このほど、小学校などで、「もし、交通事故にあったら、相手に『大丈夫?』と聞かれても、『大丈夫』とは言わないこと」という、交通安全指導が行われていた。

「欧米などでは、事故などの際、絶対に自分から謝ってはダメと教えられる。
自分の過失になってしまうから」などとよく聞くし、なんともなかったようでも、時間が経って、後遺症が出る可能性があるからだと思って聞いていると、
「『大丈夫』と言ってしまい、そのままうやむやにすると、運転手がひき逃げ扱いになってしまう場合もあるから」というのだ。ちなみに、これは警察署からの指導だという。

相手に自分の連絡先を伝えずに去ったら、ということなのか。でも、届出はもともとすべきだろうし……と思い、近隣の警察署に聞いてみたところ、
「ひき逃げになるかどうかは……ケースバイケースですね」と曖昧な返答だった。

だが、ある警察関係者によると、
「その指導・認識は、そもそもおかしいですね。もし、交通事故があった場合、相手が『大丈夫』と言おうが言うまいが、そんなことは関係なく、運転手には警察への届出・報告義務があります。
報告義務を怠ってしまうことが、『ひき逃げ』ですから」
とのこと。
言われてみれば単純な話で、まさにその通りなのだが、こんな妙な話が警察署から通達されるのには、理由があるらしい。
「子どもは交通事故にあったとき、つい『親に不注意を怒られる』と思って、『大丈夫』と言ってしまうことがあります」

運転手側としては、どんなに小さな事故であっても、届出をしなければいけないのは、当然の義務。
だが、子どもの側では、とっさに「親に怒られないよう、何もなかったことにしたい」という気持ちが働くのだそうだ。

ばかげた話のようでありながら、こんな話を耳にすると、「真っ先に、親の怒った顔が浮かび、それに怯えてしまう子ども」というのもわからないではない。そして、自分の子どもなども、もし事故にあってしまったとしたら、真っ先に親の鬼の形相を思い浮かべるのでは……と不安になってくる。


当たり前のことだが、もう一度。交通事故にあったら、どんな小さな事故でも、運転手さんは必ず警察に届けましょう。そして、くれぐれも事故にはご注意を。
(田幸和歌子)