レッサーパンダが好きだ。レッサーパンダはどうしてあんなに可愛らしいのだろう、君のことをもっと知りたいと日々悶々としている筆者なのだが、柵の外から眺めるだけではわからない、彼らのひみつを教えてくれるイベントが、6月の毎週土曜、よこはま動物園ズーラシアにて開催されるという。
「レッサーパンダの野外教室!」がそれだ。

記者発表資料によるとこの教室、「レッサーパンダの動きを見ることで、野生動物の優れた能力や習性を楽しく知っていただく、飼育担当者とレッサーパンダによるショー形式のガイド」であり、「世界的にも珍しく、日本でも類を見ないもの」だという。
レッサーパンダ先生は一体、僕らに何を教えてくれるのだろう。開催に先駆け公開練習が行われると聞いた私は、5月下旬、レッサー先生のご指導・ご鞭撻に胸をときめかせつつ一路横浜へと向かった。

「本番とほぼ同じ内容」と飼育員さんがアナウンスする公開練習は、動物園を訪れた家族連れが見守る中、紙芝居形式のクイズで始まった。「このなかでレッサーパンダはどれ?」「レッサーパンダがすむところは?」と言った質問に、ほぼ全問正解していく子供たち。

やがて飼育員さんの「レッサーパンダのデールさん、登場です!」の声とともに、主人公のレッサー先生がステージ入り! 飼育員さんに甘えるように、ひょこひょこ立ち上がるデールさんの姿に、生徒たち(お客さん)は大興奮。「超かわいい!」「思ったより大きいなー」といった声がちらほらあがる。
まずは先生のプロフィールを紹介する形で、体重計を使った体重測定と、立ち姿の身長測定が行われた。おお、見た目以上にスリムなおからだである(その答えは会場で)。

デールさんは2001年6月19日生まれの、メスのレッサーパンダ。母親に育児放棄されてしまった経緯があり、飼育員さんを母親代わりとして、人工保育で育ったのだそう。

野外教室は、こうした幼少時の知られざるエピソードの紹介や、レッサーパンダの習性についての分かりやすい話をはさみつつ、デールさんが平均台やトンネルくぐり、木登りなどをするという内容で進められた。その愛らしい動きに、生徒の子供たちから「がんばってー」のかけ声も。
それにしてもデールさんはあまりに平気な顔で、すたすたと課題をクリアしていく。
「どうやって練習したの? と質問する人もいますが、これらは野生のレッサーパンダが、森の中で普通に行っていることなんですよ」と、飼育員さんは説明してくれた。そう、これは単なるショーではなく、普通のレッサーパンダの運動能力を知ってもらう「教室」というわけだ。

こんな場面もあった。
デール先生がステージ上で、うんちをなさってしまったのである! しかし飼育員さんは一切あわてず、「レッサーパンダはいつも決まったところでうんちをします。デールさんがしたい時にいつでもトイレできるよう、前もってここに匂いをつけておいたんです」と話す。
なるほど、うんちもあくまで普通のレッサーパンダのことを知る教材のひとつというわけだ。

レッサーパンダの愛らしさあふれる野外教室が終了した後、デールさん飼育担当の田村さんにお話を伺った。「デールさんは人工保育で育った、世界でも数少ないレッサーパンダ。彼女が育ったエピソードを聞いて、命の大切さについて親子で考えてもらえる時間になればと思っています」と話してくれた。

ところで気になるのは、普段もやはり「デールちゃん」ではなく、「デールさん」なのでしょうか?
「ええ、デールさんですね(笑)。デールと呼ぶときもありますよ。教室の時は気分を高めてもらうため、『デール先生』と呼んだりもします」

6月からの本番では、地球環境の話も盛り込みつつ、より充実した教室にしていきたいという。
とはいえ今回の練習だけでもレッサーパンダについて、ここでは書ききれないほど多くのことを学ぶことができた。さらなる魅力に惚れ直してしまった、ドキドキの30分であった。
1年を通してこの1カ月しか行われないという、レア度の高いこの教室。
レッサーパンダについていろいろ知ってる方も、そうでない方も、レッサー先生の学びの門を叩かない手はありませんよ!
(清水2000)