この見出しを見て「フザけてる!!」と怒っている方々へ。この記事は、そんなあなたたちにこそ読んでほしい。
それから、「なんか気になる」と勘違いしてクリックしてしまった人も、せっかくだから読んでもらいたい。実はこの見出し、『終わらない青』という映画の試写会後に行われたトークショーのタイトルなのだ。

高校生の楓は幼い頃から実父に虐待を受け、心のバランスを保つためにリストカットを行っている。父からの性的虐待の後、お腹に宿った命に気づいた楓は「産みたい」と願うが……。どうにも救いがたい話だが、自ら脚本を書いた監督によれば「20代前半の女性の7人に1人が自傷行為を経験している」という社会的現象に心を揺さぶられ、映画の製作を決意したそう。

「インターネットで少し調べただけでも、自傷行為を行う人に対する偏見や差別が渦巻いている。
『死にたければ勝手に死ねばいい』なんてコメントもよく見かけます。でも、彼女たちは死にたいから切っているんじゃなくて、壊れそうな自我を守るために、生きるためにリストカットしているんです。間違った認識を変えたいという想いから、この映画を作ることにしました」と緒方貴臣監督。

精神科医の香山リカさんも、『終わらない青』に対して次のようなコメントを寄せている。
「『死にたいんじゃない。生きていくためには切らなければ』……自傷癖のある少女が診察室で語った言葉が、作品を見ているあいだ、ずっと心にこだましていた」

主役の楓を演じた水井真希さんも自傷行為経験者だ。
リストカットに使うカッターや、傷口を覆う血の付いたさらしも、実際に水井さんが使っていたものを撮影に使用している。

「喫煙者は喫煙の様子を見せびらかすためにタバコを吸っているわけじゃないですよね? リスカも同じで、別に誰かに見せたいわけじゃないんです。だから、『やめろ』と言われてもやめられない。私の場合は、あるとき『痛いな』って気づいて、リスカのメリットがなくなっちゃったんです。自分で気づかなきゃ、やめられない」

試写会後のトークショーは主演・水井真希さん、『VOICES』編集長でルポライターの橘ジュンさん、『16歳だった~私の援助交際記』の著者であるライターの中山美里さんをゲストに迎えて行われた。ときに笑い声が上がる明るく和やかなムードの中、リスカ、アディクション(依存)などについて多彩な意見が交わされた。


印象深かったのは、「リストカッターを支える側はどうすればいい?」という観客からの質問に対するゲストの方々の答え。
「わからないことは『わからない』、わかるときには『わかるよ』と言ってあげればいい」(中山さん)、「どうしたいか、どう思っているか話せる間柄になっていることが支えになっている」(橘さん)、「誰かに話しながら自分の考えをまとめることもあるから、基本は聞いてあげるだけでいいんじゃないかな」(水井さん)

正解はわからない。リスカが正しいことだとも、間違っていることだとも言えない。ただ、彼女、彼らが何のために、そうした行為を行うのか、偏見を捨てて真実を知ることも大切なのかもしれない。映画は6月4日(土)から、渋谷UPLINK Xにて21時上映開始のレイトショー公開予定。上映後は自虐や虐待の専門家を招いてトークショーを開催する日もあるそうだ。
批判するも、しないも、まずは作品を見て、当事者の話を聞いて、自分の頭で考えてみてはいかがだろう。
(塩澤真樹/C-side)