そして、今度はスゴい。今回紹介するのは、なんと“和紙で作るバッグ”である。
それにしても、和紙だ。紙の中でも、ひときわデリケート。ひときわ繊細。それがバッグになるだなんて、これ如何に!?
この斬新な試みは、山梨県の和紙メーカー「大直」と工業デザイナー深澤直人氏が手がけるブランド「SIWA・紙和」が行っているもの。
それにしても、どうしてこんなことを? 同社に、直接伺ってみた。
「当社では障子紙の生産と、和紙雑貨の製作を長年行ってきました。しかし住宅の事情も変わり、障子紙の需要も徐々に減ってきております。そこで、『次の和紙製品を生み出したい』という思いを持つようになりました」
「和紙というと工芸的なイメージになりがちですが、現代の生活に合った和紙製品のブランドを作ろうと2008年からプロジェクトを立ち上げ、深澤さんと一緒にブランドを立ち上げました」
深澤氏には“現在の生活に合った和紙製品”というテーマで依頼。結果、生み出されたのが“シワシワになったバッグ”など数十点と、「SIWA・紙和」という名のブランドだった。
ただ、言ってもバッグである。
「素材の開発からしておりまして、バッグは10キロの耐荷重がございます。水に濡れても強度が変わらず、破ける原因にはなりませんので、雨の日でもお使いいただけます」
このブランドが手がけるバッグ、かなりのバリエーションなのだ。ブリーフケース、リュックサック、トートバッグ、ランチバッグといった“和紙バッグ”たち。
これらすべてに「ナオロン」という新素材のやぶれにくい紙を用いており、“シワシワ”な独特の風合いを楽しむことができる。
また、同ブランドで扱われているのはバッグだけではない。スリッパ、クッションケース、ランドリーボックス、ハット、ハンチング、チロル、などなど(2010年のラインナップは30アイテム)。
これらの商品たちに対する反響も上々。
「最初は紙の先入観から強度などを心配される方が多いのですが、実際に使い始めるとその素材感を気に入っていただけております」
ブックカバーなどのアイテムを試しに使ってみて、そこから他のアイテムを集める。そんなパターンが多いそうだ。
また、紙だけにすこぶる軽い。
さらには海外の販売店も増えており、日本の和紙を用いた日用品が評価されているという。
このブランドの商品はウェブショップ「scope(スコープ)」、または全国150店舗などで購入することができる。
最後に、ブランド名である「SIWA・紙和」について。これは、紙の“シワ”と和紙の反対読みの“紙和”という意味が込められている。
「和紙というイメージにこだわり過ぎない方が、かえってその素材の持つ機能や味わいを、現代の生活に合った製品に生かせるのではないでしょうか」(担当者)
まさに、“温故知新”。「古きをたずね新しきを知る」の世界ではないか。
(寺西ジャジューカ)