『暗号名 黒猫を追え!』が何故上映中止となったのか。これには少々、複雑な事情がある。
当時、国会ではとある法案を作る動きがあった。「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」、通称「スパイ防止法案」である。実は『暗号名 黒猫を追え!』は、「スパイ防止法案」制定のために作られたキャンペーン映画だったのだ。
「スパイ防止法案」は、野党やマスメディアなどの反対もあり、結局廃案になった。それを受け、『暗号名 黒猫を追え!』も映画館で上映されることはなかったのである(「スパイ防止法案」反対派の上映阻止運動もあったらしい)。
それから21年後の今年、ついに『暗号名 黒猫を追え』が、シネマヴェーラ渋谷にて劇場公開されることになった。しかし、なぜ20年越しの上映となったのだろう? もしや「スパイ防止法案」の再燃か?
上映するシネマヴェーラ渋谷の内藤氏に話をうかがった。
「本館では、カルト映画特集というのを行っています。このカルト映画特集で、ワケありで劇場公開できなかった作品を上映しようということになったんです。そこでそういった映画がないかと探した結果、『暗号名 黒猫を追え!』を上映することになりました」
そう、今回上映されるのは、「スパイ防止法案」が復活するわけではなく、シネマヴェーラ渋谷のカルト映画特集で上映する“お蔵入り映画”として白羽の矢がたったのだ。
ここで『暗号名 黒猫を追え!』のあらすじをザックリと。
~スパイ天国の日本で暗躍する「B連邦」のスパイと「北方共和国」の工作員による様々な工作活動、それに立ち向かう公安警察との攻防を描いた問題作~
「B連邦」や「北方共和国」など、ドッキドキなネーミングが印象的なこの映画。シネマヴェーラの内藤氏に見どころを聞いてみた。
「映画に出てくる様々なスパイ事件は、実際にあったケースをモデルにしているそうで、過去の事件と照らし合わせて観るとより楽しめるのではないでしょうか」とのこと。
監督、役者などベテランを揃え、内容も硬派なスパイ・サスペンス映画に仕上がっているんだそう。お金もかかっていて、海上ロケを大規模に行ったシーンなど、迫力があるとか。
「実際、フィルムを手に入れるのはかなり苦労しました」と内藤氏も語るように、かなりのレア映画である『暗号名 黒猫を追え!』。
21年目にして上映される問題作を、劇場で鑑賞してみてはどうだろう。
(ドープたつま/studio woofoo)
*詳しい上映スケジュールはシネマヴェーラ渋谷のウェブサイトにて