「魔女」という言葉ほど、人にそれぞれのイメージを喚起させる言葉はない気がする。ある人にとっては戦う美少女であったり、またある人にとってはしわしわの怪しげな老婆であったり、どこか色っぽい存在であったり……。


私が魔女と聞いて思い出すのは、マラソン大会に張り切って参加した知人が、魔女のコスプレをしたおばさんの参加者に軽々と抜かれて圧倒的な敗北感を味わったという、どうでもいい話であるが、それはさておき、常に人々のイメージの源泉であり続ける魔女という存在に、大々的にスポットを当てた展覧会が大阪で始まる。

【魔女にスポットを当てた日本初の大規模展示会】


それは、「魔女の秘密展 ~ベールに包まれた美と異端の真実~」という展覧会で、魔女をテーマにしたここまで大規模な展覧会が開かれるのは日本初の試みだそう。
"火あぶりの刑"も疑似体験できる、「魔女」をテーマにした大展覧会

およそ100点にもなる展示品の数々は、ドイツ「プファルツ歴史博物館」「ローテンブルク中世犯罪博物館」をはじめ、オーストリアやフランスの各美術館・博物館の協力のもと、に公開されるという。その内容は、「絵画やまじない道具、魔女裁判に関する書物や資料、拷問道具」など多岐にわたる。

最後の方にちょっと物騒な言葉が出てきたが……。そう、本展では、魔女が受けた迫害の歴史についても細かく紹介しているのだ。いわゆる「魔女狩り」がヨーロッパで本格化したのは15世紀のこと。
病気や農作物の生育など、人間の力を超えた領域に対して「呪術」的な方法で影響を及ぼすことができるという魔女は、人々にとって脅威だった。

魔女の能力が好意的に捉えられていた時代もあったというが、宗教的な価値観の変化により、その怪しげな存在が一気に排除すべき存在となっていった。これは、魔女という存在が持っていた影響力の裏返しとも言えるかもしれない。「魔女裁判」が行われ、多くの人々が根拠も曖昧なままに裁かれた。その時代を物語るものとして展示されるのは、ドイツ・ローテンブルク中世犯罪博物館から出品される「刺のある椅子」や。「死刑執行人の鉄マスク」など、「実際に使用されたおどろおどろしい品ばかり。

"火あぶりの刑"も疑似体験できる、「魔女」をテーマにした大展覧会
『死刑執行人の鉄マスク』16世紀/ライドナー・コレクション (c)Collection Leidner

"火あぶりの刑"も疑似体験できる、「魔女」をテーマにした大展覧会
『刺(とげ)のある椅子』19世紀/ローテンブルク中世犯罪博物館(ドイツ)(c)The MainichiNewspapers

これらを目の当たりにできるだけでも大変貴重な展示となっている。もちろん、それ以外にも、時代の変遷とともに魔女という存在の受け止められ方がどんな風に変化していったかをじっくりと知ることができそうだ。

【「火あぶりの刑」を体験できる!? 展示の見どころは】


本展を企画された主催者の方に一番の見どころを聞いてみた。
「本展は、ドイツ・オーストリア・フランスの30か所以上の美術館・博物館の『魔女』にまつわる作品を出展し、魔女の歴史と真実に迫る日本初の展覧会です。会場内では、ヨーロッパの魔女が実際に受けたとされる『異端審問』や『火あぶりの刑』を体験することができます。また、現代日本人作家による魔女をテーマに描いたイラストを展示するなど、会期中は、大阪・天保山が“魔女一色”となること間違いなしです!」とのこと。


「魔女の秘密展 ~ベールに包まれた美と異端の真実~」は2015年3月7日から大阪文化館・天保山で開催される。魔女の世界に触れられるまたとないチャンス、ぜひ足を運んでみて欲しい。
(スズキナオ)

魔女の秘密展 ~ベールに包まれた美と異端の真実~
2015年3月7日(土)~ 5月10日(日) 会期中無休
会場:大阪文化館・天保山(海遊館となり)
大阪府大阪市港区海岸通1-5-10