「おこし」と聞いて、思い出すものといえば? 浅草名物の「雷おこし」と言う人がほとんどではないだろうか。

だが、そんな「おこし」のイメージを変える、フルーツたっぷりの商品が登場している。
長野県須坂市のお餅屋さんが作った「須坂フルーツおこし」だ。

開発のきっかけなどについて、製造者のコモリ餅店に聞いた。
「今年の4月から販売しておりますが、開発には1年以上かかりました。きっかけは、もともと地元のお土産となるお菓子を作りたいという思いがあったこと。また、長野といえばフルーツが盛んであることから、フルーツを使いたいと思い、なかでもいちばん有名で生産量も多い『りんご』を使ったお菓子で、かつ通年で買っていただける和菓子で何かないだろうか……と考えたんです」

そんなとき、出合ったのが、地元のりんごを使ったドライフルーツだったのだそうだ。
「地元の業者のおばちゃんが作っているドライフルーツで、まだ市販されていないものをたまたま知り、とっても美味しいのでそれを使いたいと思いまして。
ただ、ドライフルーツそのものが美味しいから、煮たり焼いたりすると、どうも食感が違ってしまう。なんとかドライフルーツの食感を活かす方法はないかと考え、試行錯誤した末に、うちはもともと和菓子屋なので、うるち米を使った『おこし』を思いついたんですよ」

本来、おこしは米を蒸かし、煎ってふくらませて作られるものだったのだが、実は、いまは「おこし」として売られているもののほとんどは、米ではなく、小麦粉と重曹を使い、サクサクした食感に仕上げたものなのだという。
そんななか、この「フルーツおこし」は、昔ながらの「うるち米100%」を使用。一般的な軽いサクサクの「おこし」とは違い、フルーツの素材そのものの美味しさがギュッと詰まって、モチッと噛みごたえあるお菓子になっている。
「材料の配合や温度・湿度の管理にはいちばん苦労しました。あっという間に固まってしまうもので、それを全部手作業で瞬時に切っていきます。
フルーツや、味付けは洋風に思うかもしれませんが、食べていただくとわかるように、材料はすべて和菓子のもの。『食べたことのない味』として、リピーターのお客さんがたくさんいらっしゃいます」

「須坂フルーツおこし」は、キャラメルで味付けしたオーツ麦や玄米、ライ麦、ココナッツなどを使ったタイプと、クランベリーを使った甘酸っぱいタイプの2種類があり、現在、コモリ餅店の店舗のほか、インターネットでも販売中。

お餅屋さんの、フルーツたっぷりの新感覚の「おこし」。和菓子好きもフルーツ好きも、ぜひお試しを。
(田幸和歌子)