○○しておいた」というフレーズ。調理の中盤や後半などで、唐突にソレはあらわれる。
「あらかじめ30分ほど水切りしておいた豆腐を」「あらかじめ皮をむき、茹でておいた○○を」「あらかじめふるっておいた粉を」「あらかじめ混ぜ合わせておいたAの調味料を(中華料理などに特に多い)」「あらかじめ180℃に熱しておいたオーブンを」などなど。けっこう困る。
調理の中盤まできてから、「あらかじめやっておくべきだったこと」を知るから、その後の工程はグチャグチャになっちゃうのだ。
最悪の場合は、「あらかじめ2等分しておいたAの残り半分を○○に入れ」なんてのが突然あらわれ、「え〜っっ! 全部入れちゃったじゃん」→「ええい、他の材料も2倍にしちゃえ!」→もう何が何やら……なんてこともある。これが料理なら、ある程度なんとかなるが、分量を正確に量らないといけないお菓子の場合は、取り返しのつかないことになりがちだ。
どれもこれも、それこそ「あらかじめ」材料も手順も一通り目を通しておくことで防げる失敗ではあるのだが、一般に、レシピの材料だけを見て→冷蔵庫をのぞいて→「これ、今日作れるじゃん!」でスタートしてしまうから、厄介なことになるのだ。
それにしても、なぜこんなわかりにくい記述が多いんでしょう? 料理ムックに携わる編集者に聞いてみると……。
「もともと『粉だったら、あらかじめふるっておくのが当たり前』と思う先生が書くから、そういった表現になることもあるかもしれませんね。また、レイアウトの都合上、材料欄のスペースや、手順の数、文字数などをあらかじめおおまかに決めて、それにあわせてライターが書き起こす場合が多いからでしょうか。材料欄にいちいち『ふるっておく』『水切りしておく』とか書くと、ゴチャゴチャして読みづらいし、手順でも工程が多すぎたり、一文が長すぎると、わかりにくくなるんですよ」
ただし、料理本を出している栄養士さんは言う。
「最近は、男性の料理本や、料理ブログの本などが増えていて、ずいぶんわかりやすくなっていますよ。工程をいろいろ省いて簡略化し、一気に混ぜてレンジでチンなんてのも多いです」
料理本・お菓子本で失敗しがちな人は、まずは作り出す前に一通り目を通しておくこと。また、男性用の料理本やブログ本を参考にするのも良いかもしれません。
(田幸和歌子)