口の中の水分が持っていかれる食べ物は意外と多い。スコーンやバームクーヘンといった粉物スイーツを始め、堅めに茹でた卵黄や、カボチャなど……。
水なしには食べられない要注意食品達だ。

そのなかでも「きな粉」はワースト1なのではないだろうか。不意に口に入れれば80%以上の確率でムセてしまう(筆者調べ)し、上手く食べられたとしても、きな粉1粒1粒に口内の水分を吸い取られて呼吸困難につながることも。その、恐ろしき食品きな粉が使われているあるモノが、埼玉県の一部地域で学校給食として登場しているというウワサを聞きつけた。

そのあるモノとは……熊谷の銘菓「五家宝」だ。
埼玉県民の給食である、口の中の水分が全て持っていかれるアレを実食
「五家宝」の全長は5センチほど

もち米を水飴で固めたおこしのような中心部に、きな粉がたっーぷりとまぶしてあるのが特徴。
以前あるテレビ番組で、きゃりーぱみゅぱみゅさんが「大好き」と言って紹介したことでも話題となった、「五家宝」。

恐る恐る食べてみることに。
埼玉県民の給食である、口の中の水分が全て持っていかれるアレを実食
埼玉県民はこれを食べて育ったそうだ!? むにゅむにゅの食感

袋をあけると、きな粉の香ばしくて優しい香りが広がる。食べてみると……独特の歯ごたえだ。むにゅむにゅっとしており、食感は「おはぎ」のようでもある。噛む力をスポンジのように吸収してしまうからか、噛む度に時空が歪んだかのように感じてならない。


たっぷりとまぶされているきな粉は、口の中の水分を全て奪って行ってしまうのはもちろん、ノドの奥深くにペタっと張り付いてジタバタ暴れている。なんてわがままなスイーツなんだこと。

小中学校の学校給食に出ていたという埼玉県出身のYさんに話を聞いた。
――「五家宝」が給食に出ていたのは本当ですか?
「はい、給食にでてましたね~。2個くらいでてました。青春時代はこいつに育ててもらったって感じっすね」
――なんと! やはりYさんは「五家宝」が好きなのですか?
「もちろん! 埼玉県民のほとんどが好きなんじゃないですかね? パサっとしてもそこが良いというか……」

「埼玉県民のほとんどが好き」なんて言っちゃて大丈夫なのか……。
とはいえ、少なからずYさんのクラスでは、給食に「五家宝」がでると皆のテンションが少し上がったそうだ。埼玉北部は穀物の生産がさかんできな粉の材料になる大豆も豊富にあるため、もしかしたらこの地域の人びとは、きな粉に耐性があるのかもしれない……!?

さて、気になる「五家宝」の名前の由来については諸説あるようだ。熊谷市の公式見解としては、原料に五穀を使っており、「五穀は家の宝である」という祈りを込めてつけられたとのこと。他には、水戸藩の銘菓「吉原殿中」を元に改良したとする説や下総国五霞村(後の茨城県猿島郡五霞町)で開発されたとする説もあるようだ。

他県の勇者達よ、ぜひ「五家宝」を水なしで味わってみてほしい。
(味噌煮込みウドん)