シェフの写真は、どうして腕組みしているの?
絵かきうたでおなじみの「かわいいコックさん」にも、腕組みしてもらいました。
雑誌などでみるシェフの写真って、腕組みをしているものが多いと、思ったことありませんか?
これ、どうしてなんだろう? と、以前からずっと気になっていた。

貫録を出すためのポーズかと思ったけど、社長の写真なんかはPCにむかっていたり、社長椅子に座っている写真が多い気がするし、職人さんは道具など持っているパターンが多い気がするし……。

いったいなぜ?

料理撮影の多い、あるカメラマンに聞くと、
「確かに、腕組みしてもらって撮ることは多いですね。特に指示されるわけではないけど、媒体によって、だいたいパターンが決まってますから」
とのこと。

じゃ、どうして「シェフ=腕組み」がなんとなく定番になっているの? これについては、料理関係のある雑誌編集者は、「テレビ番組の『料理の鉄人』の影響もあるかも」と言う。
ってことは、みんな「料理人」=「『甦れ、アイアンシェフ!』バーン(腕組み)」という連想が働くということ?

だが、食関係の別のカメラマンに聞いてみると、こんな返答があった。
「僕の場合も、確かに腕組みをしてもらって撮ることは多いですけど、それはカメラをのぞいているうちに、どうしてもしまらない感じがしてくるからですね。スーツ姿の人は、腕組みすると、袖にシワが出たり、肩が上がってしまいがちなので、あまり腕組みしてもらいませんが、シェフは襟元が詰まったかたちの白い服を着ているので、手を下におろしていると、バストアップのとき、全体に白くのっぺりした印象になってしまうんです」
つまり、もともと「シェフ=腕組み」として撮っているわけではなく、いろいろ試すうち、おさまりが良いのが腕組みのポーズだったということらしい。

「腕組みしてもらうと、バストアップでちょうど手が写真の下のほうに入る構図になり、アクセントになって、全体がしまるんですよ」
ただし、これは洋食などのシェフに多く、日本料理のシェフには少ないかも……という。
「洋食などは、袖で鍋などをつかめるように、袖が長めにつくられている服の人も多いんですよね。だから、腕を下におろしていると、余計にだらんとしてしまうので、腕組みしてもらいます」

じゃ、道具などを持ってもらって撮るというのは?
「バストアップを撮るときなどは、道具といっても、刃物を持ってもらって撮るわけにいきませんよね? トマトなどをざるに入れて持ってもらうとか、料理のお皿を持ってもらうことはありますけど」
ちなみに、彼の経験上では、フレンチ、イタリアンなどのシェフは「撮られること」に慣れていて、パフォーマンスもポーズもうまい人が多いが、日本料理の料理人は、顔出しを嫌がる人が多いのだそうだ。

腕組みしてるシェフの写真も、みんなそれぞれの事情があるようです。
(田幸和歌子)