しかし、頑張っている学生は世の中にたくさんいる。というのも、青山学院大学・国際政治経済学部の内田ゼミナールの学生たちが面白いカレンダーを作成したらしいのだ。その名も、2010年版の『Economix Calendar(エコノミックス・カレンダー)』というカレンダー。
このカレンダー、通常のカレンダーとはわけが違う。彼らが普段学んでいる“経済”という観点で、日常に起こる出来事を分析。それが12カ月続いていくのだ。しかも、『Economix Calendar』には2バージョンある。“日常”を経済という観点で分析したカレンダーと、“恋愛”を経済という観点で分析したカレンダーの2種類だ。
まず“日常”バージョンで、特に興味深かった月の内容についてご紹介したい。
2月は“おれって人気だな!”の文と共に、ハチ公の写真が。これは、なぜ多くの人が待ち合わせ場所にハチ公前を選ぶのか「渋谷とハチ公の経済学」と題して分析。
12月は“ブランドを買うなら、やっぱり表参道!”の文と共に、表参道にあるブランドショップの写真が。この月では、どうしてブランドショップは表参道ばかりに出店するのかを説明する「表参道とブランド店の経済学」を掲載。表参道や銀座という賃料の高い場所に本店を持つことにより、売り手が買い手に対して「うちは本当に高級なブランドです」というシグナルを送っている“シグナリング”という経済用語で、その理由は説明できる。
次は、個人的にオススメの“恋愛バージョン”カレンダーの内容を紹介したい。これは1組の男女の恋愛模様を経済の切り口で解説。カレンダー上では、交際が始まり、困難があって、その後、という1年間の恋愛模様が展開されていく。
1月は出会い。恋に落ちたら会えば会うほど、もっと会いたくなる。これは、追加的に得られる喜びが増加していく「限界効用逓増」という経済用語で説明できる。
2月はバレンタインのシーズン。
3月は、女性から男性に告白する展開に。告白する時は、もちろん失敗するリスクも考慮する必要がある。同じ学校に通う人に告白する場合、振られてしまった後の気まずさも想定。これは、何かをするために諦めなければいけない「機会費用」という経済用語と合致する。カレンダー上の彼女は、男性が学校を卒業する3月を選んで告白したようだが、告白は無事に成功!
6月には、2人の仲が停滞。それほど「会いたい」と思わなくなった、マンネリの時期。これは、経済用語「限界効用の逓減」で説明できる。ピークを過ぎると、追加的な満足感が減っていく状態のことだ。
9月、彼女が彼氏の携帯電話を見てしまう事態が発生。見ない方が、お互いのために最善なのに……。協調行動をとれればお互いがよくなれるのに、協調行動をとれない。そのため、双方にとっての結果が悪くなることを、経済用語で「囚人のジレンマ」と呼ぶ。
10月には当々、彼女が別れを考え出す。しかし、今まで過ごした時間を考えると、なかなか別れを切り出せない。しかし経済学では、今までに費やしてきた費用を考慮してはいけないという考えがある。今までかけた費用のことを、経済学では「サンクコスト」と言う。
11月には、昔から自分を励まし続けてくれた男性“かずや”のことが気になりだす。たとえば、男性が女性に告白する時「ずっと君のことが好きだった」という言葉を使ったり、高価なプレゼントを渡したりするだろう。こんな風に、相手に信頼してもらうための表示行動を、経済用語で「シグナリング」と呼ぶ。
12月は、せっかく一緒になれた“かずや”との突然の別れが。
……と、甘酸っぱいストーリーが展開される恋愛カレンダーなのだが、これらの展開はすべてゼミ生たちが考案。
やはりと言うべきか、カレンダーの反響は若い方からが多く「経済が身近な問題とリンクしているから、わかりやすかったです」といった声がゼミに届けられた。
このカレンダーは、青山学院大学の購買部と、青学に隣接している「栄屋文具店」、近隣のカフェなどで発売中。実は今月末までの限定発売なのだが、売り切れていなければ青学の購買部で発売し続ける。価格は525円(税込み)。
キュンキュンした感情を抱きながら経済の知識も身につく、まさに“経済と愛の強力タッグ”! このカレンダーと共に毎日を送っていたら、何か良いことが起きそうな気がする。
(寺西ジャジューカ)