今年、自分が蚊に刺された「初日」は5月末だった。

そういえば、「蚊の出る時期って、年々早くなってない?」と言う人は多い。
温暖化の影響で……などとも聞くが、実際にそうなのだろうか。フマキラー・マーケティング部に聞いた。

「確かに温暖化の影響もあるかとは思いますが、蚊は15℃以上で行動を開始し、26℃以上で吸血活動を行います。そういった意味で、蚊が出没する時期が早くなっているのかもしれません」

フマキラーの蚊の関連商品は、「予防商材が売れ筋」ということで、売れ始める時期は「気温によって違う」ということだけど……。実際、蚊が発生し始めるタイミングは、どんなときなのだろうか。たとえば、「○度以上の日が何日か続いた後」など、条件はあるのだろうか。

「虫は自分で体温を作れませんので、やはり暖かくなってきたらということになります。なおかつ、ボウフラは水溜り等に発生しますので、『雨が降って、気温が高い日』というのが、ベストと考えます」

蚊の出没時期と気温の高まりとは実際に関係していそうだけれど、その一方で、気になるのは「蚊の出る時期が早くなっているのではなく、年中活動できる種類の蚊が増えている」という可能性だ。
もしかしてそういったこともあったりして?
「地下鉄、地下街等でまれに蚊がいたなんて話を聞くこともありますね。確かに年中活動、繁殖できる環境になりつつあるとは思います」

また、蚊の発生時期の早まりを実感していると言うのは、ある獣医さんだ。

「犬のフィラリアの予防は昔に比べて、明らかに早まっている印象がありますね。フィラリア(犬糸状虫)とは蚊の媒介によって、犬の心臓や肺の血管に寄生し、血液中の栄養分を吸って生きている寄生虫のこと。
昔は6月頃から11月頃まで、月に1度の投薬をお勧めしているところが多かったんですが、今は開始時期が4~5月ぐらいになっており、年々早く、期間も延びています。また、昔は北海道では発生しないと言われていましたが、今は北海道でも予防をしていますよ」

実際には蚊がいつから吸血し、フィラリアに感染するかを特定することはできない。そこで、近年は、フィラリアの感染可能期間を類推する方法として、日本犬糸状虫症研究会、犬フィラリア症予防普及会が「HDU(Heartworm Development heat Unit)」という考え方を提唱しているという。

感染可能期間の目安は、気象庁発表の気温データによって計算されるが、東京を例にとると、ここ十余年において最も感染開始が早かったのは1998年の「5月5日」で、一番遅い感染終了日も98年の「11月11日」。98年が全国的に「早く、長く蚊が活動していた年」だったわけだが、ここ十数年はおおむね同じぐらいの時期になっているよう。また、長い目で見ると、30年前、20年前と比べて、発生時期は確かに早まってきていて、近年はこのぐらいの時期で定着しているという見方もできそうだ。


恐ろしいのは、実際に冬に出没する蚊もいるように、将来的に「蚊=夏のもの」とも言い切れなくなる可能性もあるということ。

蚊の対策としてまずできることは、「発生をできるだけ防ぐ」ということ。
これまでにコネタでも取り上げたように、蚊は下水溝や廃タイヤ、竹の切り株など、水のたまる場所を発生源としているため、家の周りにたまった不要な水や雨水は、こまめに捨てることが大切だ。できることから「蚊対策」を始めてみませんか。
(田幸和歌子)