ラーメンは米国でも新時代を迎えている。サンフランシスコも、新興ラーメン勢力が勃興している都市の1つだ。
先月19日に、サンフランシスコで「J-POPサミットフェスティバル2014」が行われたが、海外で行われる日本イベントに「酒」「すし」と合わせて、最近は必ず「ラーメン」もプロモーションされるようになった。

今まで海外におけるラーメンといえば、日本より味は劣り、特筆すべき食べ物でもなかった。しかし近年はとんこつを中心に、日本と同等もしくは日本と比べても決して負けないクオリティを提供する店が海外で増えている。

そこで、現地の最新ラーメン事情を、フードコーディネーターであり『地球の歩き方』特派員ブログでサンフランシスコ特派員を務める杉野美穂子さんに聞いてみた。サンフランシスコでも流行の中心はとんこつなのだろうか。

「とんこつです。
今サンフランシスコで、とんこつをメニューに載せていないラーメン屋は(それが店の看板商品でなくとも)私の知る限りはないです。以前からとんこつが、『九州ラーメン』という名前でじわりと浸透してきていたところに、和楽というさまざまな形態で4軒ほど展開しているラーメングループが、一気に広まるきっかけを作りました」

なぜ、とんこつは米国で受け入れられたのか。

「しょうゆ、みそ、塩に米国人が飽きたという面もあると思います。以前私もレストランも営んでいたのですが、しょうゆの味が苦手というお客様も時々いらっしゃいました。そのような彼らにとって、とんこつは新しい味です。また米国人にとって、ラーメンは麺よりスープがメインです。
とんこつは、しょうゆラーメンほど、しょうゆ味は感じませんし、親しみやすかったのではないでしょうか」

前述の「J-POPサミットフェスティバル2014」でも、「ポップ・グルメ・フード・フェスティバル2014」と銘打って、5軒のラーメン屋と、ラーメンの麺を焼いてパテを挟んだラーメンバーガーを扱う1軒が出店した。来場者はかなりの数に上り、肝心のラーメンにありつけなかった人も多かったという。現地の様子はどうだったのか。

「11時のオープン前から長蛇の列ができました。ラーメンの場合は約3時間、ラーメンバーガーは約4時間半待ちました。ラーメンバーガーの待ち時間がより長くなった理由は、麺のバンズを焼いてパテも焼く必要があったので、ラーメンより提供まで時間がかかったためでしょう。
行列への横入りもありましたし、1杯8ドル(約800円)のラーメンに20ドル(約2000円)を渡して、先に並んでいる人に頼み高額で買い取る人もいたくらい、大変な混雑さでした。男女比はほぼ同じで、客層は白人とアジア人が8割で、2割が黒人といった感じでしょうか」

サンフランシスコのラーメンブームをけん引するのはどのような人々か。

「30代くらいがメインで、主にシリコンバレーで働いているIT関係者です。普段、米国人はあまり食べ物にお金を出しませんし、通常、米国におけるラーメンの値段は10ドル(約1000円)を超え、日本のように学生が気軽に食べられる価格帯ではありません。ゆえにお金に少し余裕があり、若めで流行に飛びつく客層がメインになります。コーヒーもサードウェーブがはやっていますが、ラーメンもファッション的な趣がありますね」

まだまだ熱気覚めやらないサンフランシスコのラーメン事情。
しばらくこの流れは続きそうだ。
(加藤亨延)