学生の頃、授業中に隠れてマンガ『火の鳥』を読んでいたらバレてしまい、職員室に呼び出しを食らってしまった。そこで「オマエ、手塚治虫なんか読んでんじゃないよ、くだらない」と怒られていたら、横にいた美術の教師が自分の机をバン! と叩き「手塚治虫の画力は天才的です」と激昂。
そこから教師同士の揉めごとに遭遇、という強烈な体験をしたことがある。

その場は失笑を堪えることに必死だったが、美術教師の手塚治虫に対する愛だけは伝わった。優れた芸術は、一人の人間の人生に大きな影響をもたらすパワーを持っているようだ。
しかし、絵が下手な私は絵画に対するコンプレックスを長年持ち続けていた。

そんな私に朗報。ニチバンプリント株式会社は、最大41色のラベルシールを下絵に貼っていくことで世界の名画を作れる『ラベルアート』をインターネット限定で発売するという。

『ラベルアート』は、3~16ミリの丸いシールで点描のように下絵の番号に合わせて貼り付けていくことで、ゴッホの「ひまわり」、セザンヌの「レスタックから見たマルセイユ湾」、葛飾北斎の「富岳三十六景 凱風快晴(通称:赤富士)」、ピエール・ジョゼフ・ルドゥーテの「ダリア」「チューリップ」「ゼラニウム」といった名画を作ることができる。

下絵があるのだから、画力がなくて手先が不器用な私でも名画を再現することができそうだ。
こんな嬉しい商品を開発したキッカケを、メーカーにお伺いしてみた。
「当社はラベルシールを製造している会社なんですが、そのラベルシールで新製品を作ろう、と検討しておりました。そして2年前、『大人の塗り絵』がブレイクしていたんです。それを見て『シールで絵を描けないだろうか』と考えていたところ、親会社とご縁があったセロハンテープアートの第一人者である瀬畑亮先生に知り合い、『ラベルシールで絵を描くことはできますか?』と質問。
検討して頂き、『できますよ』とお返事をいただいたんです。そうして、瀬畑先生に一般の方々でもシールで絵が描けるように下絵の監修をお任せしました」
下絵に合わせてシールを貼っていくのは、感覚として塗り絵に近いだろうか。この『ラベルアート』は3000~5000枚のシールを使い、計10~12時間を要するので、完成すると達成感を感じることができるし、指示通り進めていけば途中で頓挫することもなさそう。

この商品、ターゲットとして団塊の世代も視野に入れている。会社でのお勤めを終え、自由な時間を持つ方々へ“新たな趣味”として提案したいと考えているという。
また絵の具と違ってシールで色を付けるので、汚れる心配がなく、入院して療養している方の趣味にもピッタリ。他にも、指先を使うので脳のトレーニングやリハビリにも活用でき、いたれりつくせりだ。

もちろん、趣味としてだけでなく、絵画としても通用する美しさ。近くから見るとシールだとわかるが、遠目だと完全に名画。「ラベルシールで作った」と打ち明けてみると、ビックリされるような出来になる。

この商品はインターネット限定発売とFAX(048‐667‐1400)で、5月1日より注文を受け付けている。価格は、単品商品が下絵・ラベル・完成図・説明書つきで2,600円~3,130円。
これにピンセット・額・ラベルスタンドがついた「スターターキット」は4,730円~5,250円。完成できるか不安な方向けの「おためしキット」は1,260円である。

楽しいし、インテリアにもなる。これぞ、趣味と実益を兼ねた商品。
絵が上手い人でも、下手なで人もウエルカム。これが芸術への目覚めとなったら儲けモノではないか。
(寺西ジャジューカ)
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