ついに開幕した、北京オリンピック。各競技が続々と始まり、日本人選手の活躍に期待がかかってる。


なかでも注目されてる競技のひとつが、レーザーレーサーの水着でも話題の競泳。北京オリンピック開幕までの日本人金メダリスト数でも、柔道、体操、レスリングに次ぐ4番目で、今回も期待は大きい。
ところで、競泳で行われている泳法は、クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライの4つ。ところがこの中で、クロールだけは独立した競技として行われていない。単独では「自由形」の競技内で泳ぐことになる。

どうしてクロールだけ、独立させてあげられないんだろうか。
「クロール」って種目があったっていいじゃないか。日本水泳連盟に話を伺った。ところが……
「そのことを疑問に思ったことがないので、お答えするのは難しいです」
と担当者。国際水泳連盟で決められた種目だからっていうのが正直なところらしい。ただ考え方としては、
「クロールが現状では一番速い泳法なので、独立させる必要はないと思うんですが……」
とのこと。当たり前っていえば当たり前だけど、このあたりに本質がありそうだ。


歴史を調べたところ、オリンピックの競泳は、もともとすべての泳法で最速を決める自由形しかなかった。1896年に開催された、近代オリンピックの第1回アテネ大会から競泳はあって、そのときの種目は「男子100m自由形」「男子400m自由形」「男子1200m自由形」「男子水夫(水兵)100m自由形」の4つ。そしてこのころから、自由形はクロールが主流だったようだ(ちなみに会場はプールじゃなくて海!)。
その後、1900年のパリ大会で背泳ぎが、1904年のセントルイス大会では平泳ぎが独立。さらに1930年代には、平泳ぎの「うつぶせで、左右の手足の動きが対称」っていう当時のルールから、平泳ぎの種目内でバタフライが編み出され、1956年メルボルン大会からバタフライは独立した。平泳ぎよりも速いバタフライが、平泳ぎの種目を占領していったからだった。


つまり、クロールを独立させてあげられない理由は、こう考えられる。
歴史があるうえ、すべての泳法を含めた最速を決める競技として、自由形は必要不可欠。そんな中、今のところクロールが最速なわけだから、クロールって種目は作れない。自由形でもクロールでも、同じクロールの戦いになっちゃうからだ。
確かに、連盟の人が「疑問に思ったことがない」って言うのも頷ける。

そういったわけで、一番速い泳法だからこそ独立できない、クロール。

クロールが独立するには、クロールより速い泳法が編み出されるのを待つしかないようだ。
(イチカワ)